株式会社D・F・Sに在籍するキャリアコンサルタント。CDA(Career Development Advisor)の資格を取得し、希望を叶えるキャリア構築の支援をモットーとしている。

「何をやりたいのか」ではなく「何ができるのか」を考える

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 私が現在在籍しているアカリクは、大学院生の就職支援を手がけています。先日、弊社が主催した、情報系学生向け就職イベント「IT逆求人イベント」に参画してきました。

 このイベントは、「逆求人」型である点が特徴です。何が「逆」なのかというと、通常の就職イベントのように、企業がブースを出展して学生が見て回るのではなく、学生が事前にプロフィールシートを提出し、企業側が会いたい学生を指名するという点です。学生は準備した資料をもとにプレゼンテーションを行い、企業の人事担当者やITエンジニアと話をするのです(参考)。

 私は今まで、「学生の就職活動」は「何がやりたいのか?」を考えて、業界や職種を選択することだと考えていました。可能性は無限であり、自らの夢や希望を考えて、将来の自分の姿を思い描きながら、就職先を探すわけですから、「何をやりたいのか」が就職活動の基本だと思い込んでいました。

 でも、よくよく自分自身のことを振り返ってみると、可能性は無限であったわけではありませんでした。何もスキルのない文系学生であった私ができることといえば「営業」職ぐらいだと思っていたわけです。そういった意味では、本当は「何ができるのか」が就職先を決めていたのに、意識の奥底にしまいこんで考えないようにしていたのかもしれません。

 話をイベントに戻しましょう。学生が事前に用意している資料には、もちろん「今後何をやっていきたいのか」という点についての記載があります。ですので、企業側はその希望を無視して学生を指名することは少ないのですが、スキルや研究実績を見て、「どうしても会いたい」と思う学生に対しては積極的にアプローチをしているようです。

 学生側にとっては希望していないような企業とも接点を持つことになるのですが、自分では考えたこともない会社から評価を受けることで視野が広がる効果もあり、「新しい発見ができた」と毎年好評をいただいています。

 学生が、就職活動において「何ができるのか」を積極的に考える。私にとって、それはとても新鮮な体験となりました。年齢を重ねてきますと、「今までに培ったスキル、経験を最大限に生かせる仕事(会社)で働きたい」と思う方が増えてきますが、転職を考える若者の多くは、今の状況に満足できず、「自分のやりたいこと」が実現できる会社を探しています。

 しかし、最近「何ができるのか」という発想は、若い人たちも持ってもいいのではないかと思えてきました。私にとって、この発想はどちらかというと「受け身」の印象があり、仕事に対して積極的ではないと思っていました。しかし、徹底的に「自分は何ができるのか」を考え、「自分がどんな仕事(企業)に必要とされるのか」ということを追求してみるのも、積極的に仕事にかかわっていく1つの発想なのではないか、と強く感じることができました。なぜなら、このイベントで「自らのスキルを仕事で生かしていきたい」という、強い意思を持った学生たちと会えたからです。

 自分が考える“強み”と他人から見た“強み”は大きく乖離(かいり)していることが多いものです。われわれキャリアコンサルタントを通じて、自分が希望する仕事(会社)を探すだけではなく、自分の“できること”が評価されるのはどのような仕事(会社)なのかという視点で相談していただくのもいいのかもしれません。

 今まで、私はキャリアコンサルタントという仕事は、転職を希望する方が思い描いている理想を、どれだけ実現できるのかが最も大切なことだと思っていました。今後は、転職を希望する方を最も必要としているのはどのような仕事(会社)かという視点でも、積極的に提案してみたいと感じました。

 もっとも「押し付け」になってはいけないので、私自身がコンサルタントとしてのスキルアップを迫られることにはなるのですが……頑張ります!!

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