いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

ドキュメントを見て分かる現場のこけ方 Part2 Excel大好きな現場

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--ふれこみ--

 とにかく多機能で直感的に扱える。関数を入れれば計算してくれるし、印刷範囲は自由に設定できる。文字を好きなところに配置できる。これこそ、正に万能ソフト。ITの業務をするくらいの人であれば誰でも扱えるので、学習コストはかからない。・・・云々。ここまでくると一つの宗教だ。

--実際--

 実はふれこみで書いた内容が全て裏目に出ている。直感で使うので、奇想天外な構成のドキュメントが書き上がる。関数を使うのはいいが、印刷範囲外に隠れ数字入れるのよしてくれるかな。訳わかんねー。範囲指定で適切に印刷されている長編ドキュメントを見たことが無い。文字を好きなところに入れやがるので、体裁がカオスになる。

もう、いい加減にしろよ。

使い方としては普及しているが弊害も多い。ここで問題になるのは、Excelしか使わないことだ。納品ドキュメントが100%Excelのファイルなら要注意だ。

 まず、Excelの印刷機能はそんなに高くない。精密な印刷がしたいなら、WordかPublisherを使おう。それでも納得いかない人は、Adobe製品でも使おう。セル単位で印刷範囲を決めるので、セルの幅から合わせていかないと印刷範囲は合わない。しかも、環境によって数ミリの誤差が出るので、精密に合わせたとしても正確に印刷される保証は無い。

 直感で使えるということは、レイアウトなど構想を練らないでも書けるということだ。下書きならそれでいいが、納品するドキュメントをそういう感覚で書くのはいただけない。実際、Excelで受け取るドキュメントは、頑張って書いた下書きレベルのドキュメントがほとんどだ。

 Excel方眼紙の理論でよく出されるが、自由なレイアウトで組めるのが良いという理論だが、レイアウトというのは自由にできるから良いのではない。規則性に当てはめるから綺麗なのだ。自由すぎるレイアウトは、もはや落書きとしか言えない。

 自由に組めると思い込んでいるレイアウトも、本当に自由なのは書き出しの位置だけだ。フォントの大きさを変えればセルの大きさが変わったり文字が切れる。長文を打った時もよく端が切れる、ページ変更が入ることは多い。

 そして、Excelの最大の欠点は、決定的にドキュメントが閲覧しにくいことだ。たとえばExcelの長編ドキュメントでは表示しきれないほどのシートが詰め込まれている。一つのシートに何ページあるのか、そのシートが何枚あるのか。ぱっと見、かなり分かりにくい。

 スクロールする時もセル単位にスクロールするので、たまに一つのセルにテキストを詰め込んでいると、セルの幅が広くなりスクロールの幅が大きくなる。これがけっこう曲者だ。見間違いの原因になりやすい。

 大量のシートを切り替えるだけでも大変で、目的のページになかなかたどり着けない。ドキュメント閲覧時の操作性の悪さはOfficeソフトの中でもトップクラスだ。目次を作っても手打ちなので内容の保証ができない。中身を把握するのに苦労するドキュメントというのはいかがなものだろう?

--現場のこけ方--

 これだけ使いにくいのに誰一人文句を言わない。これが不思議でならない。Excelに依存する現場は、上の言ったことに「右へなれ」で実質よりも「⚪︎⚪︎さんが言ったから」が重視される傾向が強い。つまり、あまり考えない人が多い。

 言われたこと、やるべきことについて深く考えないので、新しい発想が出ない。トラブルシューティングが下手クソで、いつも同じ失敗を繰り返す。こういった傾向が強い。何年も同じフォーマットを使っているのに、なぜか、印刷がずれる、ドキュメントの精度が上がらない。こんなことを繰り返している。

 そして、Excelでドキュメントを作る割に、Excelの機能に疎い人が多いのが特長だ。長年使っているソフトの熟練度が上がらないというのは、エンジニアとしては致命的だ。そんな人が指示を出しているのでは、炎上しない方が不思議だ。

 使い始めの簡単さばかりに目がいって、トータルで考えた労力が算出できない。この傾向はプロジェクトでも反映される。ドキュメントの細部を直すのに工数が食われるので、必ずドキュメントの修正で大量の工数が食われて炎上する。

