テストエンジニア時代の悲喜こもごもが今のわたしを作った

勉強が先か、業務が先か

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 こんにちは、第3バイオリンです。

 エンジニアをやっている方は、たいてい何らかの勉強をされていることと思います。

 本を読む、資格試験を受ける、勉強会やカンファレンスに参加する……勉強するための場所、教材やツールは探せばたくさんありますし、なかには自分で作ってしまったという方もいらっしゃるでしょう。

 では、みなさんは一体何のために勉強しているのでしょうか。勉強したことを、どうやって業務に生かしているのでしょうか。そもそも、業務に生かせないなら勉強はする必要ないのでしょうか。

 実はわたし、少し前に「勉強と業務の関係」について悩んでいました。悩む中で考えたことと、悩みから抜け出したきっかけについてお話したいと思います。

■いらんこと言ってしまったかも

 ことの始まりは、7月に実施された課長との中間面接でした。

 どこの会社でもそうだと思いますが、わたしの会社では、1年のはじめに目標を設定し、年末までにそれが達成できたかどうかでその年の評価が決まるという仕組みになっています。中間面接とは、1年の折り返しにあたる6月~7月に、目標達成に向けて上期のうちに何をしたか、また下期では何をするつもりかを課長と話し合うための面接です。

 わたしは、今年の目標のひとつに「社外の勉強会やセミナーで得たことを課内に展開する」ことを設定しました。

 上期では「WACATE 2009 冬」で取り上げたGQM法について課内勉強会を開いたのですが、「意味が分からない」「テーマは面白いが勉強会としては失敗だった」といったダメ出しをいただくほどの大失敗に終わってしまいました。そのため下期も引き続き、この目標を継続することにしました。

 それからも本を読んだりして勉強を続けていましたが、ふと、自分の業務と勉強していることがうまくつながっていないような気がしてきました。先のGQM法の勉強会の失敗もそうですが、勉強したことが全然業務に反映できていないように思えてきました。

 「業務に生かせないなら勉強はするべきではないのか。あるいは勉強しても無駄なのか。そもそも『勉強したことを課内に展開する』といっても、自分が言い出しただけで誰かに頼まれたわけでもないし、わたしが思うほど、課員はわたしに期待していないのかも……」

 どんどんネガティブな考えが浮かび、これまで勉強してきたことは一体何だったのかとさえ思うようになってしまいました。「勉強する意味が分からない」なんて、まるで中学生みたいな悩みですが、わたしは思考の迷路にはまってしまいました。

■勉強したことを業務に生かすってどういうこと?

 ひとりで悩んでいても答えが出るはずはなく、わたしはTwitterで自分の疑問をぶつけてみました。

 するといろいろな立場の方がそれぞれの考えを返信してくれました。しかし、「業務に直結しなくても好きなことをすればいい」「『こんなことして何になるの?』と思うなら、勉強する必要ないのでは」「いやいや、業務に役立つことを選んで勉強するべき」「勉強したことが使えないと分かっても、勉強に費やした時間は戻ってこないから」と、相反する意見がたくさん出てきました。

 ひとつひとつの意見は、どれも決して間違いではないと思います。なぜなら、人それぞれ置かれている境遇も違えば勉強に対する価値観も違います。人によって意見が異なるのは当然です。しかし、これらの意見を聞いて、わたしはますます混乱してしまいました。

 混乱したまま、ある日わたしは課の定例会議で先輩の話を聞きました。その先輩は、社内の業務改善のワーキンググループに参加している方で、会議でワーキンググループの活動状況を報告してくれました。

 それを聞いて、わたしは気付きました。

 「『勉強したことを業務に生かす』って鼻息荒くしていたけど、いきなりこのレベルを目指そうとしていたのではないか」と。

 会社としての業務プロセスを変えるなんて、いくら勉強しても個人の力、それも平社員のわたしの力では不可能です(会社の規模にもよるでしょうが、わたしの会社は従業員数300名を超える規模です)。

