いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

Excelの使い方がショボすぎてつらい。

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だれだExcelが万能ソフトとか言ったのは

 いつもながら極論かもしれないが、日本のITリテラシーが低いのはExcelのせいだと思う。素人が使いこなせない道具を振り回すと怪我をする好例だと思う。情報を残したいだけなら、テキストエディタでも良いわけだ。表で管理する必要のある資料だけExcel使えば十分だ。誰しもが無理をして使うより、一つのチームで数人が使いこなせれば十分なのかもしれない。

 実際、自分の周りを見渡してみて、ピボットテーブルを使いこなせるレベルでExcelを使っている人はどのくらいいるだろうか。Excelの本来持っている機能を使いこなしている人は皆無だ。よく、VBAを使える人をExcelを使いこなしていると思い込む人がいるが、それは違う。VBAはプログラミングだ。使いたいなら、「マンガでやさしくわかるプログラミングの基本」をきちんと読んでから使って欲しいものだ。

 Excelはやろうと思えば何でもできてしまう。言い換えると、チャチっこく物事を済ますには最適なツールだ。文書を書く時のインデントや行間の幅など、その場のノリで調整できる。画像だって、バシバシ貼り付けて保存ができる。位置だって好きなように調節できる。とりあえず、見た目だけ最速で仕事を済ませるには、Excelが最適解なのは間違いない。確かに、その場だけをしのぐには万能ソフトと言える。

 経験則から言えば、Excelを万能ソフトという人は、その場しのぎに走り易い傾向があった。ただ、私から言わせれば、その場しのぎにExcelを使うヤツはまだまだ青い。その場しのぎに最適なツールは紙とペンだ。汎用性に関しては、Excelなんかより格段に優れている。小学生でも使いこなせる、正に万能ツールだ。電源すら入れずに、トイレの中でも使える。Excelでは尻を拭うことすらできんだろう。

Excelが無駄な作業を増やす

 だいたい普段読みのドキュメントなどテキストデータで十分だろう。レイアウトはオマケだ。中身がしっかり書けた上で書式を整えるから意味がある。Excelで作るドキュメントは、中身がスカスカなのをレイアウトでごまかそうとしているのが見え透いてしまう。事実、Excel大好きな人の作るドキュメントは、無意味な装飾が多かったり、やたらカラフルだ。そして、決定的にセンスが悪い。

 決定的にセンスの悪いドキュメントを、何か会議があるごとにせっせと作る。流石に何かの嫌がらせとしか思えない。多分、PCが普及する以前の方が効率よく仕事をしてたんじゃないだろうか。仕事をだらだらとやってはいたが、仕事自体の段取りとしては、今よりマシだったように思う。ピシっとした書類が提出されていた方が、仕事してる感は出る。だが、仕事してる感を追求しすぎて、中身が抜けては元も子もない。

 その場しのぎで作られたセンスの悪いドキュメントの弊害は、見にくいというだけではない。「頑張って作ったんだから」という呪いがかかるのだ。「頑張って作ったんだから品質が高いはずだ」、「頑張って作ったんだからこの書き方が正しい」という事実無根な信頼がついて回る。無駄を省いてテキストでまとめようものなら手抜きと言われる。改善を求めても、頑なに拒否される。効率や品質云々より、クソドキュメントへの信仰が優先されてしまう。

 クソドキュメントへの信仰のせいで、我々はどれだけの無駄を強いられているのだろうか。作るのが面倒くさい、見てわかりにくい。データの再利用もできないし、中身も薄い。結果的にかなりの損失に繋がっているように思う。Excel、Powerpointで作ったクソドキュメントを駆逐すれば、日本が抱えている長時間労働の問題は解消できてしまうのではないだろうか。ITの活用で無駄を無くそうと謳うIT業界が、このクソドキュメントを推進しているのは、何か高度なギャグなのだろうか。

