初心者にも分かりやすく簡単にすると裏切られる
うちのオヤジとスマホ
家の親二人は、里帰りする度に「スマホにそろそろ変えようか」とぼやき続けていた。まぁ、いろいろとツッコミどころは多かった。携帯を扱っているお店なんて、そこら中どこでもある。悩んでいるなら実物を触ってみたらと提案したが、一向に触ろうとはせずに「難しい、難しい」と連呼していた。本を買ってきて研究はしているようだが、実物も触らずにイメージがつくはずも無い。ああいうのは慣れだ。慣れれば小学生でも使いこなしている。
スマホ、スマホとつぶやき続けて数年。もし、これと同じ期間、スマホに触り続けていたらどうだろう。それなりに使えるようにはなっていたと思う。スマホ自体はそれなりに簡単に操作できるように設計されている。事実、特に専門知識がある訳でもない中学生や高校生でも使いこなしている。AndroidにしろiPhoneにしろ、元から初心者にも分かりやすく簡単に操作できるように作られているということだ。
一応、私のオヤジの名誉のためにフォローしておくと、彼の頭脳は明晰だ。最近、囲碁を嗜んでいるようだが、戦績は良いようだ。現役の頃はそれなりの地位も得ていた。同年代で見るなら知性は高い。とは言っても、同年代でスマホをそれなりに使っている人は相応にいる。使い方が習得できるかどうかは、単純に知性に依存するものでもないようだ。
初心者といってもいろいろある。本当に関わり始めて日が浅い日とから、私のオヤジのように、何年も向き合ってるのに初心者だったりと。どうしてそうなのかと分析するならいろいろな見方がある。今回のコラムではそれについて言及する気はない。話の前提として、初心者といってもいろんなタイプがいるという前提としてこの話をした。
オヤジのスマホを叩き割りたくなった
ちなみに私のオカンは現在iPhoneを使っている。両親二人にスマホ、スマホと騒がれると流石にたまらないので、近くのdocomoショップに連れて行って契約させた。操作方法を教えるのはちょっと大変だったが、今では自分でdocomoショップに行って対応できるようになった。やりたい事に関しても、一通りは覚えて、それなりに使えているようだ。
一方、オヤジはというと、長年も使っていたガラケーが反応しなくなったとのことで、老人用「簡単スマホ」を購入した。これが相当なクセモノだ。普通に指でタップしてもなかなか反応しない。何か壊れてるのかと弄り倒してみたが、どうやらタッチしてから二秒くらいで反応するように設定されているようだ。しかも画面は完全独自仕様になっていた。
一見、非常に老人に優しい仕様のようだが、スマホの機能の多様性はそのままだ。簡単スマホといいつつ、全然簡単ではなかったりする。結局、老人向けスマホを使っているオヤジより、iPhoneを普通に使っているオカンの方が、不自由なくスマホを使っている。スマホはスマホとして使わせえた方が、きちんと操作を覚えるようだ。一方、皮だけ被せて簡単に見せたスマホを使っていると、「こんなはずじゃない、もっと簡単なはずだ」と、いつまで経っても操作を覚えてくれない。
苦手意識を持った人ほど、完成度の高いプロダクトを使わせる方が為になるんじゃないかと思う。実際、使わせればキチンと使える。うちのオヤジがそうだが、簡単スマホだろうと何だろうと迷う人は迷う。複雑なものを無理に簡単に見せるより、プロダクトの完成度を高めたらどうだろう。製品の完成度が一番の配慮になる。
初心者への配慮は不要
下手な配慮は逆に初心者の成長を妨げる。日本製のPCには「かんたん○○○」みたいなソフトがてんこ盛りだ。実際に使ってみると、でかい文字と音声が鳴で説明してくれるだけだ。普通に説明書よめば済むようなものばかりだ。むしろ、それらのソフトが何なのか、一つ一つ判別するのにスキルが要る。これならUbuntuをインストールして渡す方がまだ迷わない。
プロダクトは製品の質を第一に考えれば充分だと考える。初心者の配慮という心意気はいいが、なにせ手段が下手クソ過ぎる。使いこなせるかどうかは使う人に任せればいい。それでもというのなら、サポートを充実した方がいい。使いこなせない人は分る人に聞こうとするからだ。
結局、配慮しようとしまいと、できない人はできない。うちの親なんかもそうだが、さらさら使いこなす気は無い。操作自体どんなに簡単にしても「今までのは」とばかり繰り返す。逆に子供にはそういう執着が無いので、簡単に操作を覚えて使いこなしてしまう。
初心者への配慮とできない人への配慮は違う。初心者なら手数をこなすうちに勝手に操作を覚えてレベルを上げていくので配慮は不要だ。必要なのは製品の完成度だ。できない人に必要なのは対人サポートだ。使いこなす以前の問題を多く抱えていたりするので、プロダクトでは対応できない。
「初心者にも分りやすく簡単に」の結末
Excel方眼紙は「初心者にも分りやすく簡単に」の最たるものだと思う。アレが普及した要因の一つが、できない人への生ぬるい配慮ではないかと思う。配慮されている側がいつの間にか、これこそが正しいと勘違いされる。おかげで、できない人ができていない事を認識できなくなっている。
「初心者に分りやすく簡単に」をコンセプトにしても、出てくるのは不満だけだ。使いこなそうとする意欲のある人は勝手に努力する。使いこなせないことを人のせいにする人はプロダクトにケチをつけ続ける。基本的に文句しか言わないので、こういう人のために努力しても文句しか返ってこない。
最近ではGoogleのサービスで、みんなが大好きなスプレッドシートがExcelより簡単に書ける。初心者に分りやすいどころか、熟練者にも分りやすく簡単だ。ExcelにケチをつけるならGoogleのサービス使えばいい。実際に仕事もはかどる。Excelができない人ほど、無理にExcelを使って「できない」と連呼し続ける。
できない人に共通して言えるのは否定しかしないことだ。何ができたのかという肯定的な部分を見ることができない。こういう人は「そうだね、できないね。」と相手の言葉を肯定して対応に終止符を打つことにしている。否定しかしない人を相手にしても得られるものは無い。プロダクトにしても、キチンと使ってくれている人の意見を取り入れた方が幸せになれるのではないだろうか。
コメント
仲澤@失業者
Excel2010とWord2010を初めて開いたときのことを思い出しました。
リボンコントロールがまったく意味不明で、愕然としましたねぇ。
M$「今まで積み上げてきた技能は全て御和算にしましたので。みなさん一緒にスタートしましょう。」って感じでしょうか。
特に、めったに使わんフォント設定が目立つところにあり、頻繁に使用する「スタイル設定」がどこにあるのか不明というデザインは「過去のWordに慣れたやつには使わせねえぜ」というかんじでしたかね。びっくりしました。
しかたがないので、新しいリボンタブを作って、良く使う機能を一個ずつ登録しました(一日がかり)。
色々と勉強になりました >> M$ さん
kaie
初心者ではなく###ある特定層にわかりやすく####
ってコンセプトで作ってあるのは大抵わけわからないですよね。
簡単そうに見せればいいわけじゃない。
シニアスマホは、指の震えや、ちょっとした接触による誤作動防止の対策やアプリもキャリア専用のもののみに絞ったりと、チューンドしてあるので、あれは完全にカスタム機ですよ。
あれよりiphoneの方が直感的だし、書籍もユーザーも多いのでハウトゥも楽々。