あなたの体験談を元に、前向きにおしゃべりしませんか?

小説「わたしのみらい」 ― 暗黙

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 ご無沙汰しております。竹内でございます。

 前回の記事で、「小説を書く」というお話をさせていただいてから、ずいぶんと時間が経過してしまいました。

 本当は、もう少し書き進めてからのほうがよいのではないかとも思いましたが、新たな年ももうすぐ始まりますし、とにかく外に向かって表現することが大事かと思い、エンジニアライフを表現の場として使わせていただこうと思います。週1回ぐらいのペースでアップできればと思っています。

 内容的な構想はありますが、ガチガチに固めて書き始めるというよりも、みなさんからいただくコメントなどによって展開は変わっていくかもしれません。逆に、みなさんとともに作り上げていければ楽しいのではないかと思います。その辺りも楽しみながら書いてみたいと思っています。

 時に展開が飛躍したり、現実とはそぐわない面もあるかもしれませんが、主人公が体験する1つのエンジニアライフとして、成長を見守っていただければと思います。

 特定の個人、企業、商品名等には十分配慮いたします。話の展開上、それらを連想させる表現が場合によってはあるかもしれません。いずれの場合においても、それらを批判、非難、中傷するものではございません。主人公が成長する過程で起こりうる思考や体験を再現するものですので、ご理解いただければと思います。

 参考文献等は都度表記しますので、その先をさらに学ばれるのもいいかもしれません。また、補足事項等があれば、個人のブログで補足する場合もあります。

 タイトルは、書き終わってから決めたいと思っていましたが、タイトルがないのも不自然なので、とりあえず「わたしのみらい」というタイトルで始めたいと思います。普通の小説ぐらいの長さになる予定です。叶うならは、最終的には本(驚!)になったら楽しいなと思っています。もしよければ応援してください。

 どのような展開になっていくのか、わたし自身ワクワク、ドキドキしていますが、最後まで書き続けられるよう頑張りたいと思います。
 
 それでは、お楽しみくださいませ(今回は展開の都合上やや短めですが、次回からはこの倍ぐらいになる予定です)。

小説「わたしのみらい」 ― 暗黙



 「この後どうすればいいのだろう……」

 公園のベンチで、タケシは悩んでいた。

 「今まで会社のために一生懸命がんばってきたというのに……なんでオレなんだよ。オレよりもスキルがないヤツは他にもたくさんいるだろう?」

 タケシは2日前、上司の笠原から会議室に呼ばれた。

 「近藤君、言いづらいことなのだが、実は、不況のあおりを受けて、うちの経営も厳しくなってきた。そこで、近藤君には大変申し訳ないのだが、地方の関連会社へ転籍をお願いしなければならなくなった。もし、退職を選択するのなら、退職金は通常の三割上乗せしよう。選ぶのは近藤君次第だ。いきなり転籍や退職といっても、いろいろと準備することもあるだろう。1カ月後にもう一度確認したいと思う。それまでに答えを決めて欲しい」

 転籍? 退職? 想定外の展開に、タケシには言われている意味が理解できなかった。

 「部長、何のことですか? なぜわたしが転籍なんですか?」

 「キミを失うのは非常に残念だが、分かって欲しい」

 笠原はうやむやな答えを繰り返すばかりだった。



 あれから2日、会社に行く気分になれず、風邪をひいたことにして会社へは行っていない。妻の恵子には転籍のことをまだ話せなかった。理由もなく家にいるわけにもいかず、いつものようにスーツを着て、会社に行くフリをしていた。

 公園のベンチでぼんやりとしていると、目の前を幼い子供とお母さんが手をつないで散歩している。

 「幸せそうでいいなぁ。それに比べてこのオレは……」

 やるせなかった。

 近藤タケシは、IT企業に勤めるプログラマ。大学を卒業後、中堅のコンピュータ関連会社に入社した。大学時代に培ったプログラミングスキルで若い頃から頭角を現し、証券会社の受発注システムや経営戦略システムなど、大手のシステム開発に携わってきた。

