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【小説 パパはゲームプログラマー】第二十三話 勇者の国3

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 起きた。

 まず、目の前に飛び込んで来たのは太い何本もの鉄格子だった。
 次に石畳のヒヤリとした冷たさが体中を駆け巡った。

「ここは......?」

 薄闇の中、僕は半身を起こし辺りを見渡した。

「起きたか」
「はい」

 鉄格子の先にある人影が、問い掛ける。
 僕は反射的に返事をしていた。

「こんなめでたい日に、泣き叫びながら暴れまわるなんて。グラン王様の機嫌が悪かったらお前、死刑にされてたぞ」

 僕は闇にだんだん目が慣れて来た。
 僕に話し掛けているのは、全身黒ずくめの親衛隊だ。

「ま、今日は結婚記念日だ。多少の罪は目をつぶってやろうというグラン王様の情けだ。ありがたく受け止めるんだな」

 僕はグランの側にいるマリナの姿を思い出した。
 憎き男に寄りそう愛する人を見て、僕は気が狂ってしまった。
 気が付いたら、泣き叫んでいた。
 かつて、僕はマリナとの結婚式を、グランによってメチャクチャにされた。
 同じ様に、僕もグランとマリナとの結婚式をメチャクチャにしようと思った。
 城壁に飛びついて、よじ登り、グランを殺してマリナを取り戻そうとしたんだ。
 出来もしないのに。

「いてっ!」

 体中が痛い。
 僕は城壁に近づくことも出来なかった。
 周りの国民に押さえつけられ袋叩きにされたんだ。
 皆、グランにいいところを見せようと、僕を押さえつけた。
 城のベランダにいたグランの方からは、ゴミクズの様な僕の姿は見えなかっただろう。

「......僕は一体、いつまでここにいればいいんですか?」
「さあな。半年か......一年か......。これから余罪がないか取り調べがある。それ次第だ」
「そんな......」

 そんな長い時間ここで油を売る訳には行かない。
 僕はグランからマリナを取り戻さなければならない。
 マリナは無理やり結婚させられたんだ。
 僕は信じている。
 だけど、グランの側にいたマリナの表情は、かつて僕に見せたものと異なっていた。

 違う!
 違う!
 僕は信じている。
 早く彼女の元に行かなければ。

「あの~」
「何だ?」
「将来、僕は商売で成功します。そしたら、お金をあなたに上げるので、ここから出してくれませんか?」
「あ? 何言ってやがんだお前」
「お願いします」

 鉄格子から手を伸ばし、親衛隊の制服の袖をつかむ。

「やめんか!」
「お願いしますぅ!」

カツーン!
カツーン!

 遠くから軍靴を鳴らす音が聞こえる。

「やめんか! 無様だぞ!」

 背の高い、ヒョロッとした男が現れた。
 黒い制服の胸にはいくつもの勲章が並んでいる。
 尖った顎に鷲鼻。
 深々と被った帽子のせいで目の部分が隠されている。
 表情が分からない。
 それがかえって、怖さを演出している。

「ははっ! ワタベ様!」

 僕と押し合いへし合いしていた親衛隊は、背筋をシャキッとさせ敬礼のポーズをとった。
 ワタベは偉そうに僕を指差し、こう言う。

「釈放だ」

 僕は監獄の門を出たところで、手錠を外された。

「仲間達に感謝するんだぞ」

 親衛隊が励ますつもりのなのか、僕の背中をバシッと叩く。

「はい......」

 そう答えた時には、親衛隊は門の中に消えていた。
 僕はフラフラと、歩き出した。
 何で出れたんだろう?
 恩赦だろうか。
 グランとマリナが結婚したお陰で、僕は罪を許されたのか。
 だとするなら許されない方がましだ。

 向こうから人がやってくる。

「ジェニ姫......」

 ボロボロになった僕は彼女と目が合った。
 彼女の目が潤んでいる。

「もう、心配したんだから......」

 一緒に旅をして来た仲間が目の前にいる。

「ジェニ姫、ぼ、僕は......」

 たったそれだけのことで、不安だった僕の心は癒された。
 ひざまずいて、嗚咽する僕。

「あ......」

 僕の顔がフワリと何かで包まれた。

「私がいるから」

 ジェニ姫のいつもとは違う(いつもはツンツンとした棘のある声だ)優しい声が、僕の頭に降り注ぐ。
 頭髪を通して頭皮に伝わるのは、彼女の手の平のかさだった。
 意外に量感のある彼女の胸に、僕は顔をうずめる形になっていた。

「おーい!」

 遠くから、男の声。
 羽毛の様な感触に浸るのも束の間、邪魔が入るなんて。

ドン!

 ジェニ姫が僕を突き飛ばす。
 なっ、なんでっ!
 さっきまでメッチャ優しかったじゃん。

ゴン!

 僕は勢いで石の塀に激しく後頭部をぶつけた。

「おやおや。お熱いところ邪魔してすいませんねぇ」

 頭にターバンを巻いた小太りの商人、ユルフンだ。
 何で彼が今ここに?

