いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

おっちゃん、これ、パソコンっていうんだよ

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 パソコンが普及し出して十何年経つだろうか。もう、一家に1台レベルで普及してるくらいの勢いだ。いまや、家電量販店に行けば、さまざまなパソコンが並んでいる。最近のパソコンは性能がいいし、値段も手ごろである。

■広まってはみたものの、はてこれはなんじゃろうか?

 パソコンが広まったこと。これはわたしにとっては嬉しいことだった。でも、よく考えてみれば、パソコンって家電なんだろうか? もともとは事務機器じゃなかったっけ?

 家電といえば、コンセントに繋いで、ボタンをちょんちょんと押すだけでほぼ思いどおりに動いてくれる。パソコンもそんな感じで動いてくれると、そんなイメージを持っている人が多かった。

 以前、パソコンの出張サポートをしていて、そう感じた。普及したはいいけど使いこなせない人が多い。その理由の1つがこれじゃないだろうか。

■何でそうなったんだろう。考えてみた

 まず、CMの影響が大きいような気がする。テレビでやっているパソコンのCMって、簡単に扱えて何でもできる魔法の箱! みたいな雰囲気を漂わせている。夢は膨らむけど、何か違和感。実際は、根気よく餌付けしないとなついてくれない野犬みたいなもんだぞ、と。

 使う前にごちゃごちゃ設定が必要だったり、アップデートやデータのバックアップやらメンテナンスが必要な上、ひょんなことでトラブルが起こる。CMの内容と現実との隔たりが、かなり大きくはなかろうか。

 CMのおかげで、パソコンの普及には成功したと思う。しかし、間違ったイメージも同時に広まったように思う。

■魔法の箱の中身

 パソコンは確かに魔法の箱かもしれない。とんでもなく難しい計算も難なくこなしてくれるし、世界中の情報も簡単に入手できる。やろうと思えば、絵を描いたり音楽を作ったりもできる。前世紀では想像もつかないようなテクノロジーが満載だ。

 しかし、よく考えてくれ。ゲームの中でさえ、魔法を使うには経験値を積まなきゃ覚えないし、使うたびにMPを消費する。現実に魔法の箱を使おうと思えば、このくらいの労力や調べごとは必要なのではないだろうか。

 仕事柄、年配の方からパソコンの使い方について聞かれることがある。どうも、思ったように動いてくれないとのこと。そして、CMで見たイメージやお店の人から聞いた話を教えてくれる。

 それを聞く度に頭に浮かぶ言葉がある。それが、

 「おっちゃん、これ、パソコンっていうんだよ」

の一言だ。指先1つで思いどおりに動いてくれる便利な機械ではない。的確に指示を出さないと動いてくれないひねくれたコンピュータである。

 パソコンがどういうものか正しいイメージが広まっていれば、もっと多くの人が使いこなせていたかもしれない。そして、IT系の管理業務も、もっとやりやすくなったのではないだろうか。

 きれいな女優さんが、今日もCMで流ちょうにPCをいじり回していた……。

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