いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

Excel 幻想(ファンタジー)

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■(日本)人はなぜExcelを使うのか

 ぶっちゃけ、買ったPCに入ってたから使ってるだけだろ。で、Wordを使いこなすスキルがないので、マウスでぐりぐりできるExcelの方を使っただけじゃなかろうか。とりあえず、適当にマウスをぐりぐりするだけでそれっぽいものができるので、コレはすごい! となったのだろう。

 実際のところ、Excelでドキュメントを作るのに、縦横斜めと線が引ける、字の大きさが変えられるくらいしかメリットがない。正確に言えば、それくらいのメリットのためにExcelを使ってる人が大半だと思う。Excel凄い! ってことにしとけば、わざわざ他にソフトを探したり、使いこなす努力を省くことができる。取りあえず、形だけは簡単に整えられるからだ。

■Excelの限界突破

 自称パソコン使いこなしてる人でも、Excelの機能をほとんど活用できていない。むしろ、事務仕事やってるおねーさんの方が使いこなせてる。Excelの機能を中途半端に知ってると、何でもExcelでやろうとしてしまう。そこから行き過ぎて、本来ExcelでやるべきでないものまでExcelでやろうとしてしまう。そうやってExcelの失笑伝説は繰り広げられる。

 確かに、ExcelでVBAを駆使すれば本来の機能には無いような機能も実現できる。それはそれで有意義ではある。ADOやらなんやらをごちょごちょすれば、SQLだって使える。だが、そこまでするならVBで開発しろと言いたい。Expressなら無料だぞ、こんにゃろう。

 VBAまでいかないにしても、関数を10行くらい書いて参照に参照を重ねたExcelファイル、やたらとシートを何十枚も重ねた変態ドキュメントのように、込み入ったものを作るとメンテナンス不能になる。Excelで作ったデータはリファクタリングが困難だ。

 高度な計算したいなら素直にAccess使うべきだ。ドキュメント書きたければWord使え。え? 覚えるの面倒だって? Excelも同じだ。使い方も知らずに使うから、世の中にExcelで作ったうんこファイルがあふれるんだ。

■テキストファイルで十分だ!

 ドキュメントの体裁を考えない、重要視しない人がExcelやらWordを使うのでおかしくなる。体裁考えないなら、テキストファイルの方が適任だ。Powerpointなんかより、ペンタブレットとペイントで十分だ。実際、メモ帳やペイントレベルのソフトであれば、迷うような機能は無い。直感的に使いこなすことはできるはずだ。

 文字だけでドキュメントを書けば、情報の実質的な量がつかめる。文章に書けるということは、それは具体的にまとまっているということだ。図や表でビジュアル化すれば分かりやすいと言われるが、それは違う。思考がまとまっていなければ、図を使おうが表を使おうが分かりやすくはならない。

 最近のビジネスマンは、安易に図や表に頼りすぎる。ドキュメントで重要なのは中身だ。ExcelやらPowerpointで飾る事に労力を割かれて、伝えるべき内容を精査するのを怠っている。飾るにしても、色やレイアウトに関する知識は皆無だ。学ぶ気すら毛頭無い。ソフトを使う以前の技量、コンテンツが貧弱だ。これでは何のソフトを使っても、大した恩恵を得ることはできない。

■Excelの真の力

 大半の人が勘違いをしているが、Excelシートは紙じゃない。そしてワープロでもない。作図ツールでもない。表計算でデータを処理するためのツールだ。テータを的確に処理するためには、的確にデータを入力する必要がある。好き勝手に解釈して使っていても、自分の求める結果は得られない。

 Excelは高性能だが、ただのソフトウェアだ。元々無い作図のセンスや、抜け落ちた思考を補ってはくれない。データ処理に関しても、適切に機能を使いこなさなければ、手計算で処理するのと大差がない。Excelが動いてくれないのではない。使ってる人のスキルが低いのだ。

 Excelの真の力を発揮するには、キチンとExcelの勉強をする。使うべきところに使う。この二点に尽きる。真価を発揮するといっても、きれいなドキュメントが書ける訳ではない。リレーショナルDBのように使える訳でもない。表計算であらゆる分析が可能になる。それだけだ。他に必要な機能があれば、素直に別のソフトを買おう。

 ソフトウェアというものは、自分の努力なしに効率を上げるものと勘違いしていないだろうか。そういう勘違いをしている人が多いから日本はソフトウェアを軽視する傾向が強いのかもしれない。

Comment(4)

