東海地区で地場のSE業をやりつつ地元を盛り上げたいと画策

人材流動性と退職金

»

 先日、企業のあり方について、Twitter上で議論がありました。ミラクル・リナックスのよしおかさん曰く、

 Twitter / Hiro Yoshioka: 日本の人材流動性を阻害しているのは、住宅ローンと、退職金制度だと思う。

 Twitter / Hiro Yoshioka: @jj1bdx 住宅ローンを抱えていない人とか退職金をもらわない人の流動性は低くないのだけど、住宅ローンや退職金をもらえる人の流動性は低い、という意味で議論しているつもりでした。

 この発言を見て、我が意を得たりと思いました。まぁ、人材流動性の問題はもちろんこれだけではなく、

 Twitter / Hiro Yoshioka: @masa8723 新卒採用に経済合理性があるのであれば、そーゆーシステムを打破するのは難しい。だけど、仮に経済合理性がないのであれば、それが崩壊するのは時間の問題でしょう。

 と、企業の新卒主義にもこの時の会話の話題は及ぶのですが。

■生涯年収と退職金

 生涯年収という概念が注目を浴びるようになったのは、この10年くらいのことでしょうか。第二次大戦直後は今を生きるのに必死でしたし、高度成長期には頑張れば報われました。バブル崩壊以後、日本経済の成長の限界と社会負担の増加が差し迫った問題として提示されるようになり、徐々に多くの人が直面するようになったのかもしれません。

 非正規雇用問題が注目を浴びる昨今、退職金がもらえる身分なら、それだけでも勝ち組なのかもしれません。今の時代、退職金がもらえる立場にひとたび立ったら、そのレールから降りるのはリスクに直面することになります。

 転職を語る際に、前後の年収の上下を語ることは多いのですが、ちょっと待ってください。生涯年収はそれでプラスになったのか、そこはなかなか語られません。

 転職コンサルタントであっても、生涯年収について語ってくれる人はなかなか珍しいのです。転職するときによくある目先の年収の観点として、「転職直後の賞与は満額でない」ことなどはよくあることで、そこはまだ比較的語られますが、「退職金」について語られることはあまり多くないと思います。

 まぁ、転職で生涯年収がどう変わるか、それはそう簡単に分かることではありません。そもそも同じ会社にいても、その後の自分の給与がどう伸びるかなんて、わかりませんよね。キャリアパスを考えて転職するのであれば、多くの場合生涯年収のアップも期待に含めていいと思います。

 ですが、目先の年収やその後の年収の推移と比べると、「退職金」については転職時にあまり語られません。

 結論から言うと、今の日本企業、特に古い企業は、退職金は勤務期間の長さに対して正比例以上の凸のカーブを描く企業が多いのです。長く勤めれば勤めるほど、退職金はその期間以上に増える。終身雇用を前提にした制度であり、終身雇用を推奨する制度です。しかも、現在のところ退職金への課税は給与課税に比べて優遇されています。転職で目先の収入が増えても、退職金という観点で見ると、生涯年収は損をするかもしれないのです。

 実際のところ、退職金課税制度については制度改正論議が行われており、将来のことはわかりませんし、企業の退職金制度自体も変革期にあります。しかし、そもそも自分の企業の退職金制度や額をちゃんと知っている人がどれほどいるでしょうか。転職の際に転職先の退職金制度についてどれくらい調べているでしょうか。そこまで調べている人は実は珍しいのではないでしょうか。

 企業退職金制度については、確定拠出年金制度の導入の増加に伴って、それを意識させる動きが増えています。とはいえ、確定拠出年金制度のある企業だからといって拠出額が勤務年数に対して凸に増加する企業であれば、そのレールから降りるデメリットはやはりあるのです。

■人材流動性と住宅ローン

 住宅ローンを組む際には、その時働いている企業の信用度や、転職経験などが審査の対象になります。なので、ベンチャーは、儲かっていなければ住宅ローンを組むのに不利です。

 また、ひとたび住宅ローンを組んでしまえば、多くの場合、完済までの間は月々の返済額が決まってしまい、そう簡単に減らすことができません。賃貸と比べて生涯トータルの出費を抑えられる住宅購入であっても、一度住宅ローンに縛られてしまうと、返済している間に(一時的にでも)収入が途絶えるのはつらい。転職を躊躇させるには十分な理由です。

 やはり、退職金制度と住宅ローンは人材流動性への壁になっているのだと思います。

■人材の流動性と転職

 社会は終身雇用重視から変わっていっています。転職自体は珍しくない、という方向に日本社会は変わるとは思います。

 しかし、転職ですべてが解決するのでしょうか?

 人材の流動性というのは、経済の活性化に必要だと私は思いますが、その手段は転職ばかりではないと思うのです。

 同じ企業にいても、企業の垣根を越えて人材情報がちゃんとやりとりされ、都度都度、Win-Winでプロジェクトごとに適材適所で人を集めることができれば、所属企業が同じでもいいはずなのです。

 ITエンジニアリング社会の将来像としてどこへ向かうべきなんでしょうか。問題は簡単ではないですが、案外気にされていない論点というのはまだまだ隠れていると思います。さて、みなさんはどうお考えでしょうか?

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する