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【小説 パパはゲームプログラマー】第二十二話 勇者の国2

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 遂に僕はグラン王国に足を踏み入れた。
 大陸では最大の人口と面積を誇る。
 今までの国と大きく異なるのは、街を巡回する親衛隊の多さだ。
 グランの言うことなら何でも従う全身黒ずくめの集団。
 他の国では大人しかったが、ここ、グランのお膝元では国民の規律を正すため、常に周囲に監視の目を光らせている。
 ただ、入国に関しては驚くほどチェックは緩かった。
 他国からやってくる移民をほぼ、ノーチェックで受け入れていた。
 大量の人口を支えるために、移民の労働力が必要なのだろうか。
 僕らはその移民の群れに紛れることで、グラン王国に入国出来た。

「すごい活気ね」

 ジェニ姫が街の喧騒を見て、率直な感想を言う。
 彼女は目立たない様に顔を布で覆っていた。
 大きな瞳だけが露わになっている。

「相変わらず、ゴミゴミしてる。私は一年に一回ここに来るけど、ここの空気は本当にいつも汚れている」

 ソウニンが吐き捨てるように言う。
 確かに街は建物がひしめき合い、祭りでもやってるのかと思う程の人の群れ。
 その大群は巨大な虫の様でモゾモゾ動くたびに、大量の土ぼこりが舞う。
 大群の隙間を、これまた塵を巻き上げながら馬車や二輪車が通り過ぎて行く。
 遠くの空では高い煙突から、灰色に薄汚れた煙が立ち上っている。
 ソウニンもまた目立たない様に顔を布で隠していた。
 僕以外の二人は有名人だ。
 素顔のままでうろついていたら、親衛隊に目を付けられる。

「まずはギルドに行こう」

 僕は二人の先頭に立った。

「どんな冒険者を求めているのかな?」

 黒い外套を着た赤毛女のギルドマスターがそう言う。
 外套の下は黒装束で、胸の部分が露わになっている。
 セクシー過ぎて僕は目のやり場に困った。

「心が読めるスキルを持つ人はいませんか?」

 僕は望む人物を伝えた。

「うーん」

 女ギルドマスターの名はヒロコ。
 ヒロコは小首を傾げ、眉根を寄せる。
 セクシーな身体とはギャップのある幼顔。
 僕はその仕草にドキドキした。
 そんな僕の脇腹を、ジェニ姫がドスッと肘で突く。

「一人知ってるけど、その人、引きこもりなの」
「引きこもり?」
「冒険者登録だけして、ギルドには来ないの。何でも心が読めるスキルに目覚めてからは、人間が嫌になったらしくて」

 僕はヒロコにお礼の金を払い、その引きこもりの家に向かった。

「ちょっと、何か物騒なところじゃない?」

 引きこもりこと、ダニーの家は表通りのすぐ裏手にある貧民街、つまりスラムの中にある。
 グラン王国の街はまるでハリボテだ。
 表は立派な建物と商店で飾られているが、一歩路地に入ると掃き溜めの様だ。
 そこには暴力の雰囲気と腐臭が漂う。

「あった!」

 地図の通り突き当りにダニーのものと思しき家がある。
 否、家というよりも掘立小屋といった感じだ。
 板を四枚重ね合わせて四角い箱を作り、その上に申し訳程度にトタンを乗せた粗末さ。

「ダニーさん。いますか?」

 僕は扉越しに声を掛ける。

 返事はない。

「ダニーさん」
「うるさいな」

 男のしゃがれた声が返って来た。

「お前、俺の家を汚いと思ってるだろ? だったら来るんじゃねーよ!」

 おお!
 マジ、この人、僕の気持ちを読んだ。

「あっ、お前、俺のスキルのこと知ってやがるな。よく来るんだよそういう奴が! まっ、確かに俺のスキルは使いようによっては便利だ。何せ、敵がこれから何しようか読めるんだからな」

