町工場から大企業、そして派遣社員も経験した現役派遣社員の壮絶体験

ホワイトな大手企業へ転職!その70 正社員たちからも慕われいた唯一のアルバイト。。。

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いやぁ、、、、派遣社員てほんとにいろんな人が居るよ。しかし、こんなどうしようもない派遣社員の中でも一人だけ正社員全員から慕われている人が居た。彼は派遣社員ではないのだがアルバイトで勤務していた人だ。小柄で40代後半、滝口さんという人で社員の人たちからは「タキちゃん」と呼ばれていた。彼の仕事は私たちが生産した材料を次工程へと運搬する仕事だ。手押しの大きな台車を使って完成した材料を積んで次工程へ運んでいく、かなりの重労働だ。そんなことを一日中やっているんだからね。それだけならどこにでも居るアルバイトなんだけど、このタキチャンはちょっと違っていた。

どのようにかというと、非常に不潔だったのだ。作業着も汚れているのに洗濯に出さない(作業着は会社で無料でクリーニングしてもらえる)。昼食のときなどもポロポロと食べ物をこぼす。まわりの人たちから「タキちゃん!ポロポロこぼすなよ、きたねえな!」なんて怒鳴られても「ウフッ、ウフッ、」ってニコニコ笑う人であった。材料を取りに来ると私が動かしている装置を見ながら「これ、見てると面白いね。」ってニコニコしながら装置を見ている。あるときなど台車で荷物を運んでいるときに、荷物の裏に隠れていて突然現れて「見ーつけ!」なんてことをしたり。材料を全然運びに来ないなあと思っていたら、最上階の喫茶店に設置されている大型テレビで「水戸黄門」を観ていたりとかね。

それでも課長は「タキちゃんが水戸黄門観てたよ」ってゲラゲラ笑うだけであった。そして帰りには他の社員の靴を間違えて履いて帰ってしまったりとか。このような人柄でも何故かみんなから慕われていたのだ。それは、根は優しく真面目だったからだ。一度も休まない。そして非常に優しいのだ、どのようにかというと社員が体調不良などで休んだ後に出勤してくるとその社員のとこに行って「大丈夫?良くなったんだね。」とかその言い方もすごく気持ちがこもっていて相手に安心感みたいなものを感じさせてくれた。そしてアルバイトなのに10年以上勤務している。だからベテラン社員や管理職たちからの信頼もあったのだろう。

当時勤続1年程度の私たちに比べたら大先輩だしね。若い年下の社員たちからも「タキちゃん!」って慕われていたのだ。私が結婚したときもわざわざ私の装置のとこにまで祝福しに来てくれた。「田中さん、結婚おめでとう!よかったね」「タキちゃん ありがとうございます!」「これからも頑張ってね!」「もちろんですよ!」「俺もさ、昔は結婚してたんだよ」って初めてタキちゃんがバツイチだってことをこのときに知ったのだ。そんなタキちゃんともお別れのときが来た。景気は良かったのだがバイトの人員削減ということでバイトの人たちは解雇されたのだ。しかし、タキちゃんだけは解雇されずに別の職場へ移動ということになった。これは課長の粋なはからいだ。

そして係の朝礼で班長からタキちゃんへ挨拶をするように促された。照れくさそうに挨拶をするタキちゃん。約13年こんな会社に俺は居たけど、先にも後にもバイトの人が正社員連中を前にして移動の挨拶をしたのはタキちゃんだけであった。それほどみんなから慕われていたのだ。タキちゃんの存在感は仕事でも凄く貴重であった。タキちゃんが居なくなった後、社員が二人でタキちゃんの仕事を後任することになったのだが、それでもタキちゃん一人の方が全然早かったし正確に材料を次工程へ送り届けていた。何が言いたいのかというと、一見気持ちよくスイスイ泳いでいるアヒルだってさ、水の中では必死に両足を動かして前へ進んでいるってこと。どんな仕事でも楽な仕事はないってことです。そしてトップが居なくなると組織はガタガタになるのは当たり前のことだが、アルバイトが一人抜けただけでも職場内にもの凄い影響が出るということですね。今でも御健在なら70歳を過ぎていると思います。どうか元気で居てくれますように。

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