いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

新人が腐る瞬間

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■やっぱり人は腐る

 春も麗らかに、日差しも柔らかく心地よい。まだ着慣れていないスーツを着て、何かソワソワしている新社会人を、最近電車でよく見かける。希望と不安を胸に、新しい会社で人生を一歩、踏み出すのだろう。そんなことでこの前、新人が腐る瞬間を目の当たりにした。

 具体的に言うと成長を放棄した。元々、資質は高い人だったが、あまりにも理不尽な指示が立て続けに出されたために、ある時点から考えることを止めてしまった。その瞬間をはっきり捉えた。それ以降、技術に対して関心を示さなくなってしまった。

 もし、この新人君が同じ会社にい続けたら、きっと部下ができた時点で同じことをするだろう。なぜなら、それしかやり方を知らないのだから。こうやって理不尽は連鎖していくのだろうと実感した。

 新人君が腐るのを目の当たりにして、哀愁というより、むしろスッキリした。原因と条件と結果が見事に結びついたからだ。そんなことで、今日、夜桜を満喫してきた。ここの現場ともスッキリオサラバだ。この春から現場が変わる。

■どうすれば腐らずに済んだか

 「嫌なら辞めて他に行けばいい」最近よくこういう言葉を聞くようになった。多分、私の目の当たりにした新人君も、こういう選択肢があれば腐らずに済んだように思う。ただし、この会社ではという条件付きだ。

 一般論で言えば、レベルの低い会社なんてさっさと辞めて、レベルの高い会社に転職してしまえば、レベルの低い会社は淘汰されて全体のレベルが上がる。なんて理論もあるようだ。確かにこれは正論だと思う。

 だが、業界全体が腐ってるとしたらどうだろう。もしそうなら、淘汰されるのは勇気を出して行動に移した人だ。現実的に考えて、良い職場に巡り会えるかは運に左右されると思う。こういうところをスキルで回避しようとしても、根本的な問題解決にはならない。

 上司や会社が腐ってるかどうかは、一度離れて客観的に見なければ分からない。「嫌なら辞めて他に行けばいい」という意図の一つはそれだと考えている。会社を辞めたところで根本的な解決にはならないが、会社を辞めて冷静に考えることで賢くはなれる。辞めるだけでは解決しないが、辞めることを通して色々と学べば解決する。ということだ。

■腐りたくなければ考えろ

 腐ると言っても、あくまで私から見た視点だ。本人たちは社会的義務を果たして堂々と働いていると思っている。「仕事」というキーワードを出せば、大体の不条理は正当化できてしまう。不条理を正当化されたくなければ、自分で考えるしか無い。

 自分が不条理で相手が筋を通している場合、筋を通している相手の方が理不尽に見えてしまう。また、理不尽な者同士だと話が通じてしまったりする。理不尽と言っても、条件を変えればいくらでも覆る。こういう状況を整理するのに、意外と数学的なセンスが問われたりもする。

 一般論や感情論では理不尽には対抗できない。なぜなら、理不尽の前では一般論はすでに覆された理論だ。話しても通じない。そもそも、理不尽自体が感情論を押し通すためにものなので、同じ感情論で対抗しても、数で押されて負ける。

 問題が起きた時、何らかのアクションを起こせば解決すると思っている人は多い。だが、行動だけでは解決なんてできない。思索が伴っていなければ、行動はただのギャンブルにしかならない。

■考えることをやめた時に腐っていく

 人は思索をやめた時、発想が子供に逆戻りしていく。子供というと、豊かな発想力とか無邪気とか、そういうイメージをするかも知れない。だが、あれは今後成長していく前提があるからそうなるのだ。

 思索をやめた人の成長のベクトルは下向きだ。しかも、子供と違って欲望やらしがらみを抱え込んでいる。その状態で子供のような発想をするとどうなるだろう。下手に手段が揃っているだけに、好き放題された時の対応に手を焼く。

 エンジニアなら、技術について思索することを止めたのなら、エンジニアを辞めた方がいい。だが、それでもエンジニアという立場にしがみつくなら、エンジニアとして腐る。エンジニアとして機能しないのにエンジニアという立場にいても、何も利益が無い。だから腐ってると言われる。

 こう考えると、今の日本の働き方は人が腐りやすい環境かもしれない。思索することに価値を見出さないので、思索する時間も機会も与えない。全てが安易な方向へと流れているように思う。今後、自分が腐っていくのか熟していくのか。それは、どれだけ思索していくかで変わっていくのではないだろうか。

Comment(4)

コメント

たけぞ

理不尽を客観視することの難易度は
「転職は悪」とされた昭和時代に比べれば
格段に下がったのかもしれません。

しかし思考を止めない(腐らない)ことを
普段から実践するのは
「IT技術者なんだから当たり前だ!」
とクチでは言えるが
いざ実践することの難しさ。

今回のコラムは心に刺さりました。

アヌビスさん
どうも腐りかけてる新人の文系の院卒がIT業界に入ってみて感じたこと管理人ひろ氏です

何となく文章の中で新人が腐ろうとしているところが分かります。
私も似たような気持ちを持っているのですがこれが業界によるものなのか会社によるものなのか分からないです。
とりあえず私も思索中ですが、これがいい結果になるのかは分からないですね。

仲澤@失業者

理不尽な目にはあまりあったことがないのですが、
大昔に唯一、やや体育会系な上司に出会ったことがあります。
つまり言ってることが、ほぼ理不尽(笑)なわけですね。
本人のおつむの出来もそれなりでした。
まぁ、上手におだててなんとかかわしてましたね
まだ生きてるのかなぁ、あの人(vv;)。

Mc

>考えることをやめた時に腐っていく
最近これを強く感じます。
仕事に限らず考えない時間が増えたなー、と。

些細なこと、しょーもないことでも一歩踏み込んであれこれ考えるようにしよう。うん。

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