 恐らく扉の向こうでダニーは、僕らのことを鬱陶しく思っているんだろう。
 僕らみたいにそのスキルを利用したい者は沢山いるだろう。
 それくらい便利なスキルだ。

「俺はそんな奴らが嫌になったんだ! お前もそんな奴だろ!」

 きっと彼は、そのスキルで嫌な目に合ったのあろう。
 それが原因で、彼は引きこもり生活を始めたのだろうか。

「ケンタ......」

 ソウニンが心配そうに僕に声を掛ける。
 僕は頑張って心を無にして、ソウニンを手で制した。
 そして、少し扉から離れてみた。

 今日はステーキが食べたい。

「ダニーさん」
「何だ?」
「僕は今日何を食べたいと思ってますか?」
「知るか。んなもん!」

 なるほど。
 1メートルくらい離れると心が読めなくなるらしい。
 彼のスキルは空間の制約がある。
 僕は意外に使いにくいスキルだという印象を受けた。
 だが、僕らはこのスキルが必要だ。

「出直そう」

 僕らは一旦、表通りに戻ることにした。
 宿を探し、長旅の疲れを癒すことにした。

「いらっしゃい」

 宿屋のおばさんは、板張りの床をギシギシ言わせながら小走りで受付まで来てくれた。

「この時期、移民と観光客が多くて忙しくてねえ」
「へぇ」

 おばさんは、額から汗をかきながら気さくに色々話してくれた。
 確かに宿屋は忙しそうだ。
 僕らの後ろには他の客が並んでいるし、おばさんの肩越しから調理場が見えるんだけど、コックさんが大量の料理を作っている。

「観光とか流行ってるんですか?」
「この国は観光地が多いからね。それにグラン王様が観光を重要な産業と位置付けてるから、旅行者をどんどん受け入れてるんだよ」
「へぇ」
「それに、明日、グラン王様の結婚式があるんだよ。遂に、お妃様が見つかったらしくて。そのお妃様を一目見るために、旅行者が沢山押し寄せて来てねえ」
「おお!」

 僕は驚いた。
 グランが遂に結婚。

「あいつ、この私を捨てて別の女に行ったのね!」

 隣でジェニ姫が地団駄を踏んでいる。
 プライドが高い彼女は、自分を捨てた男に腹が立つんだろう。
 そして、その男が自分以外の女を選んだことにも腹が立つんだろう。

 僕はマリナを信じている。
 だから、自然にお妃が別の人だと確信していた。
 グラン、君はマリナに断られ続けて、諦めて別の人を見つけたのか。
 嫁さんが見つかった矢先に、悪いけど復讐はさせてもらうよ。

「どんな人ですか?」
「さあ、私ら平民は見たことないよ。それに、昨日、いきなり結婚が決まったらしいから。さぁ、明日は街中お祭りだよ」

 おばさんは腕まくりをした。

 僕は一人部屋、ジェニ姫、ソウニンの相部屋になった。
 一応、男女分けなきゃね。

 ボロボロの部屋で一息つくと、ダニーのことを思い出した。

 彼のことを何とかしたい。
 グランの弱点を知るためには彼が必要なんだ。
 だけど、心を閉ざした彼をどうやってこちらに引き込もうか。
 そのことについて、ジェニ姫、ソウニンと話し合おうと思った。
 だけど、皆、長旅で疲れているようだ。
 隣の部屋から、女子達のいびきが聞こえて来た。

 僕はカーテンの間から差し込む朝日で、目を覚ました。
 窓の外から音楽が聴こえて来る。
 カーテンをスライドさせ、窓を開ける。
 黒ずくめの親衛隊が二列に並び、行進している。
 それぞれの手に楽器を持っている。
 ラッパを吹く者、太鼓を叩く者、何の曲を演奏しているかは分からない。(恐らく、グラン王国の国歌か何かだろうか?)
 先頭を行く者が、旗を振りながらまるで指揮者の様に振る舞っている。(恐らく、グラン王国の国旗だろうか? 赤地の中央に●が描かれている)

「グラン王様、おめでとうございます!」
「王様、末永くお幸せに!」

 家々の窓が開き、そこから国民達が祝いの声を上げている。
 散々、圧政で苦しめられている国民達だ。
 その祝いの言葉が、どこまで本心なのか分からない。
 親衛隊がそれに応えるように、窓に向かって金を投げる。
 それを掴もうと窓から身を乗り出す者が続出した。
 バランスを崩した者が、悲鳴を上げながら地面にキスをする。

