いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

私がLibreOfficeのコミュニティーで登壇し続ける理由

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とおまきの理由はエンジニアライフ

エンジニアライフでコラムを書く前の私は、単なるペーペーの派遣会社で働くエンジニアだった。今振り返ると、駆け出し数年の凡なスキルなエンジニアだった。ただ、技術は全て独学で身につけたのと、他の人とちょっと視点が違っていたというだけだ。なんでエンジニアライフでコラムなんて書き出したのか、今となってはその理由すら覚えていない。

ただ一つ覚えていることがある。書き始めのころに書いたこのコラムがちょびっとウケたようで調子に乗ったということだ。調子に乗った勢いで、気付けば七年。振り向くと、OCS(オープンソースカンファレンス)やらのイベントやら勉強会で登壇しちゃってる。何がきかけで人生かわるか、本当に分からないものだと思う。

もう一つ自分の転機になったのは、OSC京都で開かれたエンジニアライフのセミナーだ。ここでLT(ライトニング・トーク)というものの存在を知った。当時、LTをやっていた人がフランクな方で、「こういうのは気軽にやればいい」のような事を言っていた。それを真に受けて必要以上に気軽になった。もしかしたら、コラムで好き放題言うようになってしまったのはこの方の言葉がきっかけかもしれない。

とにかく、OSC(オープンソースカンファレンス)を知ったのはこれがきっかけだ。そこでどう、LibreOfficeのコミュニティーに結びついたかは全く覚えていない。登壇し始めたきっかけはノリと勢い。あと、元々目立ちたがりだったからだ。数々のコラムを執筆しイベントで登壇といえば凄そうだが、続けている理由は自己満足。あと、エンジニアしてる自分がカッコイイ。そのくらいだ。

私には致命的な欠陥があった

私は正確な作業が苦手だった。在庫を数えれば数が合わない、計算をしても数字が合わない。字が汚く、書くのに時間がかかる。なので、机に座ってやる仕事は不向きだと思っていた。技術を勉強し始めたきっかけは、こういう欠点をどうにかしたいと思ったからだ。キーボードで打てば、字が汚かろうと関係ない。数字や計算に関しても同様だ。機械で計算すれば間違えにくい。

こういうきっかけなので、自分の根底を支えている技術はExcelとWordというすさまじく地味なものだ。一般のエンジニアからすれば、技術とも呼ばないようなものだろう。他にやっていることと言えば、とにかく目の前にソフトウェアがあれば細かく弄り倒す。それしかやっていない。この前は、G Suite (元Google Apps) を二時間くらい弄り倒していた。私のやっていることと言えば、その程度のことだ。

これは後から分かったことだが、自分の欠点は作業の精度が低いのではなく、段取りが悪かったことだった。よく怒られた理由は、立場的に下だったからだ。技術を勉強することで、間違えないようにするより、ミスをカバーする仕組みの方が有効だということに気付いた。その仕組みを支えているのが技術なんだなという確信を得るに至った。私がもし、最初から技術をやっていた人だったら、そういう確信に至ることは無かっただろう。

元々自分には大きな欠点があったが、克服しようと向き合うことで、意図せずブルーオーシャンで優位性を確立した。そもそも、Excel、Wordと言って関心を持つエンジニアなんてごく少数だろう。だからブルーオーシャンなのだ。基本的なツールを使いこなすだけでも、驚くほどに情報が整理できる。これはやった人にしか分からない。理論的に説明しようと、理論の根底になる情報が無いので通じない。そういうものだ。

Excelだけでも炎上は止められる

炎上案件に行って共通しているのが、データのまとめ方が「目視」前提でまとめてあることだ。話を聞いてみると、どうもExcelの関数を使いこなせないようだ。vlookupやら、存在は知っているし、どういうことができるかは知っている。だが、使ったことがほとんど無い。はっきり言うが、それは使えるとは言わない。知ってるだけだ。