 そういえば、中間面接のとき課長にも「展開といっても、いきなり大きなことじゃなくていい。まずは、普段の業務の中で個人レベルで使える『お役立ちネタ』みたいな感じのを紹介してくれたらいいから」とおっしゃっていました。

 何だか勘違いしていたというか、自分で自分のハードルを思いっきり上げてしまっていたようです。思いあがっていた、ともいえるかもしれません。それに気付いたわたしは、恥ずかしさのあまり頭を抱えたくなってしまいました。

■答えは自分の中に

 それからしばらくして、7月に高松で開催された「JaSST'10 Shikoku」の資料がアップされていることに気がつきました。

 行きたいと思っていたのですが、仕事の調整がつかず断念したこともあり、せめて資料だけでもと思い、読んでみました。すると資料を読むだけでも非常に内容の濃いセッションだったことが伝わり、ひさびさにテンションが上がりました。

 そして気付きました。

 「業務に役立つかどうかを抜きにしても、テストの資料を読めばテンションが上がる。これこそが『勉強する意味』の答えなのではないのか」と。

 そういえば、昔コラムで「知ること自体が楽しい」って書いたじゃないか(しかもタイミング良く「わたしの愛するエンジニアライフ」で紹介されましたね)、答えはすでに自分の中にあったんじゃないか、なんで忘れていたんだ……と、再び頭を抱えたくなりました。

 しかし、ようやく思考の迷路から脱出することができました。ひとまず、今の業務に関係があるかどうかは置いておいて、自分が好きなこと、気になることを勉強すればいい、その中に業務に役立ちそうなことがあれば役立てればいいと考えることにしました。

 もちろん、業務内容が変わって自分の好き嫌いとは関係なく勉強しなくてはならないことも今後は出てくるかもしれません。だけど、そのときはそのときです。本当に必要なことなら、嫌でも勉強する機会がやってくるはずです。それまでは、「自分がやってて楽しい、ついでに誰かの役に立てればなお嬉しい」くらいの気持ちで勉強を続けていこうかなと思います。

Comment(13)

コメント

はなまがり

自分の中に幹となるものはありますか?
自分の中でもそこそこ自信をもってできる業務で
例えば、先輩の業務を引き継げるとか、
ある程度のレベルに達しているもののことです。
それが出来上がるまでは業務に関連することを徹底的に叩き込み、
そのあとに他の勉強を始めた方がかえって効率的です。

第3バイオリン

はなまがりさん

コメントありがとうございます。

まずは幹をしっかり育てて、そこから枝葉を伸ばす、という感じですね。
今の私に、幹となる部分があるかと言われますと…
正直いって「これ!」といえるものが見当たらない状態です。

去年先輩からひとつのテストチームのリーダーを引き継ぎ、
その案件以外にも任される仕事の量と種類は増えていますが、
今はまだまだ幹を育てる時期だと思っています。

今興味があって、勉強したいと思っていることは
ソフトウェアテストの技法や、チームを動かすためのプロセスやマネジメントについてです。

まずは、業務知識をつけながらソフトウェアテストの技法について学ぶのが一番いいのかなと思っています。
できれば学んだ技法を自分のチームで使えたら、と思うのですが、それもなかなか厳しいですね。

インドリ

先に業務があって、勉強した事は道具のひとつだと考えるとよいかと思います。
私はフリーのエンジニアで、情報処理関係ならばどんな仕事でも引き受けております。
その際に気をつけている事は、「実際に発生している問題を、その環境に合わした方法で解決出来る道具を選ぶ」という事です。
技術の好き嫌いはありますし、純粋に技術的に考えれば、最善と思えない方法しかとれない企業が大半です。
しかし、企業は情報処理技術だけで動いているのではありません。
ですから、そこで我を張らないのがポイントです。
学習は選択肢を増やすためのものだと私は考えております。
そう考えれば、悩む事がなくなります。
学習した知識や身に付けた技術を使いたい気持ちはよく分かりますが、我慢するしかありません。

