同じことを二度言わすな! ~黄門様に学ぶ~
■自ら二度言っとるやんけ
「一度しか言わないからよく聞け。同じことを二度言わせるなよ」
この言葉を皮切りに熱っぽい説明が始まる。まぁ、導入部分だし、そんなピリピリせんでもええやないか。と思いつつ、話に耳を傾ける。しかしよく聞くと、一度しか言わないといいつつ、同じことを繰り返し言っていたりする。たぶん本人、気づいてないだろうな……。
「分かってるか(微キレ)」
……いや、その説明じゃ分からんだろ。ツッコミ入れたい気分をぐっと押さえてキーボードを弾く。横で業務の引き継ぎをしているのを聞いていた。
外にはスズメが飛んでいる。のどかな日の、無駄に熱いワンシーンだった。
■なんで水戸黄門が面白いか
水戸黄門って、何年続いたんだろう。よくも飽きもせず続いてるもんだ。今、続いてるんだっけ? よく知りませんが。日本人なら、この時代劇のストーリーは誰でも知ってるだろう。始まった瞬間に、最後の御老公が高笑いするシーンが思い浮かぶ。
誰に聞いたか忘れたが、人間ってマンネリ化したものに安心感を感じるそうだ。変わらない物に落ち着きを感じるらしい。これが、水戸黄門が長きにわたって愛される理由なのかもしれない。
■よく考えると、2回言わないという大した理由がない
日本人なら、「控えおろーーう!」と聞いただけで、次のセリフはすぐに思い浮かぶだろう。子供のころから何度ともなく聞いてきているので、骨髄反射的にセリフが出てくるはずだ。
よく考えてみると、もったいぶって1回しか言わないより、くどいぐらいに何回も言った方がしっかり覚えるんじゃなかろうか。
確かに、上司が言ったことを一度で完ぺきに理解して自分のものにしてしまう。それができれば、仕事としてはかっこいい。しかし、これができるのは、よほど簡単な業務か、すでに完ぺきに理解していることを言われた場合とかだろう。
どのような内容でも、一度言っただけで完ぺきに理解して記憶できる人はそういない。実際は、夜店で買ってきたヒヨコみたいな感じの人に教えることの方が多いだろう。
■同じ内容を聞くことはある
例えば、Aという説明をうけた。より深く考えて、何らか疑問が浮かぶとしよう。確認のため、同じことを聞かないだろうか。
また、Bという説明を受けた。次にCという説明を受けた段階で、自分の間違いに気づいたとしよう。また、Bについて同じことを聞かないだろうか。
そういうケースも考えられないだろうか? もし、単純に二度同じことを聞かれた時、「分かってない!」と怒りがこみ上げるなら、いったん落ち着くべきです。怒った時点で、説明という繊細な作業はできなくなります。また、100%ではなく、70%は理解していたりすることもあります。怒れば、逆に相手を混乱させたりします。それは、もったいないです。
■黄門様は、ただふんぞり返るだけじゃない
黄門様だって、いきなり印籠を出して権力で押しません。必ず、助さんと角さんに懲らしめていただいてから印籠を出します(個人的には、印籠なしで武力制圧した方が早いと思います)。黄門様は、権力だけでなく圧倒的な武力もきちんと備えているんです。
もし、上の立場から説明する状況にいるとして、相手に何を聞かれても答えられるか。そこは問われます。立場という印籠も、キチンと納得をいかせてから出してこそ、効果があるのかもしれませんね。