コメント

こんにゃろう

はじめまして。


Anubis様ごめんなさーい。
クライアント数約200のシステムをExcelVBA+ADO+SQLServerで作ってしまいましたー。


最初は出来心で。
ではなくて、きっかけはこんな感じです。

客先担当者様「うちの社員が作ったAccessのシステムがあるんだけどクラサバ形式にして部門全員で使えるようにしてくれる?」
こんにゃろう「ハイ、喜んでー」

客先担当者様「でもなぁ。AccessがインストールされていないPCが半分位あって、調べてインストールするの面倒なんだよなぁー」
こんにゃろう「クライアントをExcelにしてみます?」、「評判悪いようならAccessということで」

客先担当者様「やってみて」


このシステムが予想外に好評だったんです。
ご褒美(追加の開発料)を頂いたぐらいに。


リリース後5年が経過しましたが、年1回程度改定がある他は特に問題もなく安定稼動しています。


こんな会話があったことを後で聞きました。

元のシステムを作った社員様「ExcelVBAは分からんのじゃー。俺好みに直せないじゃないか、こんにゃろう」
客先担当者様「部門システムを己の一存で変えられてたまるか、こんにゃろう」


以降オーダーいただくシステムはすべてこの形式です。
他のお客様も紹介して頂きました。


SOHOなので殆ど営業しませんから分かりませんけども、VBAはHTTPにも対応でき「クラウドもどき」も可能ですから潜在ニーズは結構あるのかも知れません。


罪を重ねていますが、配布プログラムはVBで作りましたのでどうかお許しください。Anubis様。


「・・、こんにゃろう」で吹いてしまったのでコメントさせていただきました。

Anubis

> こんにゃろう さん

どうも、Anubisです。

単純なシステムなら、Excelをインターフェイスに使うのもありだと思います。
私もVBAで開発をしたことがありますが、複雑になるとしんどくなる。
そこがVBを勧める理由です。

必要な機能やら用件をしぼって、Excelで収まる範囲にまとめたのであれば、
逆に こんにゃろう さんの実力は高いと思います。

なんか、読んでてほのぼのしました。


ちなみに私は開発が本業ではないので、
Accessでの短期決戦型のやり方をよく使います。

ちいさいおおかみ

初次見面Anubis先生。

前職場での苦い経験を交えてお話し致します。

俺は昔は"D-BASEⅡ"や"Multiplan"やら"Lotus 1-2-3"と云ったMS-DOS時代からある表計算ソフトを少々弄った後、"三四郎"で初めて業務上本格的に表計算ソフトを日常的に使用していました。当初は、"MS Excel 95"の古い型を使っていたのですが、やがて、三四郎がもっと性能が良いと判り、又、俺自身がJUSTSYSTEM様とソフト的に懇意にしていたの(一太郎を常用していたり)もあり、三四郎にはずいぶんとお世話に成りました。

駄菓子菓子、

コラムにもある通り、お仕着せのExcelはやがて俺の前職場でもその"バンドル"と云う暴力を発揮し、とうとう前職場からJUSTSYSTEM系を始め"セコンドシェア"ソフトは所謂"デファクトスタンダード"に取って代わられて、三四郎も実務から放逐されてしまいました。

後はお決まりの"Excel"と"Word"と"Outlook”の乱用ですわ。
しかも、
表計算ソフトに付き物の"誤差"が管理職・経営陣から難癖を付けられる元となり、
本来なら自動計算されるべきところを全て、

手計算の値を清書するだけの使い方に零落れてしまいました。

先生の仰る通り

"効率良く物事を進める為"
には、
"効率良く物事を進める手順手筈"
があるのに、それをすっ飛ばして、

「パソコンは間違いを起こさない」

と云う、将に"幻想"を盲信していた前職場の経営陣・管理職…
お陰で端数の誤差さえも俺の責任にされてしまいましたね。

パソコンは間違いを起こさないのではなく、間違っていない様に人間が手を加えてなんぼなんでってのに。そう云う基礎的な知識が皆無のIT後進会社でしてねぇ…。

ああ云う所にはIT導入する前に、基礎的な論理的思考を、パソコンの構造と論理学を、根本的に頭から叩き込む必要があると思いましたね。
…その前職場は、現在、"お家騒動"真っ最中です。
俺は呷りを食らって退職し、現在は転職デスマーチ中です。
50にもなると、IT業界で生きて行けないのでしょうか(遠い目)?

深名線

「体裁考えないなら、テキストファイルの方が適任」という以上に、「テキストファイルであるが故の利点」というのもありますよね。それこそバイナリファイルを窓から投げ捨てたくなるほどの。


・Gitなどのバージョン管理システムで管理することができる
・→GitHubなどのサービスを利用でき、プルリクエスト等便利な機能を使うことができる
・diffで差分を取ることができる
・複数人で同じファイルを編集して、後でその結果をmergeできる

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