「痛い! 痛い!」

 腕を押さえて転げ回る者を、親衛隊が指差して笑う。
 それでも、金を手にした負傷者は一瞬でも痛みを忘れたのか、笑みを浮かべている。

「だめだこりゃ......」

 僕は独り言ちた。
 グランは国民をまるでおもちゃの様に扱っている。

「じゃ、行こうか」

 僕らは宿を後にした。
 大通りに出ると、沢山の人が街に溢れ出て来て、祭り状態になっていた。

「賑やかね」

 ジェニ姫が当たりを見渡して、そう言う。
 確かに。
 今まで色んな国を回ったが、ここが一番、発展している。
 店が沢山立ち並び、欲しい物なら金さえあれば何でも手に入る。
 グランが治める国以外は、地理的に辺境の地だった。(資源が少ないとか、天候不順とか、人口が少ないとか、食料不足とか)
 パーティのメンバーは、厄介な土地を押し付けられた被害者なのではないか?
 僕はそう思うようになって来た。

「どけどけー!」

 僕らの真横を、猛ダッシュで籠を抱えた男が走り抜けて行った。

「捕まえてくれー!」

 その後、ターバンを巻いた商人風の男が息を切らせながら走ってくる。

「犯罪者も多いわね」

 ジェニ姫が、振り向きざまに指をはじく。
 氷のつぶてが籠男の後頭部にぶつかると同時に、四方にみぞれとなって吹き飛ぶ。

 ドサッ!

 男が倒れ、籠から沢山の短剣が落ちる。

「ありがとう」
「どういたしまして」

 ジェニ姫が応える。

「グラン王様の結婚が決まったから、恩赦で沢山の犯罪者が釈放されたんだ。だけど、そいつらは行く当ても無いから、また悪さして牢獄に戻ろうとしてるんだよ」

 ターバン男は呆れたように、籠男を小突きながら言う。

「ま、貧乏人は牢屋にいたほうが、食事にもありつけるからそっちの方がいいのかもな」

 ふと、僕はダニーを思い出した。

「わしの名は、ユルフン。この先で武器屋をやってる。何かあったら来なよ」

 ここで商売をする必要がある僕はユルフンに着いて行こうかと思った。
 だけど、今日は別の目的がある。
 今から一時間後に、城でグランのお妃がお披露目される。
 もちろん、お妃を見ることが目的じゃない。
 奴がどんな城に住んでいるのか、奴の周りにはどんな奴がいるのか、それを観察するのが目的だ。

 城の前にある大広場には、国民達が集まっていた。
 皆、祝福の声を城に向かって上げている。
 僕はこの人数で一斉蜂起し、城に攻め込んだらグランにも勝てるんじゃないかと思った。
 そのくらい、沢山の人が集まっていた。

 高らかに、ラッパが鳴り出した。
 歓声が止む。

 国民を見下ろせる位置、城の5階あたりのベランダ(メチャクチャ広い)に、グランが姿を現した。
 黒いタキシード。
 僕はマリナとの結婚式(グランに邪魔された!)を思い出した。
 グランの横には、純白のドレスを着た美しい黒髪の......

マリナ!

「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

つづく

Comment(4)

コメント

VBA使い

VBA使いとしては、
PRINT "う" & String("あ", 148) & "!"
と浮かんでしまうw


Oracleだと、
SELECT RPAD('う', 298, 'あ') || '!' FROM DUAL;
っすかね。

桜子さんが一番

まあ、話の流れからグラン嫁はマリナになるよね。

湯二

VBA使いさん。


コメントありがとうございます


流石、VBA使いですね。
すぐに思い付くんですね。
数まで数えてくれてありがとうございます。


いつも頭の片隅にあるのが、VBAを使って何でも問題を解決する主人公の物語で、いつか形にしたいと思ってます。

湯二

桜子さんが一番さん。


コメントありがとうございます。


長い振りのあとですからね。
ずっと、こうしたかったのもあります。

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