いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

ニーズに応え過ぎてアイデンティティの喪失

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▪️叶いすぎる願望にロマンが喪失した

 例えば、美味いラーメンが食いたいと思えば、そこら辺にあるラーメン屋に入れば食える。繁華街に行けば、ラーメンの種類も選びたい放題だ。ラーメンを食べるつもりで繁華街に行って、急にパスタが食べたくなったとしても、イタリアンのお店もいくらでもある。

 美味いものが手軽に食べられるのは嬉しい。だが、手軽になり過ぎた感がある。確かに、食べたい時に食べたいものが食べられるのは嬉しい。だが、あの場所でしか食べられない、あの時期にしか食べられない。という限定感・・・というのだろうか。そういうものが失せてしまった。願望が簡単に叶い過ぎるので、逆に味気がなくなった。

▪️要望をほじくり返すIT業界

 IT業界でも似たような流れを感じる。例えば、レンタルサーバを使おうと思って調べてみると、似たようなサービスがわんさか出てくる。こんな値段で大丈夫か?と思う程に低価格でサービスが提供されている。

 ソフトウェアにしても、「こんな機能があったらいいな。」そいういう要望があれば、製品にどんどん取り込まれる。それは良いのだが、次のバージョンアップの目玉機能の為に、無理に要望をほじくり返してソフトウェアが肥大化していく。AdobeやAutoDesk、Microsoftなど、シェアの高いソフトでそのような傾向が見受けられる。

▪️ソフトウェアのアイデンティティー喪失

 お客様の意見をより多く取り入れたから、ソフトウェアとしての完成度は上がるだろう。と思うがそうでもない。むしろ、あまり使わない機能ばかり追加されて、ソフトウェアのエントロピーが増大している。

 ソフトウェアを作成した時のコンセプトが、機能追加を繰り返すことでブレていく。副作用で、操作がわかりにくくなったり、動作が重くなったりする。機能を追加していけば付加価値も上がる。という足し算の思考で考えていくと、こうなりやすい。

 ソフトウェアのコンセプトとは、人でいうアイデンティティーだと思う。人間でも、言われるままにYesマンで仕事をしているとアイデンティティーを見失う。ソフトウェアも、言われるがままに機能追加をしていると、コンセプトを見失う。

▪️コンセプトがブレないために

 お客さんや立場が上の人が言う通りにすると、確かにその場のウケは良くなる。しかし、もらった指示を考えずに実行していると指針を見失う。そうなると、トラブルが起きても対策を打ち出せなくなり、人間関係が円滑でも問題が山積みになってしまう。

 エンジニアにアイデンティティーがあることは重要だ。自分の作るシステムで実現したいものをはっきりしておく。これがエンジニアのアイデンティティーだ。これを顧客に丸投げしたら、エンジニアとしてのアイデンティティーを失い、システムのコンセプトも見失ってしまうからだ。

 アイデンティティーを保つには、自分が作りたいシステムのイメージを固めることが必要だ。これはなかなか労力がかかるので、誰かに丸投げしてしまいやすい。誰かに丸投げした上で、自分は要求だけ主張する。これが一番楽な方法だ。これって、どこかで見たような気がする。IT業界の構造は、まさにこれではないだろうか。

Comment(6)

コメント

EXCELファン

このコラムに賛同。WORDのソフトウェアとしての完成はWORD97あたり。これ以降は蛇足、あるいは余計に使いにくくなる改悪の繰り返し。

その結果、WORDだと訳が分からなくなるからEXCELで処理しようという流れが加速する。SEがEXCELでドキュメントを作り出したのはWORDが完成したにも関わらず、商売のために機能追加をし続けなければならくなり、WORDが客の求める簡単、分かりやすい、使いやすいから離れていったことが原因。

そして、EXCEL方眼紙は、ベストな解ではないが、ベターな手法として市民権をえて普及していくのであった。

SEの時間単価は非常に高いから、WORDのソフトウェアの習熟や、あるいはWORDの使い道に工数を割くのはもったいないのだ。

これが昨今のEXCEL方眼紙問題に発展していくのであった。(続く)

つづくと書きましたが、続きのコラム希望します。

Anubis

> EXCELファン さん

もうそこまで理論立てできるならEXCELファン さんでコラム書けますよ。
書きたい事を書いて二、三本でもOKです。
出来栄えな気にしなくても大丈夫です。書く事で得られるものはあります。

> つづくと書きましたが、続きのコラム希望します。

すでに執筆済みです。乞うご期待。

とおりすがり

単に日本は客がアホだからでしょ?

さっき月見うどん注文したのに、出てくる段になって「かき揚げうどんにしてくれ」。んで、「え、あぁ、月見うどん注文なさいましたよね?」って言ったら「頼んでない」。

これが日本のITの客です。クズばっか。
自分が食いたいうどんもわからない、ちゃんと注文できないグズ。

そんな奴にごますって金もらうような業界。そうしないと生きていけないから仕方ない。

こんなんで世界に通じるITなんか出来るかっての。

Anubis

> とおりすがり さん

> 単に日本は客がアホだからでしょ?

表現はストレート過ぎるが、本音はそれだ。
包んだオブラートを、全部引っぺがしてくれたね。

h

とおりすがりさん

>単に日本は客がアホだからでしょ?
これは当てはまる部分もあるのでしょうが、提供側にもアホが紛れている場合もあるんじゃないですかね。

おなかは減ってるけど我慢できなくもない異国の通行人に
「うどんおいしいですよ、食べなきゃ損ですよ、食べれば絶対満足ですよ、
ついでに生卵もつけると最高ですよ」
「生卵食べるとか無理、おなか壊すしおいしそうと思えない」
「食べればイメージ変わるよ!みんな頼むよ!」
と客の好みをきかず勧めておいて、食事の提供を待ってる客がメニューを見て
かき揚げという自分によりマッチするトッピングがある事を初めて知った。
だから「かき揚げうどんにしてくれ」と言ったのに「お客さん月見食べるって言ったよね?変更無理だよ」
仕方ないから客はかき揚げを我慢して、食べた結果やっぱり自分にはあまり合わなかった。

ってパターンもまぁまぁあるかと。

Anubis

> h さん

> 提供側にもアホが紛れている場合もあるんじゃないですかね。

表現はストレート過ぎるが、本音はそれだ。
包んだオブラートを、全部引っぺがしてくれたね。(二人目)

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