安直な使い方に慣れすぎてはいないだろうか

 いつも不思議に思うのだが、Excelの使い方をきちんと勉強してる人というのはどれ程いるのだろうか。大概、現場に配属されてからOffice一式がインストールされたPCを渡されて「んじゃ、仕事してね♪」と、仕事を任されていく。Excelの使い方を覚えるには、たまに遭遇する親切な人に使い方を聞くくらいだ。体系的にどういう機能があって、どういう時にその機能を使うかを知るには、自分で学ぶしかない。

 Excelは万人向けのソフトではない。まず、機能が中途半端だ。ITが苦手な人には敷居が高く、本格的な分析をするには機能不足だ。ちょっと複雑な構造のデータが絡むと、たちまち処理しきれなくなる。自動化するにしても、簡単なものしか自動化できない。本格的に自動化しようとすると、簡単に機能的な限界に引っかかってしまう。そもそも、本格的に自動化をしたければ、それ用のソフトの導入を考えた方が後々困らない。

 スキルにしてもソフトにしても、無理に手元のもので安直に済まそうとすると、後々ろくなことが無い。スキルを身につけるにも工数はかかるし、ソフトを買うにもお金がかかる。どちらも都合がつかないのであれば工夫すれば良いわけだが、工夫するにも考える手間が必要だ。何も無しに事がなせるなら最初から誰も苦労しない。安直な手段に頼り過ぎると、物事を考えなくなる。それが最大の損失に繋がる。

 バカがExcelを使ってクソドキュメントを作るくらいなら、いっそメモ帳使って欲しい。少ない脳みそのリソースでも、内容に集中すれば相応のものはできるはずだ。レイアウトなんて考えなくても、極端に見た目が崩れることはない。ただし、メモ帳を使うと誤魔化しが利かない。それでいて困るようなら転職を考えた方がいい。根本的に業務の適性が足りない。仕事の本分は、ExcelやPowerPointでお絵かきすることじゃないはずだ。

Excelは時代遅れだ

 Excelの元になる部分は、Excel 2000 で完成している。現在に至るまで、根本的な部分はほとんど変わっていない。ソフトウェア自体が成熟しきっていると言える。ただし、成熟しているイコール完璧ということではない。ソフトウェアのコンセプトを一通り実現したというところだろう。コンセプトに無いことをやろうとするなら、他のソフトを使うなり、機能を追加する必要がある。

 ソフトウェアにしても、オープンソースでも質の良いものが増えたし、クラウドサービスも充実している。時代のニーズに沿ったコンセプトのサービスやらソフトは出揃っている。これだけ便利な世の中になったのだ。ExcelやらPowerPointに頼らず、これらを積極的に利用した方が楽になると思う。PCやソフトウェアが高価だった頃のやり方を引きずり過ぎだ。

 ドキュメント自体、いちいち紙面に出す想定に縛られなくても良くないだろうか。情報自体はグループウェアなりデータベースに保存しておいた方が検索しやすい。いちいちみんなが書式を考える必要も無い。印刷する必要があるものだけ、書式を整てドキュメントに書き下ろせばいい。こういうやり方なら、Officeを使いこなせる人がプロジェクトに一人くらいでも十分に仕事が回るはずだ。

 最近のソフトでは、Officeを使わなくても、マークダウンでドキュメント書けば相応のものが書ける。マークダウンも方言が激しいが、Excel方眼紙でクソドキュメント書かれるよりはマシだ。情報管理にしても、Excelで無理にこなすより、オープンソースのデータベースソフトでも活用した方が早い。もう、仕事にOfficeソフトは必須でもなくなってきたのではないだろうか。それぞれの役割に合わせて、最適なソフトを検討してはどうだろうか。

Comment(2)

コメント

nanasi

最大のメリットはシェアだよ
大概のPCに入ってるし利用者も多い

個人なら何使っても構わんと思うっけど

mao

とりあえず、AnubisさんがExcel使用者へ望むスペックの敷居が高いのはわかった。
その上で言わせてもらうと、 IT会社の社内だけで利用するドキュメントってほとんどなくて
納品物ドキュメントとしてExcel指定してくるエンドユーザは絶対数いることは確か。

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