ドキュメントを書く前に、設定値をリストアップして表にまとめている人がどれくらいいるだろうか。さらに、その表をExcelの関数でチェックしている人がどれだけいるだろう。大概は、いきなり「ドキュメントを書け」と指示をして、情報も不明確なままドキュメントを書かせる。そしてレビューで重箱の角をつつきまくる。

あまりのレベルの低さに呆れかえるが、逆の観点から見れば、スクールで習うExcelレベルの技術でも劇的な改善が見込める。リスト形式にデータをまとめてさえいれば、関数でチェックを行うことはそれほど難しいことでもない。炎上するプロジェクトでは、そういう簡単なことすらできていない。

炎上対策でマネージメント云々、技術云々とよく話を聞くが、Excelで書いたデータのチェックという基本的なことすら「目視」という手段しか持ち合わせていない。できる訳がなかろう。有効な解決方法というのは、センセーショナルな手段とは限らない。ショボくて地味な方法というのもある。

自分が価値を感じたものを話し続ける

LibreOfficeと言っても、一般的にはMSオフィスの無料版程度の認識だ。特に斬新な機能が追加されることも無い。それでも地道な活動を続けている。ただ、斬新な機能が追加されないが、中の人は非常に「地味」な部分へのアプローチが非常に綿密だ。それが素晴らしいと思うので、LibreOfficeのコミュニティーから登壇を続けている。

実際、登壇して話しているのはドキュメントのまとめ方やらフォーマットやら、そういう地味な内容だ。インパクトも薄く、誰もが見向きもしないような課題について、私は淡々と追求しつづけている。いつも登壇させてくれているLibreOfficeのコミュニティーの方には感謝している。

流行の技術とか肩書きの凄い人とか、ネームバリュー的ものは全く無い。そこは、少しでも聞いて楽しめるように話の構成を考えて知恵を絞っている。聞いていても技術的な面白みは感じないかもしれないが、多くの人がもっと考えるべきテーマだと思っている。だから情報を伝えるためにLibreOfficeのコミュニティーで登壇し続けている。そして今回東京で開かれるOSCでも10/27 (土) 16:15 から登壇を予定している。

ついでに、何の流れか知らないがもう一枠、同日 15:15 から個人名で登壇する。こちらは前回京都で登壇した内容の続きの話だ。現在、炎上火消しプロジェクトでPowershellの活用を模索している。試行錯誤したことを共有したいと思い、登壇することにした。

自分が価値を感じたものを発信して共有していく。単に自分だけで技術を深めるのもいいが、人に話して通じるかどうか確かめてみるのも大切だ。身につけた技術が一人称で終わるか、それとも多くの人と話せるテーマになるか、エンジニアをやり続けている内は挑み続けていきたい。

Comment(2)

コメント

まんじゅ(´ん`)

お初にお目にかかります。


以下、ただの感想になってしまいますが述べさせていただきます。


段取り、ミスをカバーする技術。
自分も足りない点だなと思ったと同時に、
「Anubisさんでもそう(だった)なのか」
と、少し衝撃を覚えました。


と同時に、そういった段取りやミスをカバーする、ツールの上手な使い方を自分も身に着けないとなと思いました。


ぜひAnubisさんのドキュメントのまとめ方を聞いてみたいと思った次第です。
(しかし、「試される大地で薄給派遣プログラマ」のため、東京に行けない……)


以上、拙い感想ですが、コメントさせていただきます。

Anubis

> まんじゅ(´ん`)さん

結局、ミスが多いとか何かの技術に納得がいかないとか、そういうマイナス面って実は大事だと思っています。自分の欠点を克服したいという思いは、時にものすごい力になります。


そうですね。最近、コラムを書くよりも自分の積み重ねたものを形にする活動に力を入れています。イベントに手当たり次第に登壇しています。ある程度内容が溜まったら、技術書店で書籍だしたり、Qiitaにまとめるなど考えています。


自分と同じ欠点を持つ人の役に立てばと思います。

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