方眼紙以前の問題
◾︎以前書いたコラムの反響を見て
以前、Excel方眼紙でいこう!というコラムを書いた。Twitterやらコメントやらについた反響を見ていろいろ考えさせられた。Excel方眼紙の是非の前に、まともに作られたドキュメントや帳票を見たことの無い人が多いように思う。クソドキュメントを見慣れ過ぎて、あるべき姿を完全に見失っている。
ドキュメントや帳票を作るのにスキルは要らない。大多数がそう考えているように思う。10分あれば書ける1枚モノと、100ページの見出し付きのドキュメントを同じ感覚で見ている。難易度の判断すらつかないのだ。そんな人に話が通じるはずもない。
◾︎ITスキル自体は何も生まない
例えば、絵心の無い人がPhotoshopの操作を覚えても、素晴らしい作品ができるわけでもない。設計の知識がない人がCADの操作を覚えても、設計図は書けない。ソフトウェアはあくまで道具だ。なんらかのスキルが元にあって、初めて役に立つ。
同じように、帳票を書くならデータを整理するスキルやフローの整理が必要だ。Excelの操作だけを勉強したところで、帳票を書けるようにはならない。Excelの操作を勉強する前に、データ整理のやり方や業務フローの整理について勉強する必要がある。でもなければ、Excelを使う理由すら理解できない。用途すら理解できないので、Excelで長編ドキュメントを書く人が出没する。
自分のイメージをソフトの性能で実現できたとして、イメージがクソなら出来上がるものもクソだ。コンピュータはドラえもんじゃない。言ったことしかやってくれない新人君に近い。こう言えば、使いこなすために知恵と労力を要することが理解できると思う。
◾︎ソフトウェアにも都合がある
根本的なスキル不足はソフトの性能で補えない。パソコンが普及した影響で、自分の能力でできる事とできない事を区別する能力が落ちたのかもしれない。本来自分に到底できないことでも、ソフトウェアの可能性が実現してくれそうな錯覚を起こす人をよく見る。
だが、そんな期待に応えられるほど、ソフトウェアはハートフルではない。プログラムされた通りの機械的な受け答えしかできない。自分が思い描いている実現したいイメージなんて関係ない。ソフトウェアはプログラムされた通りに動くだけだ。
ソフトウェアは作った人の意図通りにしか動かない。もし、意図しない動きをするなら不良品だ。使う人が何をどう考えようと、作った通りにしか動かない。そういう割り切りは必要だと思う。夢は膨らまないが、現実的な手段は繋がりやすくなる。
◾︎たまにはパソコンの電源を落として紙で仕事をしよう
ちなみに私は、考えが行き詰まったらパソコンでなくノートを使って考える。ドキュメントに起こす以前に考えがまとまっていない事がよく理解できる。ExcelやWordを使えば、多少考えがまとまっていなくても、それっぽいものができてしまう。
それっぽいもができてしまうのは恐ろしい事だ。情報が整理できていないのに気づかずに仕事だけが進むからだ。更に恐ろしいのは、仕事を早く進めるためにそれっぽいもので済ますようになることだ。炎上するプロジェクトでよく見るケースだ。
あと、Officeを使いこなすための努力をどれだけしているだろうか?まともに使いこなそうと思えば数年間の学習が必要だ。これを聞いて「そんなことはないだろ」と言う人ほど使いこなせていない。
ただ、使いこなせないのを自覚した上で、別の手段を講じるのであれば問題無い。実際、Officeのフル機能を必要とする業務は限られる。Officeを使う必要すら無い業務も多いように思う。みんなが使うから、無理やりOfficeを使って仕事をしているケースもあるんじゃないだろうか。この件に関しては別のコラムで書く。
Excel方眼紙以前に、業務を遂行できるだけの能力が自分にあるのか?そのくらいシビアに考えてみてはどうだろう。愕然とすることも多いが、素晴らしい気づきも得られると思う。
コメント
harikofu
少し違う話化も知れませんが、最近あった衝撃的な事例です。Excelで作ったとある管理表があって、そこには終了日と言う項目がありました。そして、数百件登録されていたデータの書式はyyyy/mm/ddになってます。
