いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

炎上後の骨の拾い方

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■炎上するには理由がある

 IT業界にいると、よく炎上案件の話を聞く。そこで必ず炎上の理由が探求されるが、炎上後の処理が探求されることは少ない。原因を究明することで再発を防ぐのは賢いと思う。だが、起きてしまった炎上を逆手に取って、スキルアップや新しい仕組みを考える。そういうアプローチがもっとあってもいいと思う。

 そもそもこんな無茶ばかり強いられる時代だ。誰がどう頑張っても炎上案件を避けては通れないと思う。だったら恐れずに炎上案件に挑んでいこう。火を避けるのではなく、逆に利用するのだ。人間は火に対しての恐怖を克服して文明を築き上げた。恐怖を超えた先には、必ず成長が待っているのだ。

■炎上を利用するために

 当たり前だが、炎上を利用するには炎上を想定して動く必要がある。何の準備も無しに炎上現場に突っ込むのは無謀だ。炎上案件に挑む前に、労働法やパワハラ時の訴え方、不正にサービス残業を要求された時の残業代の請求の仕方、失業保険のノウハウ等、事前に調べておこう。

 つまり、首を切られる前提で業務に臨むことだ。生ぬるい現代では、そのくらいしなければ精神力も鍛えられないだろう。よくよく考えてみよう。もし自分が動物だったら、ミスしたらそこで終了だ。人間なら命まで取られることはない。そんなに力む必要はない。もっとカジュアルに覚悟を決めてみよう。

■覚悟を決められない人のために

 そんなに簡単に覚悟なんてできるか!とお怒りの方もいらっしゃるかもしれない。そういう人ほど考えて欲しい。覚悟せざるを得ない状況に追い込まれてから、しぶしぶと煮え切らない覚悟をするのか。それとも、一切を捨ててスッパリ覚悟を決めるか。同じ覚悟でも、結果に雲泥の差が生じてくる。

 何かを得ることばかり考えていて失う事を想定しない。何事も右肩上がりで良くなっていく。そう考えるほど得るものは少ない。スキルなんて、百回試行錯誤して、たまたま上手くいった一回から学んでいく。そういうものだ。

 自分の思うように事が運ぶ事がベストだと思い込み過ぎてはいないだろうか。自分にとって不利な状況が遥かに価値のある将来に繋がることだってある。炎上する現場には確かに悲惨だ。だが、きちんと準備をして挑めば、きっとダイヤモンドのような価値のあるものを得られるのではないだろうか。

■だが現実はそんなに甘くない

 しかし、炎上現場の跡にはダイアモンドが落ちている。安易にそう思い込んで本当にダイアモンドを探す人は、きっと何も得られないだろう。実際、ダイアモンドといえど元は炭素なので、燃えれば炭になる。実際に落ちているとすれば犬のクソだ。

 炎上現場の本当の価値は、炎上した後に全てが破壊され、フラットになることだ。そこにダイヤモンド並の価値がある。プライドを崩され、スキルを否定され、無能と罵られる。実は、そういう経験こそ謙虚に学んでいくのに最適だからだ。

 本当のポジティブとは、そういう極限のネガティブに対しての抵抗力だ。炎上現場が燃え尽きたら必ず振り返ろう。どんなスキルがあればプロジェクトを成功できたか。いや、そもそも無理なプロジェクトだったか。どれだけ人が傷付け合い、憎みあい、こぞって争い合っていたかを。

 人の醜さ、無能さ、うつろいやすさ。そういうネガティブな部分を熟知して尚、肯定的な意見が言える。これが真のポジティブだ。どんなに酷い現場だからこそ、成長の糧にしていくのだ。そうでなければ、プロジェクトで燃え尽きた人たちがあまりに無念でならない。彼らの犠牲は無駄にしてはならない。

 

Comment(1)

コメント

noce11si

素晴らしいです。
エンジニアの溜飲を下げる作品です。
今後もよろしくお願いします。
(焼け死なないように気をつけつつ、ではまた)

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