その3カ月で何を見る?
■3カ月にちょっと待った!
新しいプロジェクトに入った時、仕事が変わった時によく言われるのが、
「3カ月あれば仕事は覚えられるだろう」
この一言に、私は断固、Noと返したい。3カ月で仕事を覚えられないという理由ではない。見方の幅が狭すぎるからだ。今回はこの3カ月をいろんな角度から見てみたいと思う。
■3カ月という期間でできること
経験上、楽器やダンスなどの習いごとを始めて、慣れてくる期間が3カ月だ。どういうことかというと、素人が楽器を初めてとりあえず1曲吹けるようになるのがだいたい3カ月。だいたいそんな感じです。
そんなことから、3カ月あれば仕事を覚えられるだろう。そう考えられるようになったのだろうか。
しかし、ちょっと待て。なんとかできるようになるのに必要なのが3カ月だ。ここを完璧なプロの仕事ができるようになるのに3カ月、とすり替えてる人をたまに見る。
経験上、楽器やダンスなどの習いごとでは、人前で披露できるレベルに到達するには2~3年は必要だ。早く前線で活躍してほしいという期待感が強すぎると、とんだ計算違いをしたりしないだろうか。
■その3カ月、何をしたのか
“3カ月で仕事を覚えろ”のようなことを言われて、どう動くか。これは重要だ。普通は、言われたことをできるように必死にがんばるだろう。しかし、言われたことしか覚えなかったり、考えずにやり方だけ覚えた。実際そういう人は多い。
確かに、業務を進めるだけなら3カ月でできるようになる。しかし、思索を切り捨てて急いで覚えるので、発想が貧弱になる。普通に業務をこなすだけならさしつかえないが、マネジメントをやり出すとボロが噴出する。なんてこと、ないだろうか。
■まぁ、そんなこと言っても、3カ月でどうにかなることもある
ただ、何も言わず言われた通りのことをやるなら、3カ月とは言わず1週間でどうにかなったりする。
ただ、これをやるなら、相当業務が整理されているか、単純労働でもなければできない。もしくは、もともと似たようなことをやっていたとか。
マネジメントをする人が“指示だけ聞いて動いてくれればいいんだ”と思う気持ちは分かる。でも、これを実行してうまくいってるのを見たことがない。問題があると気づいても、実際に何も言わずに言われたとおりにやるので、問題が放置されることが多い。そりゃ、うまくいくはずがない。
■3カ月がまずい本当の理由
そもそも、入って3カ月で即戦力にならなければならない状況。それ自体がすでにひっ迫した危機的状況だ。これが一番、問題だと思う。
実際にあったことだが、“1カ月で仕事を覚えてくれ”という要求を出されたことがある。しかし、ふたを開けてみると、要求を出した人自体が業務を把握していなかった、ということもあった。プロジェクトを管理している人が把握できていない業務なので、“覚える”というより、“どうにかしてくれ”が実情だった。敗戦直前の日本にそっくりだった。
3カ月で要求されたものが、3年あってもできないようなことだったりと……。
新人に無茶を言わざるを得ないのは仕方がない。しかし、当然のような顔で「プロなら3カ月くらいでどうにかするものだ」と言うのはいかがなものであろうか。当時、非常に呆れたのを覚えている……。
■個人的に思う期間
新しい仕事に就いて、不安を抱くことなく仕事ができるようになるには、半年~1年、その道のプロとして通用するようになるには3~5年。現実的にはそんなところじゃないかと思う。もちろん、それぞれの資質もあると思う。
急ぐ気持ちを抑えて、タイムスパンを見直してみてはどうだろうか。地道に不安を取り除いたり、疑問に答えるだけでも、人って案外伸びてくれます。
時間に対するこだわり。これで人間関係で損をして、できるものもできなくなってはいないだろうか。