Excel特に書式制限は掛けてないので好きに入力できるのですが、普通は過去の履歴をみて「西暦のスラッシュ区切りで打つんだな」って分かりそうなのに、なぜか「5日」とか入力する奴が・・・
Excel方眼紙にしても、それが何のために存在しているのか考えれば分かりそうなものだと思うんですけど、何も考えないで独自の世界に入り込む人が多い気がします。
そして、クソを大量生産すると。
ksiroi
年単位スパンの学習期間が必要なのに新しい機能or新しいUIをほいほい出す某MS社が
今最も勉強学習すべきなんじゃなかろうかと思わなくもない
それが商売だってのも分かるんだけど発展を阻害してるのも自覚して欲しいところ
エンジニア休業中
文書はWordで、計算書はExcelで、そういう風に専門学校で習いましたが、
入った事務所では提案書は全てIllustratorでした。
その後、しばらくシステム管理の職のあと、現職の営業になってからは、
全ての文書がPowerpointになりました。
ところ変われば品変わるものですね・・・
ひっそり出す文書は表現力の豊かさゆえ、未だにIllustratorで作っていますが。
MS製品は好きなんですが、使いどころを間違えて指定されると苦しみしか生みません。
buzzsaw
>まともに作られたドキュメントや帳票を見たことの無い人が多いように思う。
個人的に、これは私のコンプレックスでもあります。理想のドキュメントおよび、
それをメンテナンスするための理想のやり方がどこかにあると思いつつ、
ドキュメントそのものにあまり縁がなかったので。
今まで何度となく「良いドキュメント」の作成方法を勉強してみましたが、
自分が作りたい(あるいは仕事で作らないといけない)モノがないせいか、
なんかこう分かった気になれませんでした。
そんな感じなので、私にとっては「ドキュメント」とはあまりにも世界が広く、
方眼紙論争には参加できませんでした。Excelと秀丸で事足りてます。
M_M
開いたExcel方眼紙の文書に、写真や図のようにExcelの表が貼り付けてあったときは怒りましたね。
EXCELER
100頁のEXCELがどんなもんかわかりませんが、実際に見てみるとこれはこれでよくできていると思うかもしれません。
テキストだけではわかりにくいので、ダメな事例のサンプル画像のキャプチャなんかを付けて頂くか、サンプルファイルをダウンロードできるようにしてほしいです。
現状、EXCELでドキュメントを作っていて困ったことはありませんし、メンテナンスでも困っていません。悪い事例を知りたいです。
また、悪い事例があるからと言って、EXCEL方眼紙が悪いかというとそうとも呼べませんので、具体例がほしいです。
通りがかり
「まともに作られたドキュメントや帳票を見たことの無い人が多いように思う」に共感しました。ドキュメントというよりも仕様書について書かせていただきます。
現職に転職してきて思ったことは、必要な仕様書が一式そろっていないことでした。開発会社に丸投げで、プログラムの詳細仕様しかそろっていない。
・RFPかと思いきや、詳細仕様が書かれている。
・開発会社から受領したパワポの提案書にシステム概要が書かれていましたが、その他のインフラ仕様がまとまったシステム設計書がない。
・機能仕様がない。
・データフローは不明。
・テスト計画書がない。
・テスト仕様書は開発会社から出てきたものをなぞるだけ。
その他にもいろいろありました。。。
そこで思ったのことは、目的と網羅性について何も考えておらんのだな、ということでした。世の中ではこんなことが横行しているものなのでしょうか。。。
Anubis
> 皆様
たくさんのコメントありがとうございます。
ご意見は今後のコラムの参考とさせて頂きます。
ところで、なぜに私がOffice関連のコラムをよく書くのか。
実は関西のLibre Office関連の勉強会でよく登壇しているからです。
今回、登壇の準備が忙しかったのでコメントが手薄になっております。
詳細についてはまたコラムで書こうと思います。