サスペンスドラマの品格
今月のお題は「○○の品格」。
サスペンスドラマなんてまだ見てるの? なんて皆さん思うかもしれない。かつてはわたしも、何も見る番組がないときしか、サスペンスドラマは見なかった。
会社の旅行で、波が打ちつける断崖絶壁の名所に行ったとき、「火曜サスペンス劇場だなあ」なんてつぶやいてしまう。それほど、サスペンス劇場のロケ地はお決まりの定番がある。温泉旅館やグルメも登場する。当初、サスペンス劇場は松本清張などの著名な推理作家の小説をもとに作られたそうで、ゾクゾクさせるものがあったかもしれないが、何しろ昭和時代から毎週のように続けていれば、マンネリ化してしまうのは仕方がない。かくして、日本テレビは火曜サスペンス劇場を打ち切った。マンネリ化したものに、品格は感じなくなる。
ところで、サスペンスドラマをやっていたのは、日本テレビだけではない。テレビ朝日はまだサスペンスものを続けている。ケーブルテレビで昔のサスペンスドラマの再放送を見たのだが、このシリーズは気に入った。「タクシードライバーの推理日誌」! 渡瀬恒彦さんの演技がとにかくすごい! よく演技で、あれだけ自然な喜怒哀楽の表情が出せるものだなあと思ってしまう。「ドラマはしょせんフィクション、殺人事件推理ものは視聴者の推理をあおればいいだけ」という常識を覆す、力の入った迫真の演技。また、共演の女優も非常に気合いの入った演技をしてくれる。それだけ、渡瀬さんは歳を取っても慕われる品格があるオヤジさんなんだな。
お兄さんの渡哲也さんは、格好いい役しかしない。渡瀬さんは、二枚目だけどアパートで灰色のスウェット姿で寝ている姿が似合う。女房に逃げられた役が似合う。タクシードライバー、はまり役ですよ。毎回、女優さんに「どうして刑事をおやめになったんですか?」と聞かれる。
なんと、タクシードライバーの推理日誌は1992年から始まっている。毎年1、2本を収録、シリーズは20作以上を超えている。マンネリ化なんて、なんのその! 次は、どんな女優が渡瀬さんとどのように共演をしてくれるのか、楽しみになってしまうのだ。とにかくこのシリーズは、俳優の演技力によってテレビのサスペンスドラマの世界に視聴者を魅了してしまう気品が感じられる。
われわれエンジニアの世界では、通勤から会社にいる間ずっと無表情ポーカーフェイスで、感情的になると仕事にとってマイナスになることが多い。えてして、人間味が欠如した生活になりがちだ。たまには渡瀬さんの人間性からにじみ出る喜怒哀楽に満ちた演技を見て、人間であることの素晴らしさを味わってみよう!