変化を受け入れる覚悟が試された日
こんにちは、第3バイオリンです。
以前、 「変わりゆく世界のなかで「変わらないでいること」なんてできないと気づいた日」というコラムを書きました。そのときわたしは変化を受け入れる覚悟を決め、尊敬する先輩の元から離れるその日まで、先輩から吸収できることはすべて吸収するつもりで働く決意をしました。
しかし残念ながら、思っていたよりも早く「その日」がやってきてしまいました。
今回は「その日」がやってくることを知ったときから、「その日」を迎えるまでのことをお話したいと思います。
■それはあまりに突然のことで
3カ月ほど前に、課長からうちの部署の正社員全員に呼び出しがかかりました。集まったわたしたちの前で課長は、
・近いうちに正社員の1人(先輩とは違う方です)が関東にある親会社へ出向するということ
・その出向する社員の方がリーダーを務めていたテストチームを先輩が引き継ぐということ
を話しました。それはつまり、先輩が今のテストチームを離れるということ、わたしと先輩が一緒に仕事できなくなるということを意味していました。
わたしはこの話を聞いた瞬間、これ以上ないほど不安にかられ、怖くなってしまいました。足元が揺らぐどころの騒ぎではなく、一瞬地面がなくなってしまったような感覚を覚えました。変化を受け入れる覚悟をしていたはずなのに、いざとなると全然ダメでした。
しかもこの話を聞かされた日は、先に紹介したコラム掲載の前日でした。このとき、すでにコラムは完成しており、掲載を待っている状態でした。そのため「コラムであんなに偉そうなことを書いておいて、結局怖がっているじゃないか」とますます情けない気持ちになりました。
ただ、それでも心の片隅には「この状況を乗り越えたい! 乗り越えなければ!」という気持ちも少しですが、確かにありました。何も覚悟していないよりはマシだったのかもしれません。
■不安と気負いのなかで
先輩が抜けた後のテストチームには、新しいリーダーが就くことになりました。この新しいリーダーは元々同じチームで一緒に働いていた中途採用の女性社員です。彼女はわたしより年上ですが、テストチームに入ったのはわたしよりも後で、しかも今の部署でリーダーを務めるのは初めてです。
つまり、わたしは新しいリーダーをフォローすることと、自分自身がリーダーとして独り立ちすることを、同時にこなす必要が出てきたのです。
そんなこと、わたしに務まるんだろうか……課長の話が終わって、自席に戻った後もどこか上の空でした。そのとき、少し前に手がけたテストの仕事でミスがあったことがわかりました。使用するアプリケーションを間違うといった初歩的なミスで、再テストをするはめになってしまいました。
このことで余計自分に自信がなくなり、「自分で自分が信じられない状況で、誰かに信用されるはずがない。この状態で、支えられる側から支える側に回って、うちの部署を回していくなんて、できるわけがない」と1人で泣きたい気持ちでした。
その日は会社の有志による飲み会(うちの部署からはわたしだけが出席)があったのですが、その席でもずっと上の空でした。その様子を心配した後輩の女の子が、わたしに声をかけてくれました。
この後輩は開発部署に所属し、先輩がリーダーを務めるテストチームが担当するプロジェクトのメンバーです。また、わたしがリーダーを務めるテストチームとも一緒に働いています。
先輩が担当から外れることはまだ他部署の人には口外できない状況だったので、わたしは、
「今、評価部署はいろいろ体制が変わっていて、わたし自身が果たすべき役割も重くなりつつある。でも、今日も変な失敗をしてしまって自信が持てないし、うちの部署がどうなるのかもわからなくて不安だ」
とだけ伝えました。
自分の気持ちを言葉にした途端、涙が溢れてきました。後輩の前で泣いてしまうなんてカッコ悪い……と、うつむいているわたしに対して後輩は言いました。
「評価部署の詳しい状況はわかりません。でも、第3バイオリンさんはまだ5年目ですよね。それでリーダーになることだけでも大変だし、失敗したり不安になったりするのはむしろ当然のことではないのですか?」
この一言で、気負いすぎていた自分に気がつき、少しだけ楽になりました。
それにしても、しっかりした後輩です。どちらが先輩だかわかりません。よい後輩に恵まれて、わたしは幸せ者です(苦笑)。
■先輩、ありがとうございました
12月末に、先輩がテストリーダーを務めるプロジェクトの反省会が開催されました。これでプロジェクトは一区切りし、先輩はテストチームを離れることになりました。先輩、お疲れ様でした。新しい業務の引継ぎと同時進行で大変だったと思います。
そして2月に入り、出向する社員の方も親会社で新しい仕事をスタートさせました。彼が戻ってくるのは1年以上先のことです。また少し寂しくなりましたが、評価部署をきっちり回していきたいと思います。
最後に、この場を借りて先輩にお礼の言葉を伝えたいと思います。先輩はわたしがコラムニストであることを知りません。だからこのコラムは見ていないと思いますし、たとえ見ていたとしても自分のことだとはわからないと思います。でも、面と向かっていうのは恥ずかしいので、それで構いません。というより、先日開催された、出向する社員の方の壮行会で自分の気持ちの大半をカミングアウトしてしまったので、もう隠す必要もなくなりました(笑)。
先輩、わたしが評価部署に異動になってから今までの間、本当にお世話になりました。先輩と一緒に仕事して、初めて「こんな人になりたい」と思える人に出会えたような気がします。そんな先輩の下で働くことができたのを誇りに思います。本音を言わせてもらうと、もう少しだけ一緒に仕事をしたかったのですが、わたしにとって「親離れ」の時期がきたのだと思います。テストチームは新しいリーダーとわたしにお任せください。わたし自身も、立派なリーダーになってみせます。そしていつの日か先輩に追いつき、追い越してみせます。待っててください!
