エンジニアの市場価値という考え方をDisってみる
■市場価値を意識するということ
そもそもエンジニアの市場価値とは何なんだろう。エンジニアの市場価格とは、骨董品の値段のようなものだと思う。開運!なんでも鑑定団という番組を見たことがあるだろうか。この番組で鑑定してるシーンを見ると、市場価格という概念に翻弄されるエンジニアが思い浮かんでしまう。
この番組を見てる人で、500万円の鑑定が出た掛け軸を、実際にその価格で買いたいと思う人はいるだろうか?大概の人が、こんな粗大ゴミが500万で売れるんだ!というギャップを楽しんでいる事だろう。そもそも、専門家しか価値の分からないような物だ。一般人がその値段で買うことはまず無い。
エンジニアの市場価格というのも似たようなノリを感じる。今の会社でくすぶっている自分に、実は年収1000万円の価値があります!と言われればインパクトが強い。しかし、実際にその報酬で雇って貰えることは希だ。雇って貰えたとして、限定的だったり、競争が過剰だったり、何らか裏があることもある。
■市場価値を意識するほどセコくなる
これはエンジニアに限ったことではないが、何でもかんでも金銭に換算して考える習慣がすごく鬱陶しい。もっと単純に言うならセコい。お金の事を考えるなとは言わない。だが、それ以外に考えるべき事は山ほどあるはずだ。
自分の市場価値を考えることのデメリット。それは、行為自体が無意味な事だ。市場価値は自分が決める事ではない。見る人が決める事だ。市場価値を考えて仕事がうまく回るのは、人材紹介会社の担当だ。
市場のニーズをつかむ必要は確かにある。だが、高値でなくても必要とされている役割もある。市場価値ばかり考えると、欲望ばかり膨らんでそこを見落とす。そして、自尊心ばかり膨らんで手の届くチャンスを逃し易くなる。
■自ら不利な状況に足を運ぶなかれ
誰だってお金は欲しい。だが、意識がそちらにいくと精神的な安定さを欠いてしまう。簡単な話だ。お金が欲しいという欲望が理性を超えてしまえば、思考が欲望に翻弄される。そんな状態で、良いアイディアが浮かぶか?目の前の課題に集中できるか?客観的に自分を分析できるか?どれも無理だろう。
お金が欲しいという欲望はうまく制御しないと、自分の力を発揮できなくなってしまう。市場価値に翻弄されると、自分の能力を正しく判断できなくなる。最終的に、自分の強みを見失ったり、実力に合わない仕事を引き受けて苦労してしまう。
■お金を欲しがる人はエンジニアに向いていない
そもそもな話で、市場価値に翻弄される思考レベルで成功できるなら、世の中のエンジニアの大半は成功者になれる。世の中そんなに甘くはない。普通の人の先の発想を追求するのがエンジニアだ。市場価値に翻弄されている時点でエンジニアとしての資質は低い。
現実的に稼ぎたいと思うことは否定しない。しかし、エンジニアが稼ぐのに必要なのは積み重ねた技術だ。いくら市場のニーズにマッチしたとしても、元となる技術が低くては役に立たない。稼ぎたいと思うほど目的に対して逆の結果が出るのだ。お金を基軸で考えたいなら、エンジニアとは別のフィールドで戦うべきだ。その方が儲かる。
もし自分の市場価格が気になったら、書店に行って技術書でも買おう。今までに読んだ技術書の価格に理解度を掛けて合計してみよう。あえて言うなら、それが本当のエンジニアとしての市場価値だと思う。
コメント
仲澤@失業者
読み終わって、大昔のエピソードを思い出しました。
ブンさんというその業界ではレジェンド的営業マンが
同僚だったことがあるのですが。あるとき彼が私の顔を見て
「あんたの作ったものはワシが売ってきちゃる。
ただな、額面はワシがきめるど。ええか、
あんたの技術の価値はワシと客がきめんねや。覚えときっ」
ちょいと生意気な若造に、ありがたい意見をしてくれたわけですね。
そのときから、自分の技術の価値は営業と客とが
売った、買ったで決めるもの。と肝に命じてますです。
やまぐち
>お金を欲しがる人はエンジニアに向いていない
私は逆の考えです。
現状ってプログラムの価値を担保するものって
お金しかないと思うんですよね
それ以外あります?
まったく役に立たないコード(組んだ人間は価値があると思ってる)を
入れようとしてる開発者をどのように説得するか考えてみてください
このときお金の話を出さなかったら
一体どうやって彼を否定したもんでしょうか?
