「3K? 7K? 三振の数じゃないですよね?」~IT関係の仕事、IT人材に関する誤解
TVや雑誌で、IT系の仕事をよく「3K」と揶揄したように表現をしているのを見かけます。
何人かのコラムニストからも投稿がありました。それどころか、「7K」や「24K」という話もあります。
この実態をデータで裏付けてみます。
●「K」とは
3K = 「きつい」「帰れない」「給料が安い」
7K = 3K + 「休暇が取れない」「規則が厳しい」「化粧がのらない」「結婚できない」
これ以外にも、次のような表現が出てきます。
「幹部が傲慢」「キリがない」「気が休まらない」「休憩できない」「心を病む」「雇用が不安定」「子どもを作れない」「(必要)経費が自腹」「過労死」……。
結局、多くの「K」は、3Kで言っている「きつい」「帰れない」「給料が安い」を掘り下げていったもののようです。
●「給料が安い」「労働時間が長い」は本当か?
景気減速で、有効求人倍率(企業の求人数を求職者数で割ったもの)がみるみる下がってきています。
2009年2月27日の厚生労働省公表によると、2008年8月に「0.86」だったのが、2009年1月には「0.67」になっています。
正社員に関しては、なんと「0.43」になっています。
ところが、ことIT技術者については次の表のように「3.38」という結果が出ています。
いまだに、IT人材不足は続いているということです。
では、「給料が安い」ということについてはどうでしょうか。
2009年3月3日の日経夕刊に次の記事が掲載されていました。
- 派遣時給の急落 2009年1月度 1551円(前年同月比 -2.3%)
- IT系技術者は、2009年1月度 1928円 (前年同月比 +3.3%)
全国の職種別の年収ランキングを見ると次のようになっています。
15位で「745万円」になっています。上場企業が調査対象なので一概に言えませんが、他業種に比べて必ずしも低いわけではないということです。
それでは、「労働時間が長い」について見てみましょう。
厚生労働省大臣官房統計情報部賃金福祉統計課が平成18年に公表した「賃金構造基本統計調査報告」では、次のようになっています。
職種別月間労働時間 約360万人の男性就労者についての統計
「49職種」平均月間労働時間:191.6時間
- 32位:システムエンジニア/183時間
- 34位:プログラマ/182時間
- 37位:電子計算機オペレーター/179時間
ちなみに
- 1位:営業用普通・小型貨物 自動車運転者/216時間
- 37位:百貨店店員/179時間
- 49位:大学教授/163時間
これで「3K」などの表現は必ずしも正しくないということが分かります。
3月2日の日経朝刊に政府原案 3兆円投資3カ年プランが掲載されていました。IT分野で40~50万人の雇用を生み出すという計画です。
Howがないのが気になりますが、必ずしも先は暗くないようです。
コメント
佐々木
IT系の労働時間や給与水準を他の職種と比較して
3Kや7Kが客観的事実かどうかというと、確かに、
かなり怪しいですね。
むしろ、主観的事実(働いている人の実感)として
3Kを感じている人の割合が他職種より多いことは、
客観的事実かもしれないと感じています。
自分の仕事を前向きにとらえられるよう個人を
支援していくことが必要と感じています。
名前
平均月収は「幹部が傲慢」の幹部の収入で
月間労働時間はサービス残業を記録に残してないでしょうし
こういう表面の数字にだまされてる人に向けて3Kだの7Kだのと主張しているわけです
NAME
自分が見てきた(関わってきた)プロジェクトでは、
プロパー社員の月間労働時間300時間超というのも度々ありましたし、
資料として提示されている労働時間はサービス残業等を含まない
(考慮していない)有名無実な意味の無いものじゃないかな?
と感じました。
先出の労働単価もおそらくコノあまり意味のない労働時間を根拠に
算出されているのでしょうから、
コレもまた実態とは差異が大きいのではないかと
自分には感じられました。
なまえ
この手の統計の対象になるのは美味いところだけを吸い尽くせる位置にあるような連中が大半だから数字に意味なんてほとんど無いし
そのしわ寄せが来る孫受けひ孫受けににいたっては上場していないところも多いから余計に数字には表れないわけなんですよ
数字なんていくらでもごまかしが効きます
こんなものを鵜呑みにしてないでちゃんと現場を見ましょう
高橋秀典
コラムニストの高橋です。
多くのコメントをいただきまして、ありがとうございます。
皆さんのご意見の「公表資料の多くは現実を反映していない」ということは、国がらみの数々の委員会で言い続けてきましたが、企業代表で参加している方々の意見は、「そうでもない」になってしまうのが現実です。
そうすると、国から公表されていて、それなりに根拠があるのは、このようなデータだけになってしまいます。
何とかするには正しい調査をする必要がありますが、実際には調査対象となる窓口に、先ほどの「そうでもない」と言われるような方がいるわけです。また、対象企業が偏っているわけではありませんが、多くの中小企業は求められても調査に応じないという現実もあります。
これではいたちごっこですが、どなたかが書かれていたように、何重もの下請けになっている構造的な問題を解決しないと、労働時間や給料が多い少ないといっても現象を追いかけるだけかもしれません。
どうすれば下請け構造が解消されるのでしょうか。それとも企業が、もしくは誰かが何とかしてくれるまでどうしようもないのでしょうか。
問題提起だけではなくて、何とか同じ思いを持つ人たちが、一致団結して動けるようにできないかと考えています。
佐々木
ありたい社会に対する想いを共有し、
異なる意見を認め合える同志なら、
いつでも行動をともにできます。
コラムの続きを楽しみにしています。
時々コメントさせていただきます。
高橋秀典
佐々木さん、
ありがとうございます。
私はエンジニアの道をずっと歩いてきましたが、その位置づけや育成のあり方に疑問を感じ、周囲の反対を無視して居心地のいい企業を飛び出しました。
スキル標準を活用した人材育成のコンサルテーションをビジネスにしていますが、収支を考えずどうすれば依頼企業(にいるIT人材)が幸せになれるかを目指しています。
そういう姿勢に共感して一緒にやろうといっていただける方も、思いのほか多くて、この業界も捨てたものではないと思っています。
一方で、自分の状況を変えようともせず、文句ばかり言っているというのも、この業界にいる人たちの特徴だと思っています。
このような人たちのためではなく、地道に頑張って仕事をしてスキルアップを目指しているエンジニアの皆さんを、何としても支援したいと考えています。
微力ですが、今後ともよろしくお願いします。
佐々木
目的が対人支援にあるということで共感しました。