ゾーホージャパン社のZohoサービスの開発現場で繰り広げられる、インド人エンジニアと日本人エンジニアによる共同作業が映し出すIT業界での新しい働き方について紹介する。

インド人エンジニアってこんな人

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はじめに

 近年、BRICsと呼ばれる経済発展が著しい国の1つであるインドに開発センターを持つソフトウェアベンダの日本法人に勤める若手日本人エンジニアが、インド人エンジニアとの仕事や生活でのやりとりで感じたことをつづるコラムです。

 わたしの所属するAdventNet(アドベントネット)は、世界のITベンチャーのメッカとして知られる米国カリフォルニア州シリコンバレー近郊に本社がありますが、CEOは南インド、チェンナイの出身者です。日本、中国に法人がありますが、情報技術産業が盛んで、CEO出身地のインドチェンナイに開発センターに開発者を含む多くの従業員はいますので、非常にインド色の強い企業となっています。

 扱っている製品群は大きく分けて3つあり、

1)通信キャリアや通信機器の開発ベンダーをターゲットにネットワーク管理システム(NMS)の開発ツールやパッケージ製品を提供するキャリア事業

2)帯域やサーバの監視ツール、サービスデスク(ヘルプデスク)の構築・運用ツールなど、Webベースの使いやすく拡張性の高いIT運用管理製品を提供するするエンタープライズ事業

3)オンラインでワードプロセッサ、表計算、プレゼンテーションなどのサービスを提供する生産性向上アプリケーション、プロジェクト管理、CRMサービス、データベース構築などのビジネスアプリケーションをSaaSモデルで提供するZoho事業

があります。

 今回のコラムでは、日々の業務内容とインド人エンジニアとの関わり、衣食住の違い、インド英語の特徴について記載していきます。

日々の業務内容とインド人エンジニアとの関わり

 日本法人での主な業務は、製品の日本語化、日本ユーザーへのテクニカルサポート、障害の1次切り分けと開発センターへの障害レポートの作成、開発センターに対して日本向け機能に対する要求の調整があります。

 開発センターのあるインドと日本の時差が3時間半あり、開発センターとのやりとりは主に午後からとなります。午前中は、ユーザーからの問い合わせ対応やウェブサイトのコンテンツ作成などの日本エンジニアのみで行える業務に専念していることが多く、また午後からのインド人エンジニアとのやり取りに備える時間にもなります。しかし、たいていの日は、午後一番からインド人エンジニアとやりとりがはじまることはありません。彼らは完全フレックスタイム制で勤務をしていますので、実際のやりとりがはじまるのは、日本の昼過ぎとなります。

Office1

 やりとりの内容は、日本ユーザーからの問い合わせや機能リクエスト報告が主ですが、なかなか簡単には分かってくれない機能リクエストもあります。わたしの担当している製品には、請求書を作成する機能があるのですが、金額の低い場合に、税金を加えることによって、小数点以下も表示されます。このような場合に、日本の製品では、1円以下は自動的に切り捨てですが、欧米などでは、小数点以下の金額を扱います。また、インドでは、1ルピー以下は切り上げです。このような商習慣の違いによる溝を埋めるのは、客観的な資料などを用意して納得してもらわねばなりません。資料が用意できない場合には非常に苦労します。実際のユーザーから要求が多いことを伝えることも要求を通す1つの有効な情報です。

 また、日本のユーザーが求める品質の高さは、世界でもトップレベルであります。このレベルにまで到達させるのには一筋縄ではいかず、地道に1つずつ対応している状況です。開発センターとしても日本でよい評価を受けられる水準に達することが、世界でよりシェアを拡大する上で、重要な要素となると認識しています。

衣食住の違い

 四季に合わせてさまざまなファッションをする日本と違い、インドは、日本の気候で表現すると1年中夏ですから、涼しげなファッションが多いです。特徴的なことは、富裕層から貧困層に限らず、女性はチュリダーやサリーと呼ばれるインドの伝統服を着ています。西洋的な服装をしている人は、全体で1割程度ぐらいです。一方で、男性のファッションは逆の比率で、伝統服を着ている人は1割程度で、貧困層の人が着ていることが多いようです。多くのインド男性のファッションは、1年中ポロシャツとジーンズです。

Indianwomen

 当社のインドオフィスも開発センターと言うこともありこのようなラフなスタイルで出勤しています。チェンナイの富裕層向けのファッションビルには、男性向けのショップが多く、女性向けショップが多くを占める日本のファッションビルとは様相が違います。余談ですが、インド人といえば、頭にターバンをまいて立派なひげをはやしているイメージがありますが、このような人はほとんど見受けられません。このような格好はイスラム系インド人のファッションで、ドラヴィダ人を根源とするタミル人が多く住むチェンナイでは少ないためです。

