外資系IT企業の過酷なIT現場を経た同期4人組(現在は研修講師)が執筆します!

“明日香リーダーになる”の巻~第1話(上)

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第1話:リーダーはメンバーの状況を理解しよう(上)

 自分の席に戻った明日香は、さっきの真紀子の言葉を改めて思い出していた。……リーダーたるもの、メンバー1人ひとりを把握しないでどうするの!……

 明日香が来月から率いるチームは、自分を含めて6人。

 では、自分以外の5人のメンバーは、いつも何をしているのだろう。いままでは机を並べて何となく分かっているつもりだったけど、よく考えると意外に彼らのことを分かっていないんじゃないだろうか。明日香は、1人ひとりの仕事の簡単なプロフィールを作ってみようと思い立った。

 ちょっと具体的に書き出そうとすると、すぐに行き詰まってしまった。彼らが今どんな案件にどのくらい時間を割いているのか、抱えている最大の課題は何か……そういう大ざっぱなことでさえ、実は分かっていない!

 そう気付くと、明日香はちょっと焦りを感じた。思いきって、草一郎と真紀子にメールを打つことにした。

 社内といっても、この3人の間に仕事絡みのメールはまずないので、日頃から私信モード全開でやりとりしている。

 「真紀子さん、草一郎くん。明日香です。さっきはありがとう。別れ際に話しきれなかったことがちょっと気になって、メールします。忙しいと思うので、返信は時間のあるときでいいからね。実は、わたしのメンバーになる5人のことについて。長い人は5年、短くても1年は一緒にいる仲間だけど、リーダーという立場で改めて見直したら、皆が何をしてどういう状況なのか、ちっとも分かってないことに気付いてちょっと焦っています。2人は、メンバーの仕事の内容や状況をどうやって把握していますか? もしよかったら、簡単でいいので教えていただけると嬉しいです。 明日香」

 草一郎から夕方にさっそく返信があった。

 「草一郎です。質問の件、僕はとにかくいつもメンバーに話しかけられたら、何をしていても手を止めて話を聞く、ということを心がけています。昼ごはんも必ずだれかと一緒に行くし、ご存じのとおりよく飲みに行くから、そこでも自然に会話のなかからみんなの状況は把握できていると思います。ただ、さっき今屋部長の前でぼやいたのは、最近配属されてきたメンバーが、遠いお客さんを担当していることもあってどうも直行直帰が多くて、なかなか話すチャンスが取れなくて。人によって違うやりかたをしないといけないと思い始めています。簡単だけどとりあえずこんなところで。 草一郎」

 すると5分後に、真紀子からもメールが来た。

 「真紀子です。わたしは、エクセルで添付の専用フォームを作って、毎週月曜朝に提出してもらっています。これを読めば、前週の仕事の内容と進ちょくはばっちり把握できます。うちの部門は1人ひとりが専門的な仕事を担当しているし、立ち話や酒席の話だけではいいかげんになるかもしれないし、正確にメンバーの仕事を把握できるはずがありません。営業部門にもそういうフォームとかしくみが本当はあるのでは? ちょっとびっくり、というか呆れています。しっかりしてよ~! 真紀子」

 フムフム…そこへ、明日香の電話が鳴った。

今屋 「今屋です。いま大丈夫? さっきはよく話せなかったけど、異動にでもなったの?」

明日香 「いえ、異動になったのは先輩リーダーです。だからわたしが昇格してリーダーになりました」

今屋 「そうだったの。改めて、おめでとう」

明日香 「さっきの草一郎くんがぼやいていた件で、ちょっとおたずねしてもいいですか?」

 明日香は2人からのメールについてかいつまんで説明した。

今屋 「そうだね、どっちも必要なことだけどね。朝田くんの場合、人柄も気さくだし、周りはなじんだメンバーなんだろう。リーダーになるから、ということでとりあえず顔合わせを兼ねて1人ひとりから話を聞いてみたら? 堅苦しくならないで、ただ話をしてもらえばいいんだよ」

明日香 「そうですね!! そういえば今屋部長は、わたしが新人のとき、よく1人ずつ呼んでざっくばらんに話を聞いてくださいましたよね~思い出しました」

今屋 「なんとなく話してもらうだけで、いろんなことが分かるからね」

明日香 「ありがとうございます!」

 明日香はさっそく、5人のメンバーの1人ひとりから顔合わせを兼ねて話を聞く予定を立てることにした。

 まとめ:リーダーはメンバーの状況を理解しよう

□メンバーに話しかけられたら自分が何をしていても中断して話を聞いていますか?

□メンバーが仕事の状況を定期的にメールや文書で報告する仕組みがありますか?

□メンバーと1対1で話をしていますか?

(原案:エムズ・ネット・スクエア 講師 池田典子)

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