請負での開発しか経験していない筆者が、クラウドに迫る!!

ソーシャルメディアで実名を公開するということ

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 オンラインで実名を公開することに、何かメリットはあるだろうか?

■ある晴れた日のこと

 ある朝、わたしはいつもと同じ時刻に出勤をした。

 タイムカードを押し、机の鍵のかかった引き出しからノートPCを取り出し、いくつかのパスワードを入力して起動する。もうこのPCもずいぶんと長く使われているので、起動してからまともに使えるようになるまでに毎日10分はかかる。それまでの間、別のフロアにあるコンビニにコーヒーを買いに行く。

 自席に戻ると、PCの起動プロセスがすべて終了しているので、メールのチェックをしたり、Twitterに朝の情報番組の占い結果について悪態をつぶやいたりしているうちに、始業のベルが鳴る。

 さて、仕事をするか、とExcelを立ち上げようとしたところ、上司がわたしの側に立ち、「ちょっと……」と言いながら会議室に消えていく。何かあったのだろうか。わたしも上司の後について会議室に入った。

 上司はなにやら神妙な顔をしている。こちらから声をかけるべきだろうか、と逡巡していると、彼が口を開いた。

 「きみはTwitterをやっているね」

 なにか、まずいことでもつぶやいたか。頭の中で過去のツイートが駆け巡る。いや、情報漏えいや、業務で知り得た機密事項などをうっかり書き込んだなど、そんなバカなことはしていないはずだ。

 「はい。情報収集であるとか、社外の人とのコミュニケーションの手段として、やっています」基本的にわたしはオンラインでは実名を公開しているため、嘘をついてもすぐにバレてしまう。正直に答えた。

 「ふむ……。きみは先日、『会社に行きたくない』『仕事をしたくない』などと書き込んでいたが、それは事実なのかね」

 「はい?」

 「それどころか、『自分は変態である』とか、そういったことを書き込んでいるだろう。これがすこしばかり問題になっていてね、査定に影響があるかもしれない」

 「え? 変態? ああ。『診断メーカー』をご存知ないんですね。あれはネタですよ……?」

■それは誰にでも起こりうること

 先のエピソードはもちろんフィクションである。わたしが実名でTwitterをやっていて、冗談交じりでふざけたつぶやきを書き込んだりすることは事実であるが、幸いわたしが勤める会社はそのようなことに口を挟んだりしない。「情報漏えいなどには注意するように」との教育は定期的に行われるが、オンラインでの発言や活動は重大な問題が発生したりしない限り、自由にやらせていただいている。

 しかし、上記のエピソードは、一歩間違えば誰にでも起こりうる問題であり、それを恐れてオンラインでは匿名で活動されている人も多いだろう。

 SNSに端を発するいわゆる「炎上騒ぎ」は、ほぼ毎日といってよいペースで起きている。

 某大学の、大手企業に内定を決めた学生がオンラインの日記で飲酒運転を告白した。高級レストランでアルバイトしている人物が、お忍びで訪れた芸能人の情報を掲示板に書き込んだ、など。

 飲酒運転などしないし、喫煙してもすでに成人であるし、節度やモラルをわきまえているから業務上問題となる情報などオンラインで書きこまない。そう思っている人でも、先のエピソードのように、日曜日の夕方などにサザエさんシンドロームに打ちひしがれながら、うっかり「明日会社行くの嫌だなー」などとTwitterやFacebookに書きこむくらいは、誰でもやることだろう。感覚的には飲みながら休日の終わりを友人たちと嘆くようもの、といったところだろうか。

 休日の友人たちとの飲み会の模様など、職場の上司は目にするはずもないが、オンラインでの発言はそうはいかない。

 「会社に行きたくない」という書き込みをもし上司が読んだら。そしてそれを、冗談や愚痴の類であると解せずに真に受けてしまわれたら。

 あなたも月曜日に上司に肩を叩かれながら会議室に連れて行かれるかもしれない……。

■実名のリスクと匿名の不都合

 こういった状況を完全に排除しようと思えば、オンラインで発言するアカウントを匿名にするしかない。実際、オンラインでの活動などは匿名でもまったく問題はないように思える。

 匿名であっても、その人がずっと同じアカウントを使い続けている限り、その人を特定することは可能である。わたしも勉強会などで知り合った人の中には、ハンドルネームだけで本名を知らない人もいる。だからといってその人と、人間関係において不必要な距離感が生じるかといえばそんなことはない。中には下手に実名を知っている相手との人間関係よりも深い、友人と呼べる人だっている。

 この章の見出しに「匿名の不都合」と銘打ってみたものの、こうして考察すると、「不都合などない」言い切ってしまっても良いと思う。

 オンラインでの情報発信を就職(転職)活動に活用する場合でも同様だ。別に匿名であっても、その人のアカウントやメールアドレスが、確実にある特定の人物を指し示すのであれば企業側からのコンタクトは可能である。

 と、いうことを考えると、実名はリスクばかりでメリットはなにもないというように思える。事実、わたしは今そのように考えている。

 最初にエンジニアライフにコラムニストして個人情報を登録するとき。最初にTwitterアカウントを取得するとき。特に深く考えずに実名で登録してしまったのを、少しだけ後悔することがたまにある。

 当初は、実名を公開することで、自分のことをリアルに知っている人にもリーチすることができるぞ、と考えていた。

 しかし、オンラインという広大な世界で情報発信を行い、そこで遭遇する膨大な人々と比べれば、わたし程度の人間のことをリアルに知っている人の数などたかが知れている。オンラインである程度認知されるようになれば、リアルな知人にリーチなどせずとも多くの人に情報を届けることだってできる。

 「実名」であるからには、それなりに節度をもって投稿すればよい、というご意見もあると思う。しかし、オンラインとはいえ、仲のよい友人と多少はバカなやり取りをして楽しんだりもしたいし、やはり、今のわたしは「オンラインで実名であること」にまったくメリットを感じられないのである。

Comment(3)

コメント

傀儡廻し

ソーシャルメディアを何に利用するかって話じゃないの?メリットがないなんて結論付けているけど想像力不足だね。

お幸

まあ、自己中心的な結論ではありますね。

コミュニケーションをとる相手方の
・感情
・意識
・思考
に「実名」がどんな影響を与えるか、書かれていると良かったかもしれません。

金属プレス技術者

炭素繊維が普及しないのは工具鋼製の金型で加工できないためだろう。コストもリーズナブルで大きなものが普及していかないと、マニアックな世界のままで終わってしまうだろう。超硬で金型を作るって?素材費が桁違いに高く、曲面で構成される大きな切削除去体積をどう処理する?ハイテンがなぜ普及したのかを調べてみることだ。つまりはいつの時代も工具鋼が素材普及のキャスティングボートを握っているということだ。

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