わたしたちはいずれ電気羊の夢をみるか?
■究極の問いの答え
わたしたち人類は、知性という能力を手に入れて以降、万物のあらゆる問いに答えを出そうと、日々たゆまぬ努力を続けている。
そんな人類にとって究極の問いに1つの明確な答えがあり、それはGoogleの電卓機能を用いて容易に算出できるということを皆さんはご存知だろうか。
Googleの検索窓に「人生、宇宙、すべての答え」と入力してみてほしい。
Googleの電卓機能は、この問いに極めて明確な答えを算出してくれる。
そう、「人生、宇宙、すべての答え = 42」である。
『銀河ヒッチハイクガイド』というSF小説において、スーパーコンピュータのディープ・ソートが750万年かけて計算した結果が「42」である。Googleの電卓機能はこの小説を元ネタとしたひとつのジョークとして、「人生、宇宙、すべての答え = 42」という計算結果を実装している。
Googleの計算結果はあくまでジョークだが、いずれはコンピュータが人類にとって究極の解答を示してくれる。すなわち、コンピュータが人間の知性を超える時代、そんな未来が本当に来るのだろうか?
■孫正義氏のビジョン
先日、孫正義社長により発表された「ソフトバンク新30年ビジョン(※1)」。
この中で、孫社長は30年後どころか300年後の未来を想像する。
「人間の体を通信の媒体とみなすと、脳からコンピュータのチップに体を通じて通信するという時代が300年以内に必ず来る」
「知恵をもったロボット、人工知能、脳型コンピュータを搭載したロボットが、300年以内に一般化する」
まるで、『ニューロマンサー』や『攻殻機動隊』、『マトリックス』のような世界だ。
そんな未来が本当に来るのだろうか?
■人工知能が人類を超える日
こういった未来は、SFの世界や妄想の中だけの、荒唐無稽なものだというわけでは決してない。さまざまな学者たちが、現実の起こりうる未来として、こういった世界について研究している。
未来研究において、「技術的特異点(Technological Singularity)」と呼ばれる世界は、そう遠くない将来に実現する世界であるだろうとされている。それが300年後なのか1000年後なのかはわからないが。
ちなみに、インテルのCTO ジャスティン・ラトナーも、この技術的特異点を支持している。彼の予想は、今から約40年後。
孫正義も、「新30年ビジョン」において、技術的特異点にこそ言及していないものの、今後30年でテクノロジーの進化によって人々のライフスタイルが大きく変わるであろうと予測している。
これらITの先端を走る人々が、30年、40年とそれぞれかなり近い数字を例に出し、ある種の「特異点」について言及している、というのは非常に興味深い。
■進化の鍵はクラウドにあり?
人間の能力を超える人工知能、などと言われるとまだまだ現実的ではないような気がするが、ふと冷静に考えると、「脳からコンピュータのチップに体を通じて通信する」というような生活は、割と近いところまですでに到達しているように思われる。
ほんの少し前まで、コンピュータとは机に座って利用する機械だった。ところが、iPhoneやiPad、その他スマートフォンなどに代表されるように、わたしたちは今はコンピュータを常に持ち運んで生活をしている。
知らない町を歩く時、わたしたちはGPSと連動したGoogle Mapsを見ながら目的地を目指す。
同僚との飲み屋の会話で、真偽があやふやな話題になった時、わたしたちは携帯電話を取り出し、話題となっているキーワードをインターネットで検索する。
いつでも、どこでも、インターネットに接続したり、コンピュータにアクセスする術を持ったわたしたちは、検索可能な情報をわざわざ頭で記憶するということを必要としなくなった。
このコラムを読んでいる皆さんの中で、最も仲の良い友人の電話番号を暗記している人が、どれだけいるだろうか?
前回のコラムでも引用したニコラス・G・カーの言葉を借りれば、クラウドコンピューティングの真骨頂は、「水道の蛇口をヒネるように、ITサービスを利用することができる」ことである。これは、わたしたちのITサービスへの接し方、果ては自身のライフスタイルまでを大きく変えてしまう可能性を秘めている。
こういった状況を考えると、孫社長の30年後のビジョンは、割と高い確率で実現可能な世界であるように思う。
わたしたちIT技術者は、そんな一昔前のSFのような世界を実現することのできる立ち位置にいるといえるだろう。
テクノロジーの進化はわたしたちに夢のような未来と希望を与えてくれようとしている。
閉塞感に苛まれて久しいわたしたちの生活ではあるけれど、こういった事に目を向けて、ほんの少し、前を向いて歩き始めたいなと、IT技術者の端くれとして最近思うようにしている。
コメント
第3バイオリン
粕谷さん
第3バイオリンです。
>こういった状況を考えると、孫社長の30年後のビジョンは、割と高い確率で実現可能な世界であるように思う。
>わたしたちIT技術者は、そんな一昔前のSFのような世界を実現することのできる立ち位置にいるといえるだろう。
このお話を聞いて、以前同じ部署の先輩と飲み会で話したことを思い出しました。
この先輩はいわゆるアラフォー世代ですが、その先輩がこう言いました。
「俺が新人だった頃は夢物語でしかなかったことが、今は現実になっている」
例えば、インターネットで画像や動画をやりとりすることなど、今ではごく当たり前のことです。
先輩は、当時夢見たことが、思っていたより早く(自分が現役のうちに)
実現したことに驚いた、とおっしゃっていました。
>テクノロジーの進化はわたしたちに夢のような未来と希望を与えてくれようとしている。
先輩の話を聞いて、私はこう思いました。
アラフォー世代の先輩の夢が現実になり、その現実の中で、今度は私が夢の続きを見る番だ、と。
夢を見るだけでなく、夢をかなえるお手伝いができるエンジニアという職業は最高です。
粕谷大輔
第3バイオリンさん。
コメントありがとうございます。
私も社会人になってまだ10年ほどですが、それでも自分が新人の頃はまるでSFの世界だったような現実が今はありますよね。セカイカメラなどのARと呼ばれる技術なんて10年前の誰が想像できたでしょうか。
自分が現役の間にどこまでテクノロジーが進歩するか、想像すると本当にワクワクします。
われわれも勉強を絶やさず、未来を創る仕事をし続けたいですね。
みながわけんじ
20年くらい前、特許発掘会で、「10年後のパソコンはどうなっているか?」という話題で、「10年後は、ダイナブックのブックではない。シート型パソコンだ。パソコンは寝っころんでも使える時代になる」なんて想像してたことを思い出します。
粕谷大輔
みながわけんじ さん
コメントありがとうございます。
わたしの今の楽しみは、まさにお布団に寝転んで、iPadでウェブブラウジングすることです(笑)
F
なんでそうなる?
そうじゃなくてIT技術者とか8割ぐらいが失業するぞって言う恐怖のお話だと思うんだけど
産業革命時に肉体労働者の多くが職を失ったように
それで新ラッダイト運動が起きてるんでしょう