第3バイオリン

インドリさん

コメントありがとうございます。

>先に業務があって、勉強した事は道具のひとつだと考えるとよいかと思います。
>学習は選択肢を増やすためのものだと私は考えております。

自分が打てる手の数は多いほうがいいですよね。
目の前に解決したい問題が現われたとき、いつもひとつの方法しか使わない(使えない)のと
問題の大きさや内容に合わせて、複数の方法から一番マッチしたものを使うのでは
後者のほうが効率がいいですよね。
音楽でも、レパートリーが多いほうが周りの人をより楽しませることができます。

>学習した知識や身に付けた技術を使いたい気持ちはよく分かりますが、我慢するしかありません。

いくら自分がリーダーだといっても、会社のいちプロジェクトであることに変わりはありませんからね。
会社のリソースを使って、会社の利益を上げるのが第一の目的ですから
「ちょっと使ってみたいから」というワガママだけで新しい技術を使って、
結果大損を出してしまった、では通りません。
そこはきちっとわきまえています。

今までのやり方が通用しなくなって「どうしよう」とみんなが困っているときに
「こんなのがありますよ!」と、勉強した新しい技術を費用対効果も含めて紹介する…
という機会を夢見つつ、勉強を続けたいと思います。
何だか漫画みたいですけれど(笑)

源太郎

「勉強」するって、良いですよね!

私自身、エンジニアとして社会人になった当初は、
会社が教育してくれるものと勘違いをして・・・
ほとんど勉強をしませんでした。。。orz

コラムを読んで・・・
【勉強しよう!】という気持ちが一番大事で素敵だと、再認識させて頂きました。
業務で本当に悩んでいると、「勉強」したことや日常生活の中からヒントが
見えることがあります。
これからも「勉強」頑張ってください。

私自身、若い方々に負けないように「勉強」を続けたいと思います。

インドリ

>今までのやり方が通用しなくなって「どうしよう」とみんなが困っているときに
「こんなのがありますよ!」と、勉強した新しい技術を費用対効果も含めて紹介する…
という機会を夢見つつ、勉強を続けたいと思います。
何だか漫画みたいですけれど(笑)

いえいえそんな事はありません。
それが一番だと思います。
一つの方法だけに拘らず、常によりよい可能性を追求するその姿勢は、立派なリーダーだと思います。
リーダーたるもの、アンチパターン:黄金のハンマー(※)状態にならない様にしなければなりませんので、それがあるべき姿勢だと思います。
或る日突然、第3バイオリンさんの意見が採用される事もあるかと思います。
常に情報発信していれば、「そういえば第3バイオリンさんがあんな事を言っていたな・・・」となるでしょう。
※常に1つの方法/技術しか使わない状態。

インドリ

連続投稿失礼します。
書き忘れていたのですが、実は自分の意見が採用されやすいコツがあります。
それは、「それとなく先に起こるトラブルと解決方法を言っておく」事です。
※議事録に残るので会議が有効
人にはプライドや習慣があるので、「今までのやり方では駄目!」と言ってしまえば、それを考えた誰かや、その手法に慣れた誰かが反発してきます。
そこで、それとなく言っておくと、トラブルが起きた後で「そうそう。俺も第3バイオリンさんが言っていた方法の方がいいと思っていたんだよね。」などと、流れが出来てきます。
ポイントは、「先に種をまいておいて、ゴールと道筋を作って誘導する。」事です。
人は自分が考えたと思った事には同意します。
気が長くなければ出来ない事ですが、第3バイオリンさんならば出来ると思います。
是非お試しあれ。

