いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

技術革新とか言う前に

»

■「新」と言う言葉に翻弄されていないだろうか

 ITは日進月歩で進化している。よくそう言われている。・・・本当にそうだろうか?実際の進歩は思うより緩やかだし、キャッチアップするにも、思うより地道なやり方で大丈夫だと思う。

 日進月歩で進化しているのでなく、ひっきりなしに新しいものが出ているだけだ。それら全部を追いかければ、「日進月歩」になるのだろう。だが、詳細を噛み砕いて必要な項目だけ拾うと、意外と変化は緩やかだ。

 「新」とつくとインパクトがある。そりゃそうだ。新しいものを出す以上、インパクトを求めるのが世の常だ。インパクトが無ければ誰も使ってくれないし、気付いてももらえない。だが、これはリリースする側の都合だ。使う側の人は、インパクトに翻弄されると本質を見失い、技術へのキャッチアップが疎かになる。

■インパクトに翻弄されないために

 インパクトに翻弄される人には共通項がある。純粋な技術より、収入や優れていると言われたいと云う目的の方が強い。それ自体を否定する気は無い。だが、翻弄されるというのは疲れる。動く割には成果は得難いだろう。

 今まで使っているツールを使い続けるより、新しいツールを使う方が色々できそうな気がしてしまう。それは、ツールを作る側の人がそうアピールしているからだ。実際に色々が実現するかどうかは、その人次第だ。

 新機能を云々言う前に、手元のツールを100%使いこなしているだろうか?手元のツールを使いこなせずに「不便だ」と言っている内は技術は伸びない。新しいものに飛びついたとしても、使いこなせずに同じ事を繰り返すだけだ。

 もっと突っ込んで言えば、ツール以前に、目的に対して手段が間違っていたり、仕組み的に不可能な事をしようとしていたりしていないだろうか。どんなツールを使おうと、無理なものは無理だ。また、使いこなせるだけの技術が無いと何を成す事も無い。

■問題解決をツールに丸投げしてないか

 どんな優秀なツールでも、使う人が間抜けでは何の結果も出せない。逆に、使う人が技術に長けていれば、大して時間をかけずにツールを使いこなして成果を出す。違いは、ツールが中心か、自分の技術が中心かだ。

 昔、通販の番組で便利な調理器具を紹介していたのがあった。番組では、調理器具を使ってキャベツの千切りを簡単に作ったり、大根のサラダやカツラ剥きやら、いとも簡単にこなして「奥さん、これすごいでしょ!」と宣伝していた。

 まぁ、実際買ったのは奥さんでなく、むさ苦しいおっさん(私)だった訳だ。買ってみて分かったのが、このツールが凄いのでなく、番組で宣伝していたおっちゃんが職人だったということだ。とてもじゃないが、番組でやってたような使い方はできなかった。

 同じことがIT系のツールにも言える。達人レベルの人が壇上でツールを紹介していると、通販番組と同じように、「これを使えばこんなこともできるんだ!」と思い込んでしまう。ただ、実際に同じことができるかどうかは、使う人の腕次第だ。

■新しいものばかり追い求めているからスキルが伸びない

 新しいものを覚えるというのは、なかなか労力が要る。どうしても追い求めたいなら、三年間我慢しよう。とりあえず、土台になる技術は固めよう。土台を固める段階で、古いとか新しいとか考えても大した利益にならない。

 土台が固まれば、新技術へのキャッチアップも簡単になる。今までと変わったところの差分だけ追いかければ済むからだ。また、同じテーマを三年間追い続けるくらいの集中力が無ければ、技術の一つもモノにするのは難しい。

 IT系の勉強会に行くと、いかに高度な技術か、いかに新しい技術か、そればかり求める人が一定数いる。確かに、高度な技術や新しい技術は刺激になる。だが、本当に有用なものなら、後から追いかけても有用さに変わりは無い。

 動向を見守って、本当に役に立ちそうならその時覚えればいい。本当に役に立つ技術なら、時間をかけて覚えてもいい。IT業界は、インパクトに流された者から本質を見失っていく。翻弄されずに済むように、自分の流れを作っていこう。

Comment(1)

コメント

仲澤@失業者

土台のお話は同意です。
似たような話で恐縮ですが、最近HowToだけを教えてほしい子ちゃんが多くて残念です。
原理さえが理解できていれば「推して知るべし」の話ばかりなんですけどね。
私のようなプログラマの世界では。

コメントを投稿する