376.『葬送のフリーレン』から学ぶビジネススキル(16)
初回:2024/08/07
『葬送のフリーレン』を、1話づつ振り返りながら、ビジネス的な考え方を伝えていこうという企画です。
今回は、第16話 『長寿友達』に基づいて話そうと思っています。
P子「フォル爺と僧侶アゴヒゲの回ね」※1
#16 長寿友達
あらすじ
https://frieren-anime.jp/story/ep16/
1.防御を意識できなければ簡単に致命傷を負う
フリーレン一行が、その昔ヒンメルたちと冒険をしていた時に出会ったドワーフの戦士・フォル爺を訪ねて村に来ていた。シュタルクが「本当に強い戦士なのか?」と尋ねると、フリーレンが「400年近く村を守ってきたドワーフだからね」と答えた。フェルンが「ドワーフの寿命ってどのくらいでしたっけ」と尋ねると、ザインが「300年くらいだな」と答えた。
P子「人生80年で換算すると、100才ちょいってところね」
村の入り口に、一人の老人が座っていた。
「フォル爺。久しぶりだね」とフリーレンが声をかけた。「どう、歴戦の老戦士って感じでカッコいいでしょ」とフリーレンが言うと、「老戦士ってレベルか?」とシュタルクが言った。フォル爺が「はて誰だったかな」というと、シュタルクは「よぼよぼじゃねーか」と言った。フリーレンが「まだボケたふり続けているの」というと、フォル爺はシュタルクの足を鞘の収まった剣で払った。
「戦闘での死因の多くは油断だ。魔族にも人にも、これが一番効く。立てんだろう。熟練した戦士でも、防御を意識できなければ簡単に致命傷を負う。儂が剣を抜いていたら、足を失っていたぞ」とフォル爺が言った。「相変わらず卑怯な戦法だね」とフリーレンが答えた。
シュタルクがフォル爺を老人と侮って油断していたため、簡単にやられてしまいました。
P子「断頭台のアウラもフリーレンの魔力量を見誤って負けたものね」
まあ、あれを油断と言ってしまうのは少し酷ですが、もし相手が本気で正体を隠して向かってきたのだとすれば、常に警戒していないとやられてしまうという事でしょう。
さて、『おうちに帰るまでが遠足、油断したらダメ』とアーニャが言っていた(※2)ように技術者はシステムでも製品でも作ったところがゴールと思ってしまいますが、実際のゴールは顧客、または利用者が使ってみて初めてゴールです。いや正確に言うとそこからがスタートです。
P子「ゴールなのかスタートなのかどちらなの?」
今回の話題は油断をすると足をすくわれるという事ですが、もう一つ、防御=セキュリティーを意識しておかないと簡単に致命傷を負うという事です。ランサムウェア攻撃など、他人事と考えていると痛い目に合うという事です。
もちろん、油断していたという事でもセキュリティ対策していなかったという事もないのですが、自分達は大丈夫だという前提での対策と、自分達にも起こりうると考えての対策では、その重さも異なってくるのではないかと思います。
2.お使いみたいな人助け
フォル爺と別れたフリーレン一行は次の村でザインの親友である『戦士ゴリラ』と仲が良かったという頑固婆さんに会いに行った。頑固婆さんは、依頼をいくつかこなさないと情報はそう簡単に教えられないと言ってきた。
「まるでお使いだな」とシュタルクが言うと、「ヒンメルとの旅を思い出すね」とフリーレンが懐かしんだ。フェルンが「こんな事もされていたんですか?」と問いかけると、フリーレンは「お使いみたいな人助けは日常茶飯事だったよ。こういうのが面倒な探し物や厄介な魔物退治に発展していくんだよね」というと、シュタルクは「不吉なこと言うなよ」と返答した。
偶然にも、今回のネタに非常に近い事例が、エンジニアライフのコラムについ最近アップされていました。
≪参考資料1≫
https://el.jibun.atmarkit.co.jp/you1tech/2024/08/goodwill-engineer-small-fix-adjustment-hell.html
善意エンジニアのちょっとした修正・微調整地獄
エンジニア同盟 ユーワンテックさん
2024/08/01
頑固婆さんは、お使い程度の軽い依頼をいくつもしてきます。これって『納品後のちょっとした修正依頼』に通じるところがある気がします。そして、徐々に難易度が上がってきます。そして、それが『当たり前』になり、『義務』になってきます。
今回のザインの場合は、戦士ゴリラの足取りを追うための情報をもらうという目的(ゴール)がありました。なので、ある程度のお使いが終われば、情報を引き出して終了ですが、一般的なシステム開発では、顧客とのお付き合いは数十年にわたって続きます。そうなると本当に最初のお付き合いを間違えると、大変なことになってしまいます。
P子「そんなこと、誰でも判ってるけど出来ないのよね」
善意の小改善なら良いのですが、納期も予算も人材もギリギリ...下手をすると標準以下の場合、導入後トラブルというのがいくつか発生してしまいます。もちろん、軽微なトラブルなのでサクサクっと修正してしまったりします。
これがいけません。
まず、顧客に対して軽い修正なら短期間に簡単に直せるという印象を与えてしまいます。次に、実担当者も顧客にご迷惑をかけていると感じ、トラブル以外の軽い要望をその場で受けてしまいます。また、トラブルではなく仕様不備(双方の仕様確認漏れとか、思い違いとか)の場合も、同様に軽微な修正を行ってしまう事があります。
さらに問題なのは、これがまかり通ると、顧客からのクレームが、開発会社の営業とか経営層にまで届きません。つまり、導入後のトラブルの存在に気づきません。という事は、納期も予算も人材も今まで通りで、なぜか導入後の後出し費用が多いので利益率が伸びないが、利益は出ているので手を打たないという悪循環になってしまいます。
トラブルであっても、軽微な要望であっても表に出してしっかり管理しないとフィードバックが掛かりません。つまり、納期も予算も人材も改善されないという事です。
P子「頑固婆さんのお使いから、そこまで話が大きくなるの?」
話を大きくするのが、『葬送のフリーレン』から学ぶビジネススキル の醍醐味です。
P子「そうかなあ」
3.まとめ
油断をすると足元を救われるお話が、セキュリティ対策を怠ると社会的信用も失うというお話になりました。また、小さなお使いが厄介な魔物退治に繋がるように、小さな善意が無限無賃労働地獄に繋がるというお話でした。
P子「若干、無理からの所もあるけどね」
どちらにしても、人間が社会活動を行っている限り、どのような行為も同じような現象を引き起こすという事です。
全ての経験が何らかの役に立つという事でしょう。
P子「無理からまとめてない?」
ほな、さいなら
======= <<注釈>>=======
※1 P子「フォル爺と僧侶アゴヒゲの回ね」
P子とは、私があこがれているツンデレPythonの仮想女性の心の声です。
※2『おうちに帰るまでが遠足、油断したらダメ』とアーニャが言っていた
SPY×FAMILY(第2クール) 15話 「新しい家族」での一言。
フリーレンのお言葉だと言っても過言ではない!?