第3バイオリン

源太郎さん

コメントありがとうございます。

>コラムを読んで・・・
>【勉強しよう!】という気持ちが一番大事で素敵だと、再認識させて頂きました。

そういう風に思っていただけて、私も嬉しいです。このコラムを書いてよかったと思います。

>業務で本当に悩んでいると、「勉強」したことや日常生活の中からヒントが
>見えることがあります。
>これからも「勉強」頑張ってください。

ありがとうございます。
「この勉強、業務に役立つのか…」と悩むこともありますが
今すぐに役立つことはなくても、いつか必ず役に立つはずだと信じています。

逆にいうと、学んだことを業務に応用できたときに
「そうか、こういうことだったのか」と腑に落ちることがあるのかもしれません。

>私自身、若い方々に負けないように「勉強」を続けたいと思います。

ええ、お互いに勉強を続けていきましょう。
「勉強しよう」という気持ちに遅すぎることはありませんから。

第3バイオリン

インドリさん

おおっ、たくさんのご意見ありがとうございます。

>或る日突然、第3バイオリンさんの意見が採用される事もあるかと思います。
>常に情報発信していれば、「そういえば第3バイオリンさんがあんな事を言っていたな・・・」となるでしょう。

まさにそれです!それをひそかに狙っています!(笑)
課長がおっしゃる「『お役立ちネタ』を展開」を普段から実行することで
「第3バイオリンに聞けば何か出てくるかも」と周囲の人に思ってもらえるのもいいかもしれません。

>それは、「それとなく先に起こるトラブルと解決方法を言っておく」事です。

「常に先を読む」ってことですね。
確かに、私のような普通の平社員がいきなり「このやり方はおかしいです!」なんて言っても
ウザがられておしまい、なんてことになりかねません。
なるほど、そういう戦略もあるんですね。

>ポイントは、「先に種をまいておいて、ゴールと道筋を作って誘導する。」事です。
>人は自分が考えたと思った事には同意します。
>気が長くなければ出来ない事ですが、第3バイオリンさんならば出来ると思います。
>是非お試しあれ。

うーむ、新しいことを取り入れて何か成し遂げるというのは思った以上に大変なことなんですね。
できる限りのことをやっていきたいと思います。

とても魅力的な記事でした。
また遊びにきます。
ありがとうございます。

第3バイオリンさん

コメントありがとうございます。
コラムニストのけいいちっくです。

ぼくの学生時代の友人にも市民オーケストラに参加している人がいます。
高校からはじめて。一生の趣味になりそうです。

バドミントンの市民団体に所属している人もいますし。
こっちは同じく平日も活動とのことです。

続けられる趣味を持つのは本当によいことだと思います。
今のところぼくは離れているのでみんなが羨ましいです。

コメントもらったおかげで名前とコラムが一致しました。

あー、たまにぼくも社内勉強会講師をしたりします。準備が大変。

第3バイオリン

職務経歴書の書き方さん

コメントありがとうございます。

>とても魅力的な記事でした。

そうおっしゃっていただけて嬉しいです。
こちらこそ、ありがとうございます。

これからも書き続けたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

第3バイオリン

けいいちっくさん

コメントありがとうございます。

>ぼくの学生時代の友人にも市民オーケストラに参加している人がいます。
>高校からはじめて。一生の趣味になりそうです。

私も高校から始めました。
ご友人と同じく、一生の趣味にできればと思いながら、日々練習しています。

>続けられる趣味を持つのは本当によいことだと思います。
>今のところぼくは離れているのでみんなが羨ましいです。

あら、そうなんですね。
年齢を重ねたり、ライフスタイルが変化したりすれば
趣味から離れていく…ということもあるでしょう
(先に一生の趣味にしたい、と言ったものの、
子供が生まれたらしばらくはオーケストラのほうはお休みしないといけません)

>あー、たまにぼくも社内勉強会講師をしたりします。準備が大変。

私自身も1回経験しましたし、他にも社内勉強会の講師をやっているという人を知っていますが
やはり準備が大変ですよね。
会社公認の勉強会なら準備も業務の一環ということで、業務時間内に行えたりしますが、
そうでない場合が多いですよね。

そうやって準備しても、参加者が少ない、あるいは参加者の反応が悪いときた日にゃもう…
いやいや、それでへこんでいる場合ではありません。

先日、とあるカンファレンスに参加してきたことを課のミーティングで話したところ
「予稿集を回してほしい」と要望がありました。
まずは小さいことから始めたいと思います。

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