今、話題の人工知能(AI)などで人気のPython。初心者に優しいとか言われていますが、全然優しくない! という事を、つらつら、愚痴っていきます

P37.新組織(5) [小説:CIA京都支店2]

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初回:2020/06/03

登場人物

これまでのあらすじ

 Mi7滋賀営業所の矢沢所長が、山村クレハに新規事業の調査を依頼したのと時を同じくして、CIA京都支店長からその新規顧客の獲得を横取りするという案件を受けたP子は、まずは城島丈太郎にクレハの監視任務を任せる事にした。翌日クレハと丈太郎は、源静香という将棋の駒の様な顔をしたおじさんと会っていた。

11.源静香の戦略

「お待たせしました。私が源静香です」

 待っていた部屋に現れたのは、将棋の駒の様な顔をしたおじさんだった。

「始めまして。CAI京都の川伊と申します」

 クレハはしれっとP子の偽名を名乗りながら名刺を手渡した。女性にしては珍しい金属製のシンプルな名刺入れだった。あの名刺は、以前P子先輩が浅倉南と対面したときに渡したものだろう。丈太郎はその名刺を横目で見ながら、自分の名刺を取り出していた。

「どうして私がここにいることが?」

 源静香と名乗った人物は、怪訝そうな顔をして、クレハと丈太郎を代わる代わる観察しながらそう言った。

「そういう商売ですから...」

 源静香は、ふっと笑顔になった。そして椅子から立ち上がり部屋の隅に置かれている電話を取り上げ、二言三言しゃべると元の席に戻った。

「なるほど。ただし、今日ここに来ることは比較的多くの者が知っている事なので、営業活動としては大したことは無いようだね」

 クレハも笑顔で返していた。コンコン、とノックの音がして一人の女性が入ってきた。お盆の上には、コーヒーカップが3つと、バインダのファイルが置かれていた。
 コーヒーを各々の前に置き、バインダを源静香に手渡すと、その女性は一礼して部屋を出ていった。

 源静香はバインダを広げ、1枚の紙を取り出すと、丈太郎の前に差し出した。

「これ、何だか判るかね」

 丈太郎は、顔色一つ変えなかったが、そこにはシロクロ写真の様な姿で、丈太郎の手荷物の拡大画像が写っていた。そこには、P子先輩から預かってきた無線追跡装置がしっかり映っていた。

「これって、空港とかに導入されてる透視カメラですか?」

 クレハが真顔で言った。きっと、入門ゲートかエレベータ前に設置されていたのかもしれない。もちろん、このビル自体が広告用に最新防犯システムが設置されているので、あってもおかしくは無かった。

「最新型だよ。もう一枚あるけど、見る?」

 クレハは笑顔で「結構です」と言った。

「プライバシーに考慮して、データは監視員は見ることが出来ない仕組みだし、不審物の部分を自動検知、拡大表示するシステムだから全身が透けて見られてしまう...という事にはならないんだよ」

 源静香は、笑顔で答えた。少し自慢気味に聞こえた。

「ま、そういう事なんで、今の所要望は無いので、お引き取り頂いて結構です」

 源静香は、笑顔のまま立ち上がると、置かれたコーヒーには手も付けずに部屋から立ち去った。

 置いてきぼりになった二人も、帰る事にした。

12.浅倉南の戦略

 翌日、クレハは昨日の事を浅倉南に伝えた。

「クレハさん、ありがとうね」

「いえいえ、どういたしまして」

「所で、昨日のデートはどうだった?」

「デートじゃないですよ~南先輩。でも楽しかったですよ」

「でも、それちょっと切り過ぎじゃない」

 浅倉南は、クレハの毛先を少しだけ触りながら、笑顔で言った。

「こんなことになる予定じゃなかったんですけど。城島さんは、案外喜んでくれてましたよ」

 浅倉南とクレハが笑った。

「所で...」

 浅倉南はパソコンの画面をクレハに向けて、指差した。

「ここよ」

 東京の地図だろうか?赤い丸が点滅していた。

「あの発信機、本当に小型なのに優れものですね。」

「最初、南先輩から作戦を伺ってびっくりしましたよ」

 浅倉南は、CAI京都支店の川伊の名刺を取り出し、針の様な発信機をその名刺の横から差し込んだ。針を引き抜くと先端部分だけが名刺の中に残った。

「これを金属ケースの名刺入れに入れて持ってって」

 浅倉南はそういいながらクレハに手渡した。クレハは「盗聴器の発見装置でもあるんですか?」と聞いた時、「もうちょっと精度のいい機器があるみたいよ」とだけ答えた。

「あなたが、川伊さんを名乗って、ある人物に会ってほしいの。そしてこの名刺を渡して居場所を特定して欲しいの」

「え、居場所を特定したい人物に会って、名刺を渡すって?」

「ああ、そうだったわね」

 浅倉南はその人物が、警視庁公安部に所属する重要人物で、たまたま京都に来るという情報を掴んだことなどを話した。

「それで、CAIの...そうね城島さんなんてどうかしら...彼を一緒に連れてって欲しいの」

「え、CAIの川伊さんを名乗るのに、CAIの城島さんを連れてくの?」

 クレハが楽しそうに、目を輝かせてきたのが分かった。

「きっと、城島さんも何らかの機器を持ってくると思うんだけど、必ず見つかるわ。そして追い返されるの」

「え?」

「ふふ。追い返されるのは、CAIの川伊さんと城島さんということよ」

「おぬしも悪よの~」とクレハがおどけて言った。

 浅倉南の悪だくみも成功した様だった。クレハは丈太郎を連れてその人物に会い、見事に?追い返されてきた。そして名刺の発信機から、その人物の現在の居場所が特定できた。

「さて、会いに行くわよ」

 浅倉南はパソコンを閉じると、立ち上がった。

======= ≪つづく≫ =======

 この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありませんが、あなたの知らない世界でこのような事が起こっているかもしれません。
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