また、午前中に穴を掘って、午後に穴を埋めろという
仕事をやらせる上司とかこいつを消してくれるのは
成果という形のお金しかないのではないでしょうか?
ここを否定してしまったらこの上司はどうやって
会社から消えてくれるのでしょうか?
こいつと仲良くやっていくことで描ける未来は
ぶっちゃけそんなによかないと思っています(笑)
平太郎
ビジネスでやっている以上、お金と時間を意識できないとダメでしょう。市場価値を決めるのも、技術の高さや希少性です。高い報酬を得るために努力する。これが資本主義国の発展を促してきました。
この現実から目をそむけては戦えない。そういう人こそエンジニアに向いていない。夢の国で暮らしていくしかないよ。
Anubis
>仲澤 様
個人的に、それが本来あるべき姿かなと思います。
ただ、今をれをやろうとしたら難しいのかなと思います。
>やまぐち さん
>現状ってプログラムの価値を担保するものって
>お金しかないと思うんですよね
>それ以外あります?
実績があるのではないでしょうか。
>入れようとしてる開発者をどのように説得するか考えてみてください
ここは淡々と入れたらどうなるか、理論的に説得すると思います。
自分の書いた内容を後から読み直してみたのですが、
「お金を欲しがる人」というより、「お金に執着しすぎる人」と書いた方が
意味は伝わったように思います。
誰だってお金は欲しい訳だし。お金を求める事イコール、エンジニア失格では
確かに話は通じません。ちょっと私の言葉が足りなかったように思いました。
Anubis
> 平太郎 さん
まさに教科書通りのご返答だと思います。ですが、そこで終わっていませんか?
> この現実から目をそむけては戦えない。そういう人こそエンジニアに向いていない。夢の国で暮らしていくしかないよ。
目を背けるのではありません。念を押しておくと、
教科書通りのセオリーを超えるという観点でコラムを書いてます。
それを踏まえた上で、同感です。
forseti
いつも楽しく拝見しております。
そう長くないSE経験で、
一番自分にとって価値ある物と感じているのは
関係者からの信頼でしょうか。
困っている時に優先して教えて頂いたり、
未経験の仕事をリスク覚悟で経験させて頂いたり、
良い関係を築けた所では無理に自分が意識しなくても
結果として自身の経歴、経験が積まれ市場価値が作られている気がします。
信頼関係の構築についても
その場その場で違う言語で開発をしていたせいか、
得意な言語も無いですし、技術が高かったという認識はありません。
「簡単な方法で確実に早く作れるようにやり方を考える」
(相手が妥協してもらえそうなら他のメリットとトレードして妥協してもらう)
「技術」が足りなくても足りないなりに何とかなる事もある気がします。
Anubis
>forseti さん
コメントありがとうございます。
> 一番自分にとって価値ある物と感じているのは
> 関係者からの信頼でしょうか。
分かる気がします。
ちょっと大げさな言い方かもしれませんが、forseti さんのコメントから
人徳を感じます。
このコメントを頂いて、人徳って人を納得させる力があると思いました。
技術でのゴリ押しではなく、きちんと相手を見て話すというのは大事だ。
私が言いたかったことはこれかなぁと気付かされました。
やまぐち
>ここは淡々と入れたらどうなるか、理論的に説得すると思います。
どうなったらダメで、どうなったら良しとする前提を置いて説得する気ですか?
結論からいうと最終的にお金になるかならないか?しかないと思います
>実績があるのではないでしょうか。
実績とはなんでしょうか?
「この技術を使って以前お金にできたこと」が
まさに実績なのではないでしょうか?
k
「まったく役に立たないコード」が駄目な理由は商品の問題であってエンジニアの市場価値とは独立している問題。
商品の価値とそれを作ったエンジニアの価値は同一であるという立場ならともかく、そうでないなら話題がずれている。
企業や商品においてお金は重要な判断基準だけど、エンジニア個人においてはどうかというと重要には違いないけど、前者における重要度よりは高くないんじゃないかな。
給料としてはさほどではないけど、絶対にやりたいプロジェクトってあるし、その時の市場が価格をつけられないくらい先進的な事に取り組む事で、最終的に大金を得ている人たちだっている。
とはいえ、自身のエンジニアとしての市場価値=給与を気にする人は、そこまでの大金を望んでいるわけではないと思うけど。