いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

逆アプローチの思考 Part2 --駄文を書くスキル--

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■逆発想からの追求

 普通、コラムニストは良いコラムを書くように努力をする。「Part1 --コードから読み取る逆発想--」では全く逆のアプローチで、いかに駄文を書くかというテーマを追求してみた。真の駄文とはどうすれば書けるのか。書いてみると意外と奥が深かった。

~Part1を書く上で気を付けたポイント~

  • 複数のかみ合わないテーマを混在させる
  • 語調を統一しない
  • てにをはを正しく使わない
  • 時系列を混在させる
  • 事例を正しく引用しない
  • 起承転結を崩す
  • 難しい言葉使いをする
  • 句読点でだらだら文章を続ける。
  • 重複表現(同じような意味の言葉や内容)を繰り返す
  • 同じ対象を違う言葉指し示す
  • たまに誤字脱字を入れる
  • 題名、書く章の見出しと関係無い内容を書く
  • 唐突な引用を使う
  • 正しくない情報を使う
  • 同コラム内で矛盾点をつくる

こういったポイントを、一定の割合で文章に織り交ぜることで駄文を意図的に書くことができると考えた。ちなみに、混在させた複数のテーマは、

  • プログラマのコードには高いスキルが求められる
  • マネージメントとは、常に利益と損益で判断される

この二点だ。できるだけ誰もが安易に考えそうなテーマを選んだ。そして、テーマに対する絞り込みも甘くした。前提は一応考えておいたが、整理しないことをモットーとしたため、内容を自分でも説明できなくなった。

 実質的情報量は、普段書いているコラムの20%程度だ。これを思考をループさせ、冗長な表現で膨らませて、フォーカスをぼかした。

■私が書こうとしたもの

 意図して駄文を書くと、これが意外と難しい。書きだしたポイントをどれだけ満たせているかは怪しい。そこまでしなくても、バカとかアホという言葉を連発すれば、確かに駄文は成立する。下品な表現や幼稚な表現でも同じように駄文は成立する。しかし、それは私の書こうとした駄文とは方向が違う。

 人は考えた内容を伝えるために言葉を使う。思考から言葉への変換がうまくない人は、素晴らしいアイディアや世界観を持っていたとしても、それを人に伝えるのは困難だ。その、思考から言葉へ変換するプロセスを観察するために、意図的に駄文を書いてみたのだ。

■実際に書くという意味

 書店に行くと、正しい文章の書き方、わかりやすい文章の書き方について書かれた本はたくさんある。しかし、駄文の書き方について書かれた本は無い。普通に考えれば、そんなものにニーズなんて無い。

 ちょっと話は逸れるが、私が習っている某楽器の先生は、うまく音の出ない生徒の吹き方を再現できる。そして、同じ音が出せる。同じ状況を再現できるので、うまく音の出ない理由を、的確にアドバイスすることができるのだ。

 文章でも、楽器でも、コードを書くのでも同じだ。うまくいかない理由を的確に知るには、うまくいかない状態を再現するのが一番だ。実際に駄文を書いてみると、それがよく実感できた。正しさの理由を認識し、理解するには、間違いの理由や原理も知る必要があるのだ。

■駄文に悪意は無い

 そしてもう一つ重要な事がある。駄文が書かれるプロセスを理解できれば、表現しきれなかった内容に迫れるという事だ。文章のスキルと内面に秘めたものは、必ずしも一致しない。表現がうまくいかないからと言って、罵ったり、嘲笑するのは浅はかだ。

 確かに、文章は読みやすい方がいい。しかし、素晴らしい発想や思考、イメージ、表現、文章のスキルが一致することは稀だ。素晴らしい発想や思考も、言葉として表現されずに、たくさん埋もれているかもしれない。逆に、内容が薄っぺらくても、文章力や表現で膨らませる事もできる。

 駄文自体に悪意は無い。相手に条件を求めすぎると、実際に何かを失うのは自分だ。体裁にこだわり過ぎると、内容が薄っぺらくなる。当たり前だ。体裁を繕うために過剰にエネルギーを注げば、内容を練りこむエネルギーが足りなくなるのは当然だ。そういう見えない損失を回避するために、駄文を理解するスキルと、駄文を受け入れる包容力が役に立つのだ。

Comment(3)

コメント

Part1を読んだとき、Anubisさんにしては何か変な文章だなぁ、スランプか? 102回目に死にそうなのかもしれない、と思いました。が、Part2で納得しました(^^)

Anubis

>>abekkan さん

実はその駄文を書くのが、普通にコラム書くより創造性を掻き立てられるんだ。
これがまた、逆説的で面白いです。

Anubis

ちなみに、コラムを新しく書き始めたいと思う人がいたら、
第3バイオリンさんのコラムを参考にするといいと思う。
客観的事実を伝える技術が高いです。表現も非常に的確です。

面白い発想や高度な理論を思いついても、客観的事実を伝える技術が無いと
妄想の域を出ません。

書き始めの方は、持論や理論を書くより、できるだけ実際に起きた出来事を中心に
書くことをお勧めします。なにより、客観的事実を伝える技術は、生活や仕事で
ダイレクトに役立ちます。

客観的事実を伝えるには、整った思考が不可欠です。コラムを書くことで、
思考を整理することができます。これも、生活や仕事でダイレクトに役立ちます。

コラムは書くことに価値があります。いろいろな発見が満ち溢れています。
一番難しいのは、最初の"投稿"ボタンを押す勇気だけです。

新しい世界がそこに待っている。さぁ、君もコラムを書いてみないか?
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