いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

散り際に分かるものがある

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■今きみは、迷っていないか?

 仕事に疑問を持ってる人って、意外と多いみたいですよ。何でそんなこと分かるかって? 会社が潰れたり物事が行き詰まると、人はポロッと本音を言っちゃったりするからです。

 そのポロッとこぼれた本音が、馬糞みたいに汚いものばかりかというと、実はそうでもなかったりする。人前じゃ絶対に見せないような純粋さだったり、抱え込んだ苦悩の鱗片だったりする。

■最悪のプロジェクトの思い出

 とあるプロジェクトでの事だ。私の関わった中で、最も炎上したプロジェクトでの出来事だ。何が悲惨だったかというと、仕様が破綻していたことだ。とあるミドルウェアの用途を間違えていたため、要件が実現不能だった。

 このプロジェクトで、すごく凹んだ。要求が無茶なのは分かっていても、周囲は「それは必ずできる、できないのはスキル不足と怠慢のせいだ」と言い張る。おかげで、何が正しいか正しくないか分からなくなってしまい、私は混乱した。

 特に、とある上司が最悪だった。できもしない機能を、サポートの人にプレッシャーをかけて実現させろ! という仕事っぷりでした。それを私に強いるので、精神的な負担は甚大だった。

■クソ上司は知っていた

 そんな事で、私はこのプロジェクトを途中離脱することになった。引き継ぎをすべて済ませて、このプロジェクトを去る時、私の上司がポロッとこんなことを言った。

 「大変だったな」

 言葉にするのは難しいが、そう、私の苦悩をどうも理解していたみたいだ。そういうのがひしひしと伝わる一言だった。

 その上司、よく嫁さんの写真を見ていたっけなぁ。もうすぐ子供も生まれるみたいだった。そんな事で、家族を守るため、引くに引けない立場でがんばり続けてたのが現実だったようでした。もしかして、一番無茶を背負い込んでいたのは彼かもしれない。

 それから短い間ではあるが、何気ない雑談やら、学生時代の話なんかをした。普段の仕事じゃそんな話は絶対しなかっただろう。あれだけ嫌だった上司が、何か憎めなくなった。

■何かが終わるその時、明らかになる事実がある

 何かが終わる時というのは、同時に総決算で何らかの結論が出る。プロジェクトの失敗要因だとか、それぞれの人間ドラマやら、ごまかしてた皺寄せやら。清濁併せていろんなことが顕わになる。これらを突き詰めていくと、いろいろなことが理解できる。

 なにも、前に向かって突き進むだけが得るための道じゃなんじゃないかな。人は省みることでも多くを学べる。それができるなら、きっと失敗を恐れずに突き進めるはずだ。

 私があのクソプロジェクトで学んだこと。実は、人を許すことだったのかもしれない。

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