 そして、今は36歳。現場ではリーダー層と言える年齢になった。だが、タケシはリーダーにだけはなりたくなかった。

 「オレはエンジニアだぞ。プログラムを作ることが仕事だ。出世したいやつは他にもいるじゃないか。人をまとめる仕事はそいつらに任せておけばいい」

 これがタケシの持論だった。リーダー職への転向は、これまでも上司の笠原から何度か打診されたが、ずっと断ってきた。

 「オレが転籍の候補に上がったのは、ひょっとしたらリーダーを引き受けなかったことが原因か? そんなバカな。会社の連中だって、オレが今までどれだけ現場で実績を残しているかを知っているはずだし、オレが抜ければ会社も困るはずだ。だいたい、他の同期にはリーダーになりたいってヤツだっているじゃないか……」

 タケシは、自分が転籍する理由が未だに分からなかった。

 「転籍か……この不景気なら地方に行けば行くほど大変だろう。ここは、退職して他の会社に行ったほうがいいのかな? それとも、転籍に応じて、とりあえず会社にしがみついていた方がいいのかな?」

 猶予は1カ月。のんびりしている時間は残されていないことだけは明らかだった。

 「こうしていても仕方ない。本屋に行って転職雑誌でも買ってみるか」

 ベンチから重い腰を上げようとしたとき、先ほどの親子の姿はもうなくなっていた。

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コメント

第3バイオリン

竹内さん

こんばんは、別の場所でたまにちょっかいを出している第3バイオリンです。

小説、ついに始まりましたね。実はひそかに待っていました。
タケシさんはどんな決断をするのでしょうか。
今後の展開を楽しみにしています。

第3バイオリンさん、いつもありがとうございます。
ひそかに楽しみにされていたのですね。そのお気持ちがうれしいです。

> タケシさんはどんな決断をするのでしょうか。
え~、一言で言いますと……って、言えません(笑)。

ざっくりは決まっています。でも、それだけでなく、
書いていく中で、いろんな情報が繋がり、
物語が出来上がっていくこともあると思っています。

そういう意味では、タケシの成長を私自身、楽しみにしています。
今後ともよろしくお願いいたします。

竹内さま

どうもこんばんは。ちょっかいどころか、片腹痛い、よりも全身激痛なコラムを書き綴っている田所です。

わたくしは、SIerでインフラ系SEをしていましたが、疑心暗鬼な上司が、さらに冗長と相談して(結託して)営業行きか、辞めるかの二者択一を迫られていたのが、ちょうど5年前、34歳の頃でした。

体質としては、コピー機会社の代理店で、営業が幅をきかせる企業でした。転職サイトを信じた僕がバカでした。コピー機の飛び込み営業に異動を断ったとたん、即クビになりました。今ではノイローゼをこじらせて、ご覧の有様です。障害厚生年金生活者です。

バチが当たったのか、どうなのか、その企業も、無理な営業をし続けたために、顧客の信用をなくし、取引先の信用をなくし、いわゆるブラック企業と成り果てています。有能な社員はとっとと去り、いま、しがみついている社員は、生活のためだけに、企業と運命を共にしようとしています。

つまり、僕らの給料は、どちらかといえば、会社の資本金に充てられていたようなのです。社長は経営コンサルの方ばかり向いていました。今もそうでしょう。タイムカードはなくなり、サービス残業は常態化し、労基署でも有名な存在です。しかし、訴えるぐらいの金銭を払うなら、自分で貯めておけ、という理由で訴える人もいないようです。無気力だけが蔓延している、そんな感じです。

では~。

田所さん、コメントありがとうございます。

大変な思いをされたのですね。
会社の体質はいろいろあると思いますが、それをどう捕らえ、自分のために生かすかが大切なのかもしれませんね。

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