いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

議論での勝ち方

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■ネット上でまともな議論は少ない

 2ちゃんねる、ミクシィのコミュニティ、そういった場所での書き込みを見ていて、まともな議論を見ることが少ない。エンジニアライフのコメントを見ても、失笑もののコメントが多い。一応、私もコメント欄を解放しているが、コラムの内容をよく読まずにコメントする人がどれだけ多いことやら。返答するに値しないコメントは削除しています。

 ネット上を見ていて、日本人は議論の仕方を知らないのではないか? と思う。議論といいつつ、議論になってない議論が多い。単に論破したいだけなら口げんかだ。自分の意見を押し通したり、相手を否定するためのものではない。

 ついでに言っとくと、タイトルに引っ掛けを入れておいた。議論は勝ち負けではない。最大の目標点は、お互いの納得だ。勝ち負けを言ってる時点で論点がずれている。

■それでもやっぱり勝ち方はある

 それでも、お互いの意見が食い違った時、どちらの意見が正しいかという勝負になることはある。正しい、イコール勝ち。間違えている、イコール負け。という基準だ。一応、こういう議論で勝ちたい場合の手段はあるのでリストアップしておく。

  • 正しい日本語を使う。
  • 文章は簡素に、分かり易く書く。
  • 意見に一貫性を持たせる。
  • 嘘を言わない。
  • 相手の意見を正確に理解する。
  • 相手の言うことが理解できなければ確認する。
  • 落ち着け。(一番重要)

 ネットで見かけるレベルの議論であれば、ここら辺を押さえておけば惨敗してみじめな思いをすることはない。

 リストアップした項目は、議論するときの定石です。チェスや将棋でもそうだが、定石の意味をきちんと理解して活用できる人に、我流の素人が勝つことは難しい。これらの定石を知らずに議論を吹っ掛ける人がネットには多い。

■議論以前の問題

 もちろん勝ち方の定石を知っていても、自分の持つ理論が破綻している、情報が間違えている、思索が足りないという場合は論破されます。また、相手の意見が気に食わないからといって議論を吹っ掛けると、理論が破綻しやすくなる。実のところ、それは持論ではなく、感情に突っ走ってるだけだ。

 そもそも、議論する相手も100%間違えていることは少ない。どんなに頭にくる相手でも、自分と共通する認識を探していくことから始めよう。共通する認識から話を始めないと、話が噛み合わない。コラムに付くコメントにはこういうのが多い。相手を知ろうとせずに持論を展開するので、話が噛み合わない。

 議論における最高の勝利は、お互いの100%の納得だ。論破ではない。仮に、どちらが正しいかという議論であっても、自分の一番大事だと思う部分、一か所だけ「Yes」と言わせればそ十分だ。相手を認める気のない人に議論をする資格はない。

 また、理論が正しくても心情的に受け入れられないこともある。そんな時は粘らず引こう。心情的なもつれを解きほぐすには、理論以外のアプローチも必要だからだ。理論で相手を押し潰しても、得られるものは無い。

■議論に勝っても得られるものは少ない

 現代の日本において、議論で勝っても得られるものは少ない。会社でもそうだと思う。議論に勝ったとしても、「確かにそうだね。」と言われて、政治的な圧力で強行されるのが関の山だ。もしくは、その場は納得されても次の日にはきれいさっぱり忘れられている。結局、力の強い人の願望が優先する。

 日本人は人間関係を重視する。故にこういう事がよく起きる。理論性よりコミュ力で事を押し切る傾向が強い。無難な方法で回避できる課題であれば、コミュ力だけでも解決できる。ただし、リスクの伴う挑戦をする時は話が進まない。コミュ力の基準ではなく、勇気と裏付けのある人を選ばなくてはならないからだ。だから日本で新しい挑戦が生まれない。

 結果、議論に強い人よりコミュ力の強い人の方が優位に立てるので、議論のできない人が増えた。だから内輪でぬくぬくと過ごして世界に取り残されるのだ。世界に意見できない日本ってかっこ悪くないか? 今、日本人に求められるのは、コミュ力ではなく議論のできる理論性じゃないだろうか。

Comment(5)

コメント

仲澤@失業者

冷静で建設的な会話が交わせるのは強く望むところです。
かつ合議ができればそれこそ理想的ですね。

さて、じじいになってからつくづく思うことなのですが、
「正しいだけでは人の心を動かすことはできない」
という事です。自身が反省するところですが、
かつては正論(と自認する内容)を「なぜこんなことがわからないのか」
といった態度でしゃべっていましたが、人の心を動かすといった
目的の場合、この方針はさほど成功率は高くなかったと言えるようです。
逆に「まっかな嘘であっても、感動さることができれば人を動かせる」
ということにも気づきました。
もっとも「数学や物理学の粒度にまで還元できない理屈に正解なし」
と自認するに至り、ネット上の議論も「青春だなぁ」と涙目で感動できる
今日この頃です。

コミュニティでまともな議論を見ることが少ない、というのはそもそもレベルの低いコミュニティにしか参加していないからでしょう。レベルの高い人が集まるところではちゃんとした議論が行われていますよ。

と、変な議論をふっかけてみました(^_^;)。

こんなふうに、本論と違うところ、どうでもいい前置きとかに突っ込んでくる人っていますよね。そこを議論してどうする。国会でも失言に突っ込むばかりで議題が進まないことが多いし。たしかにかっこ悪いと思います。

ともちゃん

abekkanさんwww 一瞬だまされましたorz...

Anubis

>仲澤@失業者 さん

あと、年齢を重ねることの利点として、落ち着きが増しますよね。
(人によっては逆に落ち着きがなくなる人もいるが)

私も正論大好きな他人ですが、人を動かすものってもっと他のものですよね。


>abekkan さん

コメントありがとうございます。
正におっしゃる通りなんですよね。例えば、コラムニストさんのつてで行った勉強会とかだと、会話をしていても非常に円滑に議論が進みます。

確かに、レベルの低いコミュニティー基準にしてたところがあります。

ただ、abekkan さんのように「お!?」と思わせるようなツッコミなら歓迎なんです。ただ、関係の無い持論を持ちだして「君、それ違うよね。」みたいなツッコミは小一時間説教垂れたくなります。

次回作、がんばってくださいねー。


> ともちゃん

コメント欄にて可愛らしい珍獣を発見☆

カルメン

定石 => 囲碁
定跡 => 将棋
と使い分けるのが日本語では一般的なようです=)

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