「なっ、何でもないわよっ! こいつが貧血起こしたから支えてやってただけよっ!」

 僕を指差しながら、顔を真っ赤にして言い訳するジェニ姫。
 案外、ウブなんだなあ。

「それにしても、お前さん。釈放されて良かったな」

 ユルフンが僕の肩を叩く。

「はい。でも一体どうして?」

 不思議がる僕に、ジェニ姫が説明してくれた。

「大きな声じゃ言えないけど。ユルフンさんが、まあ、なんて言うか......保釈金っていうの? 賄賂を、ちょっとね......親衛隊に渡したのよ」

 あの時、僕は親衛隊に連行されていた。
 ジェニ姫とソウニンは目立つのを避け、敢えて僕を助けなかったそうだ。
 その後、二人は顔見知りになったばかりのユルフンを頼ることにした。

「そうそう。ワタベとかいう鷲鼻の男にな。ウン万エン渡してやった」
「なーるほど」

 恩赦かと思ったら、単なる商人と親衛隊の癒着だったのか。
 親衛隊の中には金で転ぶ奴もいるんだなあ。
 グランに忠義を尽くしている奴ばかりではないってことか。 
 僕は得意げなユルフンに礼を言った。

「あれ? ソウニンは?」
「宿に戻ってる」

 だけど、ソウニンは宿にはいなかった。
 僕らが泊まる部屋には書置きだけがあった。

「ごめん。
 やっぱり、マリクのことが忘れられない

                ソウニン」

「どっ......どういうことよ。これ......」

 ジェニ姫の置手紙を掴んだ手がワナワナと震えている。

「マリクか......」

 思い出した。
 パーティで活動していた頃、ソウニンはマリクに片思いしてたんだ。
 ソウニンは何度も素振り(まあ、この場合、好きだっていうアピールだな)を見せていたが、マリクは全然気づいていなかった。(否、気付いていない振りをしていたのか?)

 行く先も告げず、ソウニンは僕らの元を去って行った。

「まずいな......。ソウニンの奴、マリクに僕らのことを喋るんじゃないか」

 僕はこの先のことを考えて、慌てた。

「大丈夫よ。彼女はそんなことはしないし。マリクに会うことも出来ない」
「どうしてそんなことが言えるんですか?」
「ソウニンは自分の国を反乱軍に奪われて、逃亡している身。グランやマリクからしたら情けない元パーティメンバー。死に物狂いで国を取り戻すこともせず、逃げて来たある意味裏切り者。マリクはきっと、門前払いするか、殺すかの二択だわ」

 ソウニンが治めていた北の国は、反乱軍のクーデターにより崩壊した。
 表向きそうなってはいるが、いつもの様に僕が商売で成功し、集めた金で政治に不満を持つ国民を扇動して反乱を起こさせた。
 いつもと違うのは、統治者が死ぬことなく僕らの仲間になって逃亡生活をしている点だ。

「だとしても、ソウニンを早く探さないと」

 彼女はグランの弱点を知っている。
 だが、グランの弱点を口にしようとした者は死亡フラグが立つ。
 だから、ダニーに彼女の心を読ませて、グランの弱点を探り出そうとしたんだ。

「この広い国で、どうやって探すの? 見つけられっこないわ。彼女は行く当ても無く、きっとここに戻って来る。マリクに殺されて無かったらの話だけど」
「殺されたらどうするんですか?」
「その時は、その時よ。いつもの様に、商売で金をためて国民を従えて反乱を起こす。ついでにカンストメンバーも見つけてね」
「そんな時間ありません!」

 こうしている間にも、マリナが!
 ジェニ姫が目を丸くしている。
 恩人でもある彼女を、ビックリさせてしまった。
 僕は無様に声を荒げたことを悔いた。

「すいません」
「いいのよ。でも、それほどまで君に愛されてるマリナさんが、少し......うらやましい」

 どうしたんだろう?
 何だか寂しそうだ。
 ジェニ姫の表情がいつもと違う。(いつもは大きな目を光らせて、八重歯を見せながら鋭い言葉を発するんだ。いわゆる、はすっ葉ってやつかな)

「いいこと教えてあげる」
「はい」
「マリナさんは、何か魔法を掛けられている。そのせいでグランに惚れてるだけよ」
「何ですと!?」
「私は上級魔法使いよ。それくらい分かるわ」

 マリナが心の底からグランを愛していないという事実は、僕を安心させた。
 偽りの愛なら、僕が知っているマリナを取り戻すことが出来る。

「ジェニ姫、ありがとうございます」
「礼には及ばないわ。私とあなたは、同じ目的を持ったいわば、運命共同体」

 ジェニ姫は真っすぐ僕の目を見て、そう言い切った。

 とりあえず、ソウニンを待ちながら僕とジェニ姫は宿の一室で今後のことを話した。
 あれこれ金を稼ぐ方法を出し合った。

「これ、覚えてる?」

 ジェニ姫は羽織っているローブの内ポケットから『ゲーム』を取り出した。

つづく

Comment(4)

コメント

VBA使い

「やめ「ん」か! 無様だぞ!」


それがかえって、「偉さ」怖さを演出している。


親衛隊が「僕の背中を励ますつもりのなのか、」バシッと叩く。
→「親衛隊が励ますつもりのなのか、僕の背中をバシッと叩く。」の方がしっくりきます


彼女の手の平の「温」かさだった。


「私がいるから」「運命共同体」
→自分しか信じないと言ってたジェニがこんなこと言うなんて…


「ウン万エン渡してやった」
→ウン万というのが、1万~9万の事だとしたら、親衛隊の上官クラスに渡す額としては安いなぁ


今更ながら、タイムドファイヤは解除してもらえたんだろうか?

湯二

VBA使いさん。


校正、コメントありがとうございます。
今回は色々修正が多かったみたいで。。。


>自分しか信じないと言ってたジェニがこんなこと言うなんて…
ケンタとの旅を通して少し変わって来ているのです。


>ウン万
捕まった芸能人の保釈金位の額で。。。


>タイムドファイヤは解除
術を掛けた人が死んだので、自動的に解除されました。

桜子さんが一番

意外に量感のある彼女の胸に、僕は顔をうずめる形になっていた。
↑コレうらやましい。

湯二

桜子さんが一番さん。


>うずめる
人恋しいですなあ。

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