いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

バカは進捗が進んでも気づかない

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計画と願望は違う

 何かしらのプロジェクトが立ち上がると、必ず計画表というのを作らないだろうか。最初に納期が決まっていて、納期までに何をどうしていくかという計画を立てる。Excelでやたら手の込んだ計画表をよく見る。やたらとセルの幅を弄っている割に、色のセンスが悪い。変に見た目ばかり作りこまれていて、更新は全部手動だ。こういうのを見るとプロジェクトの失敗が頭によぎる。

 計画は進捗を判断する上で大事な基準になる。事前にしっかりと考える必要があるのだが、過去のプロジェクトで使用した計画をコピペして使う人が絶えない。毎度ながらアホだと思う。考える分の工数を省いた分、早く計画を立てることはできる。素早く計画を立てて頭の良さでもアピールしたいのだろうか。しかし、考えるべき時に考えないのは逆に頭が悪い。

 本来であれば、計画を立てる段階で一つ一つの要素について慎重に検討を加えるべきだ。そもそも、全て成功させるという前提で計画を立てるのもアホだと思う。うまくいかなかった時に何か残せるようにするのも計画だ。やりたいことを全てぶち込んで納期という外枠で圧縮しても、それは計画とは呼べない。

 計画と要望を整理したものだ。取捨選択ができていないものを計画とは呼べない。思考のプロセスをすっ飛ばした計画など、単なる欲しい物リストだ。見た目は計画に仕立て上げているが、手段に対する検討が十分になされていない。炎上プロジェクトでやたら詰められるのはそのためだ。理想だけで手段が検討されていないので、詰めるしか手がなくなるからだ。

進捗が進んでも上に重ねて潰す

 ちょっと話はそれるが、人というものは強欲な生き物だ。一つ欲しいものが手に入ると、もう一つ手に入れたくなる。もしくは、もっと良いものが欲しくなってしまう。これを自己の成長に向けたなら向上心になる。ただし、何をやっても満たされない人は成果を認識できなくなる。一つ成果を得られたとしても、「これは私の欲したものではない!」と更に多くのものを欲してしまう。

 プロジェクトでの進捗にしてもそうだ。進捗が遅れていたとしても、成果は0%ではない。計画通りに進んでいないことばかり気にかけて、得られている成果に気づけない。そういう人には、できていないところしか目に映らないので、進捗を実感できる機会は無い。気が焦るので、問題を適切に認識できずに対応をよく間違える。頑張れば頑張った分、プロジェクトが壊れていく。

 たとえうまくいったとしても、こういう人は下手に高みを目指す。必死に合わせた帳尻に対して仕事を前倒ししようとしたり、次のプロジェクトで更に厳しい条件を突きつける。確かに、向上心と言えば説明は付く。だが、実際は無茶以外の何物でもない。下手に説明がつくのでタチが悪い。実情は、正に「バカの高望み」以外の何物でもない。

 プロジェクトを壊すのは、怠ける人や能力の低い人でなく、このような真面目なバカだ。バカといっても、単純に頭が悪いのではない。記憶力が高かったり、話をするのは上手い。ただ、熟考したり、物事を観察したり、取捨選択をするのは苦手だ。つまり、思考能力が低いのだ。然るべき立場にいるのであれば人畜無害で社会の役にも立つ。だが、こういう人が人を使う立場に居座っていると、ひたすら迷惑をまき散らす。

進捗なんて概念を超えて現実は動く

 結局のところ、計画はあくまで予想にしかならない。人生の経験上、立てた計画がすんなりいったことがあるだろうか?逆に、うまくいかなかったとしても成果を得られたこともあるはずだ。計画をうまくいかせることも大事だが、計画通りでなくても得られる成果もある。予想外の事態が必ずしも不利益とは限らない。トラブルが起きたとしても、そこから学んだり、気づきを得たりしたことはないだろうか。

 計画とはあくまで選択肢の一つだ。計画に忠実であろうとするほど選択できる手段を狭めることになる。失敗するプロジェクトを見ていると、成果を得るために動くのではなく、成果を得ることに加えて計画通りに動こうとする。多くのことを求めれば、それだけ難易度が上がる。難易度が上がれば失敗する可能性も上がる。それだけの話だ。

 つまり、事前準備に頼りすぎということだ。経験上だが、失敗を恐れる人ほど事前準備にかける時間が多い。また、不安が行動の起点になっているので、肝心の行動が一歩遅れやすい。過剰に計画にこだわるのは、ある意味、不安の裏返しだと思っている。そういう人ほど、進捗でうまくいっていない部分にスポットを当てて断罪ばかりしたがる。あれは本当に無駄以外の何物でもない。

 そうならないためにはアドリブで対応できる力を身に付けよう。その場の状況を見て臨機応変に対応する力だ。確かに高度な技術や思考力が求められるが、ノーミスを前提にした計画を求めるよりは現実的だ。単に無計画を推奨している訳ではない。計画という根拠だけでなく、その場の状況や技術的根拠で行動できるようになることだ。無計画との違いは、根拠を説明できるか否かで区別できる。

100%を目指すから失敗する

 バカの考える成功は100%の計画遂行だ。十分な事前準備をして確実な計画を立てる。事前に立てた計画通りに進めれば、確実な成果が約束されていると考える。どこぞの軍師かよ。実際は、計画通りにいかない度にいら立って進捗会議で断罪に明け暮れる。普通に考えて、詰めに詰められてやる気を出す人もいない。結局のところ、手段について深く考えていないので、批判しかできないのが現実だ。

 100%の計画遂行が目的になるからバカは失敗する。あくまでゴールは目的の達成だ。計画の遂行イコール目的と考えるので融通が利かなくなる。初志貫徹という言葉があるが、志は一貫した方がいいと思う。だが、方法は状況によって何がベストか変わる。最初に立てた計画をベストと決めつけるのは、いささか浅はかに感じる。ある程度変更を想定して計画を組むと柔軟性が出そうだ。

 バカはアドリブで対応できない。だから計画に頼る。アドリブで対応できないからダメだとか、そういうことではない。アドリブで対応できる人と協力すればいい。そのためには、計画というものに対する考え方を一部、改める必要があるかもしれない。しかし、お互いに無いものを持ち合う同志が協力できた時に発揮できる力は素晴らしいものとなるだろう。もしそれができれば、大いにやりがいを感じることができるはずだ。

 バカが進捗すら把握できない最大の理由は、成果が実感できないからだ。だったら、成果を実感できるように工夫しよう。ちなみに、計画通りに事が進んで楽しいのは立てた人だけだ。計画をあれこれこねくり回してもエンジニアは動かない。逆に、エンジニアの喜ぶポイントを的確にくすぐると、バカみたいな能力を発揮する。こちらの方が、プロジェクトの成功率は格段にあがるんじゃないだろうか。成功するプロジェクトというのは、エンジニアの笑顔が絶えないものだ。

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