省き過ぎてなくしてしまう前に
■無駄を省くということ
ITの基本的な考え方で「無駄を省くと効率が上がる。」とよく言われている。業務において、省けるものは省いた方が効率が上がるということだ。
例えば、日常繰り返す作業を自動化したり、方法を整理して簡単にするれば、少ない時間で多くの仕事ができる。そういう考え方である。
ある程度の段階まではこれで業務の効率が上がると思う。ただし、この無駄を省いて効率を上げるには、押さえるべきポイントがある。
■効率が上がるのではなく、最適化する
実際は、無駄を省くと業務の効率が上がるというのは違う。目的に対して、業務が最適化するというのが正しい。極限まで最適化した例が、工場のライン業務だと思う。仕組みだけ見れば、効率をはじき出すための最強の方式だと思う。
これがIT系の業務ならどうなるか。作成する書類のフォーマットを完全一律にして、各専門分野に特化させる。マニュアルの作成を徹底させ、業務を高度にフロー化する。実際にできれば効率は上がると思う。しかし、実現しているのは見たことがない。
■省きっぱなしで、もろくなる
最近の企業は、いろいろなものを省く事で効率を上げようとする。そのアプローチは間違えていないと思う。しかし、省いた後の詰めが甘くはないだろうか。
先ほどの例でいけば、工場のライン作業では行程を省きすぎて、働く人の労働意欲まで省いてしまう事がある。IT系の現場では、教育を省くので、マニュアルを整える以前に現状の業務ですらさばききれていない。
効率も大事だが省いてはいけないものはある。省くという行為が、効率と将来性をトレードする手段になってはいないだろうか。
■気づけば何かをなくしている
短いスパンで見れば、成長を維持できるので問題の解決方法のようにも見える。しかし、将来性を効率とトレードし続ければいつか必ず破綻する。
業務プロセスを省くことで最適化する、すると効率は上がる。報酬を省けば、利益は上がる。教育の手間を省けば、工数が稼げる。しかし、こういう手段に頼りすぎると、モチベーションが維持できなくなったり、考えが保守的になったりというデメリットがある。
省いたつもりが、何かをなくしてしまった。そうならないために、慎重に省くこと。ここが大事ではなかろうか。