腐っても肩書き
■Firefoxともじら組
Webブラウザ「Firefox」といえば今時のITエンジニアなら大概ご存じだと思います。しかし、Firefox誕生以前からそれを応援していたコミュニティの1つである「もじら組」は、どれくらいの方がご存じでしょうか。
1998年、Netscapeがブラウザオープンソース化を発表したのは当時の大きなニュースになりました。しかしながら生まれたプロジェクト「mozilla.org」の活動は、最初の数年はお世辞にも成功したとはいえないものでした。見捨てる人も多くいました。そんな中、mozilla.orgを応援するコミュニティが日本にも現れました。2000年頃から日本でも応援する人が集(つど)い始め、少人数ながら当時としては日本最大の“mozilla.orgを応援するコミュニティ”として「もじら組」は誕生しました。
■もじら組っておいしいの?
昔話も楽しいのですが、それは今後にとっておくとしましょう。さて、今のもじら組って何なんでしょう。何をしているのでしょうか。最近の主な活動はFirefoxのバグ報告の場である「Bugzilla」日本語版の運営やメーリングリストの運営、各種オープンソースイベントへのブース出展、年に1度のMozilla.Party.JPというイベントの開催など、細々多数あります。ですが今のもじら組って、わたしにいわせると
看板
です。今、もじら組は猛烈に人手不足です。人を勧誘したい所ではありますが、もじら組に入ると何かいいことがあるのでしょうか。あります。が、その最大のものは、
看板
です。もじら組というコミュニティは、異色のコミュニティです。Firefoxに何か協力したいと思った時、もじら組に入ると、何かいいことがあるのでしょうか。実はあまりありません。自分でやりたいことが自力でできる人には、「もじら組」という枠組みは要りません。逆に、何かやりたいけど一緒にやる仲間として「もじら組」に期待したところで、一緒に手を動かしてくれるのか、汗をかいてくれるのか、さてどうなのでしょう。もじら組は非常に緩い人のつながりです。そして、みんなそれぞれ興味も違えば、仕事も忙しいのです。何かをやりたいという人がもじら組のメンバーに声をかけても、手伝ってもらえる保証はありません。
それでも、もじら組には価値はあります。仲間として信頼され、メンバーとして認められれば、「もじら組スタッフ」を名乗って活動できます。まぁ、もじら組の過去の実績に悪い印象を抱いている人もいますから万能な肩書きではありませんが、その肩書きだけで、ほんのちょっと物事がやりやすくなります。自己紹介が楽になります。時にはちょっとだけ信用してもらえます。
■もじら組の肩書きを名乗るには
もちろん、「もじら組」の名前を使うには最低限の信頼が必要です。一度信頼を得ても、「もじら組」の評判を失墜させると判断されたら出て行ってもらうことにはなりますが、そんなのはよっぽどのことです。
実際にどういう場合に「最低限の信頼」となるのでしょうか。強いて2つに分ければ、
- オンライン/オフラインの懇親
- コミュニティへの貢献
前者は、人となりや考え方がある程度分かって、そこが信頼につながって「もじら組」の中に入っていくパターンです。悪くいえば内輪っぽい入り方になります。MLやBBSでのやりとり、チャット、オフラインでの懇親、etc.……。
後者は、何か翻訳をしたり、パッチを書いたり、USでは何かプロジェクトが動いているけど日本ではまだ対応してないことを、日本で率先してUSのメンバーと英語でやりとりをしたり、というものが該当します。ドキュメントの整備も含まれるでしょうか。とにかくもじらコミュニティに何らかの貢献をしているのが目に見えて分かることです。
■もじら組の存在意義
この3年ほどのことですが、Firefoxが世界的に成功したことでmozilla.orgプロジェクトがやっと成功プロジェクトと評価されるようになりました。それまでは、色々批判も受けていました。もじら組も、発足当時からメンバーの入れ替わりもありながらも、外部からみて「何をやっているかわからない」「内輪で広がりがない」「もじら組があるがために新しい人が出てくるのを阻んでしまっている」などの批判を浴びるようになりました。批判に対して言い分はありますが、批判それ自体がまったく間違っているとも思っていません。実際、解散しようかという話がメンバーの個人の間で話題に上ったことはあります。それでも、今のもじら組に価値はあると思っています。それは何か。
看板
です。今までに培ってきた看板。看板自体が組織の存在目的になるのってどうよって話はあるでしょう。もちろん「看板だけ」になってしまってはいけません。今のもじら組はちゃんと色々な活動をしています。その上でもじら組の存在意義は、と問われると、わたしの回答は
看板
です。もじら組の活動には良い面も悪い面もありました。今のもじら組のスタッフの中でもぎくしゃくしたものもあります。膿もあるんです。でも、チームプレイが働いている部分もまだあります。看板にまだちゃんと価値が残っているのだと信じているから続けているのです。
そんなもじら組に我こそはと思う方は、是非もじら組の活動に参加してみてください。輪の中に飛び込んできてください。わたしたちはそんな元気のある人をいつでも待っています。