 日本とインドの食事の違いが顕著で、来日するインド人エンジニアや訪印する日本人エンジニアを苦しめているように思います。南インドでの食事は、複数の香辛料を使って作られた野菜や肉などで味付けした料理が多いです。遠まわしな言い方になりましたが、一般的にはカレーと呼ばれる料理です。ただ、日本の食卓にでるカレーとは一線を画すので、あえて、こう書きました。主観ではありますが、日本人がよく知っているカレーの原点は、北インドにあるように思います。インド料理全般は、暑さのために食べ物がだめになってしまうのが早いので、香辛料を多く入れたスープ状の料理が多いですが、とにかくよく焼きよく揚げるので、食材の新鮮さを大事にしたい方には、厳しい調理法かもしれません。

Canteen

 北インド料理店で出される料理は、日本で味わったことのある味付けになっています。インド人エンジニアが来日した際には、歓迎会をし、日本の食事を紹介しますが、日本の文化が十分に知られていない事もあり、寿司やお刺身を食べることにはかなりの抵抗を感じているようです。上述しましたが、とにかくよく焼きよく揚げる料理が多いので、日本食のやわらかい食感は、生肉を食べているように感じるようであまり好まない方も多いです。

 また、宗教での制限もあって、食事制限も厳しい方もいます。人口の大半を占めるヒンズー教のノンベジタリアン(非菜食主義者)であれば、牛肉を禁じている以外は、比較的自由ですので、日本での食事にも(勇気があれば)挑戦できますが、ベジタリアンの場合は、何で作られているのかを非常に気にします。インドでのレストランも、ノンベジタリアン、ベジタリアンの記載は必ずあり、その重要性が窺えます。

インド英語の特徴

 当社の場合は、日本企業主導のオフショア開発と違い、インド人エンジニアは日本語の習得が必須ではないので、コミュニケーションは英語となります。多くの言語があるインドでは、英語が公用語に指定されていますので、英語を流暢に話しますが、次のような特徴(なまり)があるようです。これらは、言語の専門家が分析したものではなく、当社エンジニアの経験を元にした考察ですので、必ずしもインド英語についての特徴のみを捉えているとは言えない箇所もありますが、ご了承ください。

  • Thのhが抜け落ちる
    • Thank you -> タンキュー
    • I think -> アイ ティンク
    • bath -> バト
    • thread -> トゥレッド
  • Rの前に小さい a または u が入り、巻き舌で発音する
    また、直前の子音とリエゾンすることがある
    • drop -> ダロップ
    • server -> サァルバァル
    • router -> ゥラウター
  • ダークLが無い(カタカナ英語に近い)
    • Tell -> テル
    • I'll -> アイル
    • mail -> メイル
  • 二重母音(アゥ、エァ、オゥ)が長音になる(この聞き取りが一番難しい)
    • about -> アボート
    • around -> アローンド
    • fear -> ファー
    • hear -> ハー
    • air -> アー
    • half an hour -> ハーファー
    • load -> ロード
  • 横に開く「a」が「アッ」になる(カタカナ英語に近い)
    • apple -> アップル (米: ェアーポォ)
    • application -> アップリケーション
    • address -> アッドレス
    • ajax -> アッジャクス (米: エィジェアクス)
    • cat -> キャット (米: キャェアト)
  • s音がz音になる(無声音が有声音になる傾向がある。t -> d)
    • receive -> rezeive (リジーブ)
    • spicy -> spizy (スパイジー)
  • くだけた表現をあまり使わない
    wanna, gonna, gotta, Hi, yeah等のくだけた表現をあまり使わない

 一方、インド人エンジニアも日本人英語の聞き取りには、苦労をしているように見受けられます。特に、r、l、vを含む発音が聞き取りづらいようです。幸か不幸か当社開発センターのある地名が、
Velacheryとこの発音が難しい文字が多く含まれているために、研修でしばらくインドに滞在するとアクセントを克服できていくように思います。

 全てのインド人が、完璧に英語を話せると思っているわけではなく、いろいろ気遣いをしてくれる方もいますし、何度も根気強く話を聞いてくれる方もいますが、俺の英語は完璧! と思っている方ほどなまりがきつく非常に聞きづらいなんてこともあります。

おわりに

 インド人エンジニアとのやり取りでは、言葉の違いも勿論ですが、企業文化、風習や慣習、社会インフラなどに様々な違いを理解する必要があります。これらが仕事に対する考え方やライフスタイルにも大きな影響を与えているので、単に言葉の違いを理解するだけでスムーズに仕事が進むわけではありません。国際社会の中で相手を理解し尊重して仕事を進めていく必要があります。グローバルに考えてローカルに行動するという言葉がありますが、当社の仕事は、グローバル向け製品を日本向けに適用するということです。スムーズに進めるのが難しい部分でもありますが、そのような企業風土を自分たちが中心になって構築し、日本のユーザの皆様に良い製品を提供するために、日夜奮闘していますので、このコラムが同じような悩みを抱えている方に少しでもお役に立てればと思っています。

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