 ドキュメントの閲覧で操作性が悪いので、資料の読み落としも多い。Excelはシートの一覧を簡単に取得できないので、ドキュメントはあるが全貌がつかめていないケースは多い。結局、ドキュメントの構成が簡単に確認できないので、必要な情報に辿り着くのに膨大な時間がかかっている。このロスタイムも馬鹿にならない。

 結局、Excelだけで仕事をするというのは、ばらけたメモの埋もれて仕事をするのと同じことだ。最終的にどうなるかは安易に想像がつくと思う。

--対策--

 ドキュメントを書く時に、必ずテキストエディタで下書きをしよう。テキストエディタで内容を組み立てて、Excelにコピペしていこう。レイアウトと内容を別々に考えて作業することがミソだ。使用する画像はファイルとして保存しておこう。図など、画像として保存できない時は、別ファイルのExcelに保存しておこう。

 これをやっておくと、ドキュメントの全体が分かりやすくなる。修正時にExcelの操作性の悪さに影響されにくいので、手戻りや混乱を避けることができる。フォーマットが崩壊したとしても、一から作り直すという最終手段も使えるし、目次を作るときの精度の向上も見込める。

 あと、レビューする時はPDFに変換してレビューしよう。見違えるほど閲覧性が向上する。しかも、検索も楽々できる。PDFにはもっと良い活用方法があるのだが、ここは別のコラムで書くことにする。

 大量のファイルを作るので、一見効率が悪いように思う。二重管理とかダイレクトに作った方が早いと言われるが、ドキュメントを作る際には必ず下書きやらエビデンス、解析データ等の大量のファイルが存在するのはおかしなことではない。むしろ、いきなり本番書きしてドツボにハマる事例の方が多い。

--総括--

 何度でも言う。Excelは表計算ソフトだ。ワープロではない。Excel自体は悪くない。悪いのは使ってる人の頭と要領だ。いい加減な使い方をして効果の発揮されるソフトなんて、この世に存在しない。

 Excelは、データの分析をするには非常に便利なソフトだ。そもそも、手元にデータがあっても分析する人は少ない。情報があるだけででは役に立たない。整理されて初めて役に立つ。だって、整理しとかないと説明できないじゃないですか。

 まず、ソフトウェアの本来の機能を活かしてみよう。Excel自体、決して悪いソフトではない。勘違いした機能も多いのが、使いこなせば炎上を解消できるキャパシティーを秘めている。(だが、万能という訳ではないので使い所はわきまえよう)

Comment(7)

コメント

pepper

こちらも細かい話ですが、、、
> ドキュメントを書くときに、からずテキストエディタで下書きをしよう。
誤字はご愛嬌として、テキストエディタという言葉が、今、どれだけ通用するのでしょうか? プログラムでさえ、統合環境で作成し、普通の文書は、Word/Excelで作成する世界で、テキストエディタの出番は無いようです。従って、その存在を知る人も少数派となりつつあるのではと思います。
大分前の話ですが、プレーンテキストって何かと言う問いかけがありましたが、プレーンテキストの消滅と共に、テキストエディタも一部の人、御用達になるのではないかと思っています。

Anubis

> pepper さん
コメントありがとうございます。

> ドキュメントを書くときに、からずテキストエディタで下書きをしよう。
誤字直しておきました。

>普通の文書は、Word/Excelで作成する世界で、テキストエディタの出番は無いようです。
ご指摘の通り、この考え方の方が一般的だと思います。

しかし、そう思う人ほどテキストエディタを使う価値があると思います。私自身、ExcelとWordを突き詰めた結果、テキストエディタ(Vim)を使うようになりました。

理由は、テキストを入力するのに特化しているからです。入力補完の機能、検索、置換等、ExcelやWordでは太刀打ちできません。(Libre Officeならちょっと太刀打ちできる)プレーンテキストに関しては、コマンドで加工や生成ができるので工夫次第でいくらでも応用が利きます。

