ITは本当に必要とされているのだろうか
■XPでいいじゃん
ちょっとした道端で聞いた一言だ。もうすぐWindows XPのサポートが終了する。私のユーザーさんのところでも、一斉にPCを入れ替えることになりてんやわんやだ。今まで使えていたソフトが使えなくなる、画面表示が変わる、IEのバージョンが変わる、云々、いろいろな議題が上がってくる。
PCにこだわる人であれば、たいがいWindows 7 か 8 あたりに乗り換えているだろう(そしてVistaは捨てているだろう)。ただ、あまりPCに関心のない人は、いちいち乗り換えなんてせずに、PCが動かなくなるまでXPで粘りたかったのだろう。たかがPCごときにお金や手間を掛ける気すらないようだ。
■使いこなすとか以前の問題
もし、営業職の人が身だしなみ、例えばヨレヨレのスーツを着ていたり、ボロボロの服を着ていたらどうだろう。身なりをキチンとしろと一喝されるだろう。しかし、同じ営業であっても、PCがボロボロでも何も言われない。使い方を知らなくても、誰も恥とは思わない。むしろ平気で逆ギレをする。
大事なプレゼン資料や、数字をまとめた重要資料、お客さまに提出するドキュメントを作成する道具だ。重要度はかなり高いはずだ。であるにも関わらず、ほとんどの人がPCに無頓着で、操作方法も適当だ。ソフトの仕組みを理解せずに、うまく動いてくれないと逆ギレする。口を開けば「もっと簡単に」の一点張り。そりゃ使いこなせる訳もない。
■ITは望まれていたのだろうか
普通の生活をしていれば、ブラウザの操作をひと通りできれば困ることはない。AmazonやYouTubeの操作、iPhoneで音楽を取り込む手順くらいができれば、十分に恩恵を享受できる。たぶん、普通の人はそれ以上のものを望んではいないのだろう。簡単な操作で高い利便性。それしか望んでいないと思われる。
こういうIT系のサービスが便利になるのは歓迎される。しかし、仕事でExcelの操作どころか、パスワード一つ覚えるのでさえ渋られる。本当は、ITの便利さだけ享受して、面倒くさい部分は一切関わりたくない。それが本音だろう。
労力をかけることで効率を上げる気がない。周りもみんな同じ考え方なので、誰も使いこなそうとしない。覚えようにも聞ける人がいないので、覚える事すら放棄する。そういう悪循環にハマり込んでいる。仕事でのITのリテラシーが上がらないのはそのためだと思う。
■ITを売る側の責任
ITを活用して恩恵を得るには訓練が必要だ。それは操作だけではない。Excelであれば効率のいい計算方法、Wordならドキュメントの構成能力、Powerpointならデザイン系の知識だ。Office一つ使いこなすにも、操作方法以外の知識や技術が必要だ。
確かに、わざわざそんなことを覚えなくでもソフトは使える。しかし、ソフトを活用して質の高い成果物は作れない。ソフトを売る側の人は、きちんとソフトの使い方を提唱してきただろうか。普及させるのも大事だが、使いこなせる人を増やす努力をしただろうか。
使ってる人に対して使いこなしている人が少ない。だからITの魅力が伝わらないのだ。それがITが望まれない原因ではないだろうか。質の高いソフトウェアを作るのは大事だ。同じくらい、使いこなせる人を増やすことは大事だ。使いこなせる人が少なければ、ソフトウェアをどう進化させるかの方針すら見出だせなくなる。
簡単さも大事だが、使いこなせる人が最大限の能力を発揮できる。これがソフトウェアの持つ真の魅力ではないだろうか。
コメント
通りすがり
仕事に使うシステムは、エンドユーザーだけではなく管理側からの必要もあるのでは。メールとExcelとパワポで全て済んでしまうビジネスなら、ITなんていらない、と言うでしょうけれど。
エンドユーザーの側に限定しても、使いこなすための努力と、その結果得られるものとを比較した時に、大した効果が得られないなら、Excelの計算式をどう組むかなんてことに頭を悩ませないと思います。Excelなら得意です、という人に頼めばいい、って場合も多いし。
教育の問題ではなく、WindowsやOfficeの新しいバージョンの魅力が薄い、というこということじゃないでしょうか?
Anubis
>通りすがり さん
コメントありがとうございます。
WindowsやOfficeの新しいバージョンの魅力が薄いのは同感です。
あとどうでしょう。
> Excelなら得意です、という人に頼めばいい、って場合も多いし。
無理に万人にITを推すより、こういうスタンスもありだとおもいます。
ご意見参考にしてコラムに活かしたいと思います。