いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

実質、働かざるもの食うべからず

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■最近、大阪で話題の生活保護問題

 最近、私の住む大阪では生活保護が話題になっている。生活保護について、細かいことは知らないし語る気もない。この制度を巡っての議論で、最近気になることがある。

 それは、「働かざるもの食うべからず」という発想だ。

 この発想をする人は多い。私はこの考え方に疑問を抱いている。ただ、ここで政治について語る気はない。「働かざるもの食うべからず」という発想を起点として、エンジニアとして技術を活せる方法を模索したい。

■抜け落ちた実質

 昔の人は、自然を基準に物事を見ていた。人が死んでも、「仕方ない」と捉えなければならなかったり、理由もなしに天変地異が起こるなど、納得いかなかったことが多かっただろう。こういう理不尽にも説明もなしに納得していかなくてはならなかった。ただ厳しい分、現実は見えていたと思う。

 現代人の大半は、社会を基準に物事を見る。確かに厳しいには厳しいが、人の都合で都合よく解釈できる。構築される理論は高度になったが、説明や理由がなければ納得ができない。昔の人より知能は高くなったが、理不尽には弱くなったのではないだろうか。

 この理不尽に弱いというのが、決定的な弱点になる。理不尽を受け入れられず、無茶なことをすると、ごまかしや無駄が増えてしまう。

 実際、日本のIT業界は驚く程に無駄やごまかしが多い。実現不能なシステムを無理に構築しようとしたり、自分の立場を守るためにごまかしたり、そんな話はいくらでも聞く。実質で見るなら、きちんと働けている人はかなり少ない。

 「実質」というフィルタを通すと、自分たちの思っているより、ずっと世界は違って見えるんじゃないだろうか。

■エンジニアとして押さえるべき実質

 エンジニアとして本当に価値のある成果を残すには、この実質というのが欠かせない。たとえ受注した製品が納期に間に合ったとしても、機能的に欠陥があれば責任を果たしたことにならない。たとえ知識が評価されていても、コードが書けなかったり、仕組みを理解できていないのであれば、実質のスキルは低い。

 この実質を追求することが大事なのではないだろうか。周りの評価や雰囲気で事実を歪めて見てはいけない。実質というものは、立場や理屈ではなく、実際に持ち得ているものだからだ。たとえ偉い人が「ない」と言っても、そこにあればある。頭のいい人が可能と言っても、実際に不可能であれば不可能だ。

 人の都合や理論と現実は別だ。言葉で言うのは簡単だが、これを実行していくのは難しい。エンジニアとして価値ある成果を残したければ、そういう厳しさとも向かい合う必要があるのだろう。

■そして現実は、私達が考えるよりはるかに厳しい

 働かざるもの食うべからず。実質で考えていくと、これからITで食べていける人は少なくなりそうだ。そして実際、給料が安くなったり食べていけなくなってる人も続出している。確かに、正しい理論を言う人は多い。しかし、現実を直視する精神的な強さを兼ね備えた人は少ないように思う。だからこういう現状なのだろう。

 エンジニアに必要なのは、スキルや知識、経験だけじゃない。プラス、理不尽への抵抗力、平常心、覚悟……その他精神的なものもろもろと。スキルを磨くだけでも労力は要るのに、更に精神的なものも求められたらかなりしんどい。そこまで現実というのは厳しいのだと、肝に命じておく必要がありそうだ。

 ただ、厳しさを乗り越えれば確かな満足があると信じたい。きっとそこは間違えていないはずだ。

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