とりあえず、テキストエディタに関しては、
・ 使わないと便利さが分からない。
・ 使いこなして初めて便利さが分かる。

と言える。信じるか信じないかは、あなた次第です。

ゆずる

筆者はいろいろと文句を書いてるが、みんなが同じ気持ち持ってる
わけではないですよ。

EXCELの欠点は、下のこの3行と印刷と感じる。それから、画面と
印刷プレビューと印刷結果が同一ではないこと。

>スクロールする時もセル単位にスクロールするので、たまに一つのセル
>にテキストを詰め込んでいると、セルの幅が広くなりスクロールの幅が
>大きくなる。これがけっこう曲者だ。見間違いの原因になりやすい。

これは、セルを結合して対処してますがね。

ところで、筆者のコラムはEXCELのドキュメントへのアレルギー反応が多い
ですが、WORDでもEXCELでも一長一短があって別にどれでも問題ないし
実務上大した問題ではないことを騒ぎすぎな気がします。大切なことって
もっとほかにあると思いますよ。

EXCELが使いにくい、メンテナンスに時間がかかると主張されても読者の
大半は同意しているわけではないですし、WORDでもEXCELでも好きなので
作ってくださいとしか。

あと、手順書にしてもドキュメントにしても「プレインテキストが良い」と
いうのは同意します。画像はれないのだけが欠点ですが、プレインテキスト
で作られた手順書は読みやすい、編集しやすいってメリットがあるし
自分も愛用してます。

Anubis

> ゆずる さん

> 筆者はいろいろと文句を書いてるが、みんなが同じ気持ち持ってるわけではないですよ。

それで十分です。コラムをきっかけに考えてくれれば問題は無い。Excel最高!というならそれはそれでいい。対策でそういう人とうまくやっていくための方法論も書いている。よく読めば分かると思うが、内容はExcelでのドキュメントの作り方だ。

> EXCELが使いにくい、メンテナンスに時間がかかると主張されても読者の大半は同意しているわけではないですし

読者の大半がそう思ったとしても事実は事実だ。同意しない理由も、こうじゃないか?という内訳はコラムに書いている。他にもいろいろ理由はあると思う。

>WORDでもEXCELでも一長一短があって別にどれでも問題ないし実務上大した問題ではないことを騒ぎすぎな気がします

問題を問題と認識できていないのが問題です。

ただ、良いドキュメントを作ろうとか、効率を上げたいと考えていないなら、おっしゃるとおり些細な問題だ。
実際、良いドキュメンントを作れば良い仕事ができるとも限らない。ドキュメントの質が低いままで仕事をするにも、通じる理由はいくらでもある。

私が騒いでいると認識され、ゆずる さんが何らかを考えてコメントを書いてくれた。誰かが考えるきっかけを作るのが目的なので、私の目的は十分達成されています。そんなことで、コラム的には成功だったと思う。

--不適切な発言と判断したため削除いたしました。--
代わりに平家物語の冒頭部分を貼り付けておきました。

祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらは(わ)す。
おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。

pepper

Anubisさん、
> ExcelとWordを突き詰めた結果、テキストエディタ(Vim)を使うようになりました。

それはそれで良い事と思いますが、流れは違うようです。
昔のワープロは遅くて、早いタイプに追いつかなかったのですが、今はほぼ問題が無くなり、その一方、タイプが早いという事が重視されなくなりました。
下書きにテキストエディタは便利ですが、良いドキュメントと言ったところでNGとなります。

ここの文書でも、"--実際--"とか、"もう、いい加減にしろよ。"で、装飾文字を使っています。それらはテキストエディタでは表現できません。

Word/Excelについては、
> WORDでもEXCELでも一長一短があって別にどれでも問題ないし実務上大した問題ではないことを騒ぎすぎな気がします

ですね。組込み関数でできる事を難しいマクロにするのは勘弁ですが。(時々、いる) 作った人のレベルを現していると思えば、仕方がないと。

個人的には、10年以上前のエディタ。乗換え先を探しているのですが、見つからない。手に馴染んだものを変えるのは大変と。(Vim は、viなのでパス.. 元はラインエディタ)

Anubis

>pepper さん
ドキュメント作成にvimを使う理由は、正規表現での検索、置換ができるのと、入力補完でしょうか。あと、レジスタですね。あとは、修正内容をdiff(コマンド)で確認できる。下書きには最適ですね。

内部向けのドキュメントはテキストで、提出物はWordで書式まで整えてます。

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