余計なこと
あなたが何か、ITシステムを使っているとしよう。時には利用中のシステムに対してイラっとすることがあるはずだ。自分が利用しているシステムに100%満足しているという幸せな人に、私は今まで出会ったことがない。おおむね満足していても、必ずどこかしらに不満を抱いているものだ。そして、そのときのネガティブな感情は、以下の2つに集約できるのではないだろうか。
- 余計なことをさせるな!
- 余計なことをするな!
■これらの意味を考えてみよう
この2つはまったく正反対のベクトルを持っているように見える。片方は「なぜもっと省力化してくれないのだ?」と言っているわけだし、もう一方は「なぜそんなに省力化する必要があるのだ?」と非難しているのだから。
しかし、あなたの中でこの2つは何の矛盾も不整合もなく共存する。いったいこれはどういうことだろう。
■そこに矛盾は存在しない
実は、この2つは、まったく同じことを言っているのだ。
「余計なことをさせるな!」を言い換えると「そんなものは自分の仕事の核心ではない。自分の仕事に集中させてくれ!」であり、「余計なことをするな!」は「それこそが自分の仕事の核心的な部分なんだ。自分から仕事を奪うつもりか?」となる。
つまり、あなたは「自分の仕事の核心部」を漠然とではあっても定義していて、それ以外のものの受け入れを拒絶し、侵入者は徹底的に排除している。それが「余計なことをさせるな!」と「余計なことをするな!」の正体なのだ。
■己の欲せざるところ、人に施すなかれ
その閉鎖的な心の善し悪しをここで論じても意味がない。人とはそういうものなのだ。それを前提に対策を考えるというのが大人のエンジニアの取るべき態度だろう。
あなたが嫌がることは、他の人も嫌がることに違いない。だから、あなたが作っているシステムは、ユーザーに余計なことをさせてはいけないし、ユーザーから余計なことと思われることをやってはいけない。つまり、システム構築時には、利用者の「仕事の核心部」をしっかりと把握しなければならないということだ。
業務システムの場合、これが出来ずに利用者の反発を買うことはよくある話だし、コンシューマー向けのシステムの場合には、ネットで炎上したり、ただ単に無視されて終了ということになる。
あなたが作っているシステムは、ユーザーに余計なことをさせようとしていないだろうか? また、余計なことをしようとしていないだろうか?