東海地区で地場のSE業をやりつつ地元を盛り上げたいと画策

ITエンジニアの現状なんて誰も知らない

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■エンジニアの在り方

 最近始まったものでもないと思うのですが、ここのところ、ひがやすをさんがよくエンジニアの在り方について熱く語っています。賛同の意見がありつつも、やはり批判的な意見が出ます。

 そういう意見を読みながら思うことがあります。大体「自分の周りの現状」で物をいっているなあ、ということです。

 「~の実態」とかいうコラムがあっても、それはそれで嘘はないのでしょうが(誇張の有無はこの際置いておくとして)、それは業界全体の話じゃない、と思うことが多いのです。

 タイトルと矛盾するようですが、ITエンジニアの現状を、当事者はみんな知っています。確かに。それぞれ、自分の周辺だけ、ね。

■アンケートの罠

 IT系メディアが時々アンケート結果などを公開していて、それはそれで多少の参考にはなるのですが、大抵そのアンケートは母集団が偏っています。世のアンケート一般にいえるのですが、設問も不十分。設問が悪ければ結果はミスリードにすらなり得ます。近頃のWeb世論を見ていると、世間の一般的なアンケートや世論調査に対して、一部の人がこうした不十分さを議論するのを見かけるのですが、IT系のアンケートではそういう議論はあまり目立たないようです。

 アンケート結果が出ている例です。これはこれで面白いアンケートではありますが、「回答してくれたITエンジニアは54人」という時点で参考程度です。回答者の職種やポジション別のデータなんてきっとないでしょうし、あってもほとんど意味をなさないでしょう。

 IT業界全体の動向に関するデータとしては経済産業省の特定サービス産業実態調査などがありますが、業界に関する基礎的データが得られるだけです。情報処理推進機構(IPA)も時折各種調査結果報告を出しますが、例えば「2007年度エンタプライズ系ソフトウェア技術者個人の実態調査」を取ってみても「本調査報告書はIPAソフトウェアエンジニアリングセンターとして、初めてエンタプライズ系の個人のソフトウェア技術者に着目した広範な実態調査結果」とのことです。この調査にしても、結果を読むと、業界の現状を分析するのにまだ課題が多いことを示唆しています。

 IT業界の現状や未来を語るのに、実はまともな調査とかデータがないのではないかというのが、最近のわたしの問題意識の1つです。まっとうな機関なり研究所なりが調査をしてくれればいいのですが。NDAとかもありますし、現実には、調査は専門家がやる気と予算を手に入れても簡単ではないのかもしれません。

 大手SIは大概、社内について何らかの調査を外部の会社に委託しています。しかし、その調査結果は一般にはまず公開されません。

■イベントの罠

 「エンジニアの未来サミット」なんてイベントもありました。こういうイベントはもちろん大切で、業界の現状を知らしめる1つの解になっています。もちろん業界の現状を知らせたいということも目的として開かれたイベントでしょうが、単に知ってもらうことが目的ではなく、業界をポジティブに導きたいという目的もあるでしょう。

 時間が限られていますから、訴えることに限りはあります。言ってしまえばパネラーに出てくるというだけで「普通のエンジニア」ではありません。結局こういうイベントに行っても、「セミナー」に興味のない大多数のサラリーマンIT社員の姿はあまり見えてきません。

■IT業界の現状?

 IT業界の現状を語るために、おおざっぱに職種で分けるという手もあります。基盤系、業務系、組み込み系、営業職、etc.……。企業のタイプではコンサル系、上流SIer、下請け、ベンチャー系、etc。そういった分類である程度は分かる部分もあります。あくまでわたしの経験ですが、例えば特定の大手SIer1社と仕事をしていても、案件とメンバーによって、マネジメントの良し悪しも協力会社との関係も、技術的な良し悪しも、全然違います。同じ会社の社員でも優秀な人もいればそれほどでもない人もいます。ある面で優秀でも別の面で欠けていたりします。受託側のメンバーが同じでもお客さまが違えばやはり違います。当たり前のことです。

 日本のIT業界の市場規模推移みたいな統計ですら、その定義の基準が確固としていないせいか、統計によってばらつきがあります。本当は統計を取るにしろ議論をするにしろ、「IT業界」とか「下請け」とか、そういう何気なく使っている単語自体の定義が、実はあいまいなままで会話しているということを認識しておいた方がいいのではないかと思います。

 というわけで、IT業界を本当にちゃんと調べてからじゃなければ、IT業界を語るなんて無意味です。

 嘘です。そんなわけはありません。もちろん、多様なIT業界をまとめて語れる万能な議論などあるわけはありません。でも今日のところは、とりあえずそのことはどっかにおいておきましょう。

■IT業界の現状を知る

 世の中に影響を与える文章を書こうとすると、「ああいう場合もこういう場合もあって、何ともいえません」なんてのは流行らなくて、そもそも読んでもらえないものです。「例外」は切り捨てて、結論は(極端でも)一部の例を持ち出していい切るのがいいんですよね。反論があろうとも、その方が読まれて、影響を与えられます。冒頭に挙げたひがさんはクレバーな人だから、分かってやってるんだろうとは思いますけどね。影響を与えたもの勝ちです。その影響が出鱈目だったらちょっと問題ですけど、アルファブロガーやカリスマエンジニアのいうことは、いつでも当てはまる真実ではないにしろ、大概何か価値のあることをいっています。それをどう生かすかは本人次第というくらいでしょうか。

 「IT業界の実態」を知ろうという方が今できることは、きっとアンテナをたくさん立てて情報を集めることぐらいでしょうね。雑誌を購読するもよし、ネットで巡回するもよし、イベントに出てオフラインで同業他社の知り合いを増やすもよし、中規模以上の企業の社員なら他部署の社員と交流するもよし。仕事上のつきあいだと、発注元も発注先もなかなか本音の会話はできないものです(いや、わたしの場合はそれでも多少は、職場でできないような会話のできる取引先の友人が数人いますが、ほんの一部ですよね)。それにしても、2ちゃんねるのうたい文句じゃないですけど、メディアリテラシーというか、流れる情報の真偽を判断する能力が問われることになるとは思います。

 でも、そんなことに時間を費やしてどれほど意味があるのでしょうか? 所詮個人のできることには限りがあります。それでも、業界の現状というものにアンテナを立てることは、エンジニア自身のキャリアを考える上でも重要だとわたしは思います。その辺の具体的な話はまた後日、ゆっくり書いてみたいと思います。

Comment(2)

コメント

> でも、そんなことに時間を費やしてどれほど意味があるのでしょうか?

とても共感しました。

その人の現状はわたしの現状じゃない。

「で、あなたはどうしたいの?」ということが大切なんだろうなと思いました。

現状はこの瞬間から過去なので、今よりも未来について考えてみたいと思いました。

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