いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

ビジネスの限界

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■さぁ!行き詰ってまいりました!!

 初っ端から思いっきり不謹慎なことを言ってみた。でも、これが大半の人の本音だと思う。日本の行く先、年金問題、教育問題をひっくるめても同じ事が言えてしまうが、そこまで語ると話がでか過ぎる。今、目の前にある仕事に限定して話そうと思う。

 人それぞれ考え方が違うので、みんながそう考えてるとは思わない。私としては、どこの業界を見ても出尽くした感がある。物質的にも満ち足りているし、サービスも巷にあふれている。それでいてなお、まだ新しいものを追い求める。

 当たり前だが、水のいっぱい入ったコップに更に水を注ぎ込んだらどうなるだろう。当然あふれてこぼれる。今、世の中はそういう状態だ。今更、何を継ぎ足そうというのだろうか。

■行き詰る原因

 私たちのやっている仕事というものは、ものすごく効率が悪いのかもしれない。必要以上の量を売ろうとするため、営業と宣伝が必要になる。他社との競争が生じるので、必要な時間すら充分に取れない。しかも、売るためには常に新商品を出していかなくてはならない。

 二十年くらい前までは、こういうやり方でも通じていた気がする。最近、このやり方が通じなくなったのは、消費者がついてこれなくなったからじゃないだろうか。満ち足りているのに、どうやって継ぎ足そうか思索を凝らす。そういう流れになっている。

 無論、満ち足りていると考えない人も多いと思う。そういう人は、無限に増殖する欲望を制御できなくなってるだけだと思う。これだけ脚色の行き届いた宣伝が溢れていれば、それは欲望を制御するのも大変、というか無理だろう。それはそれで、行き詰っていると思う。

■特にIT業界にその傾向が強い

 ビジネスというゲームが先行して、消費者が、もっとも置いていかれている業界。それはIT業界じゃないだろうか。頑張るのはいいのだが、頑張りすぎて商品はオーパーツと化している。消費者が理解できないだけでなく、もう、売る方も訳がわからなくなってしまっている。うまくいかないプロジェクトが多いのもそのせいだと思う。

 確かに、よく理解すれば魅力的な商品は多い。しかし、冷静に考えれば要らないような商品も多い。知ってる人がいれば、100万円かけて導入できるシステムが十万くらいの投資で代行策が打てる。そういうケースをよく見る。

 中小くらいの規模でも、きちんとIT系の人材を育てれば、ある程度の投資で安定してシステム運用できる。システムは魔法ではない。ただのコンピュータだ。使い方もろくに考えずに利益が得られると考えるからおかしくなる。

 本来であれば、システムとはじっくりと時間をかけて理解していくプロセスが必要だ。しかし、それではビジネスが成り立たない。本来とビジネスの差が大きくなるほど業界は歪む。いや、もう本来どうあるべきかも、誰一人分かってないのかもしれない。

■考え方にも終わりは来る

 物や生命にも終わりがるように、ビジネスという考え方もいつか終わりが来ると思う。今、破綻しかけているので、そう遠くない未来にそういう時が来るのかもしれない。私の考えが的をえているかどうか。それは見方によって大きく分かれるところだと思う。そこに同意は求めない。

 しかし、今のビジネスという考え方。この先を考えるのは有益だと思う。破綻せずに別の考え方が生まれるかもしれないし、別の形への変化は必ず起こる。少なくとも、エンジニアとして働いているなら、エンジニアとしての本分は外さなければ問題は無いと思う。という、それしかできないのかもしれない。

 エンジニアがビジネスなど考えなくて済むようになった時、本当に技術がダイレクトに活かされるようになる。私はそう思う。ビジネスがITを推進しているのではなく、実は、間に入って推進を妨げているのではないだろうか。そう思えてならない。

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