コメント
sunset
こんにちは。最近コラムニストに参加させていただいた者です。
いつも楽しく拝見させていただいています。
> わたしと先輩が一緒に仕事できなくなる
私も、これと似たような経験を、同じく5年目のときに経験しました。
同じグループで働いていた、尊敬する先輩が退職されるとのことで、非常にショックを受けました。
ちなみに私も、何かの飲み会でベロベロに酔っ払って泣いてしまいました(回りみんな先輩だったけど、男なのに。。。汗
「いろいろ勉強させてもらいたかったのに」という思いと、「開発リーダーとして仕事ができる!チャンスやー」という気合が微妙に入り混じったのを覚えています。
結局のところ、退職された先輩の仕事(保守案件のリーダー&新規案件)が一気に5つほど回ってきて、目も当てられない状態になってしまいましたが(苦笑
ヘコむこともありますが、チャンスや責任、個人の裁量、スキルなども、一気に広がりを見せるタイミングでもあります。
僕は、この時期がなかったら、今の自分はないと思っています。(今も大したことしてないんスけど。。。
第3バイオリンさんが、立派なリーダーになれるよう、草場の陰から応援しております。
あずK
某所で書かれてた「ネタがかぶった」を見て来ました(笑)。
確かに、尊敬していた方が離れてしまうという点では同じですが、
相手の方が「先輩」か「上司」かで違っている、と。
その違いは大きくて、
第3バイオリンさんは自分がテストリーダーへと成長しなければならないのに対し、
自分は上司の業務を引き継ぐわけではない下っ端社員なので、
この1ヶ月、変化なんて何もなかったです^^;
#今後あるかもしれない、という可能性は置いておいて
受動的な変化が無い、ということであって、変化しているとしたら
自分が能動的に変化する、という言い方のが近いかもしれません。
今年に入ってから、自分自身を見つめなおしておりまして。
いい機会ができたなあ、と。
#そのあたりの話は自分のコラムで書くとして。
僕も、第3バイオリンさんが素敵なテストリーダーになれるよう、
大仏の傍で(笑)応援しております。
第3バイオリン
sunsetさん
はじめまして、コメントありがとうございます。
>私も、これと似たような経験を、同じく5年目のときに経験しました。
>同じグループで働いていた、尊敬する先輩が退職されるとのことで、非常にショックを受けました。
私の場合は、先輩はテストチームから離れるだけで、今でも同じ会社の同じフロアにいます。
それでも話す機会はだいぶ減り、寂しく感じているところです。
退職となると余計に辛いし、泣きたくなるのも当然ですよね。
私も、この先輩がもし退職したら絶対に泣きます。
>「いろいろ勉強させてもらいたかったのに」という思いと、「開発リーダーとして仕事ができる!チャンスやー」という気合が微妙に入り混じったのを覚えています。
それは私も同感です。
もっと一緒に仕事をして、いろいろ教わりたかったとも思うし、
いつまでも頼るばかりでなく、先輩の上を目指したいとも思っています。
>第3バイオリンさんが、立派なリーダーになれるよう、草場の陰から応援しております。
ありがとうございます。私がんばります!
sunsetさんも、今「人生の転機」を迎えていらっしゃるんですよね。
コラムの続きを楽しみにしています。そして、幸せな結末になるよう、応援しています!
第3バイオリン
あずKさん
コメントありがとうございます。
>某所で書かれてた「ネタがかぶった」を見て来ました(笑)。
それはそれは。
書き始めたのは、あずKさんのコラム掲載よりも前だったんですけど…
と、言い訳めいたことを言っておきます。
ちょうど、2月になってこの問題に関わるもろもろの事象のすべてに
区切りがついたところだったので、このタイミングになりました。
>第3バイオリンさんは自分がテストリーダーへと成長しなければならないのに対し、
>自分は上司の業務を引き継ぐわけではない下っ端社員なので、
>この1ヶ月、変化なんて何もなかったです^^;
>#今後あるかもしれない、という可能性は置いておいて
そうは言っても、先輩は同じ会社にいるので、質問などがあっても
すぐに聞きにいけるし(でもあまり頻繁にはいけませんが)
そこまで大変ではないかもしれません。
ただ、先輩にも新しい仕事があるので、今までと同じ感覚で頼ることはできないし、
今はとにかく早く安心させたいという気持ちでいっぱいですね。
むしろ、そんな焦りとどうやって折り合いつけるかが今後の課題でしょうか。
>受動的な変化が無い、ということであって、変化しているとしたら
>自分が能動的に変化する、という言い方のが近いかもしれません。
周りの状況に変化がないように見えても、自分のポジションや心がけが変化することはありますよね。
そういう意味では、「変化がない」なんてことはないのかもしれませんね。
>今年に入ってから、自分自身を見つめなおしておりまして。
>いい機会ができたなあ、と。
>#そのあたりの話は自分のコラムで書くとして。
あら、そうなんですか。
ぜひコラムに書いてください。楽しみにしています。
>僕も、第3バイオリンさんが素敵なテストリーダーになれるよう、
>大仏の傍で(笑)応援しております。
ありがとうございます。
時には失敗もあったりしますが、それでも応援してくれる人がいて
ひとりではないということがわかると心強いものです。