レインメーカー (9) テスとレインメーカー
「悪く思わないでくれ」椋本が申しわけなさそうな顔で言った。「コールセンターには、不特定多数の個人情報が集まる。各CC の社員は自ユニットの情報にしかアクセスできないが、システム部門は横断的にアクセスできる。採用時に所定の調査を行うことになってるんだよ」
過去に、システム部門としてのアクセス権を利用して、数万件の個人情報を持ち出し、その手の業者に売却した不届き者がいたことで、厳格になったのだそうだ。懲戒免職になったという、顔も名前も知らないアホをイズミは恨んだ。
「じゃあ私のことも?」田代が訊いた。
「もちろん」椋本は頷いた。「もし君が、流出事件を起こしたことがあるとか、ギャンブルに狂って借金抱えているとか、人妻と不倫したとか、そんな過去があったら採用されてないよ。ここにいるってことは、たとえ2 つや3 つの失敗があったとしても、問題ないと判断されたってこと」
田代が狼狽したように目を泳がせた。といっても、会議室にいるのはこの3 人だけだ。打ち合わせが終わり、参加者がそれぞれの部署に戻っていく中、田代とイズミは、椋本に呼び止められて残っている。
「朝比奈さんもだよ」椋本に言われ、イズミはビクッと肩をすくめた。「今、ここに座っているということは、調査の結果、問題となるような過去が見つからなかった、ということだから、心配しなくてもいい」
田代が好奇心と不信を感じているのがわかる。問題となるような過去ではない、と言うが、根津副部長は明らかに問題視しているではないか、とでも考えているようだ。
「本来、あんな形で社員の過去を口外することなどあってはならんことだった。その件は謝罪する。申しわけなかった」
椋本は立ち上がると、イズミに向かって深々と腰を折った。それを見たイズミは、ようやく顔を上げると、小さく首を横に振った。
「名古屋CC は、ここ何年か大型の新規案件を何度も落としていて、根津の奴も少し焦っている。QQS 案件は長年、名古屋営業がアプローチを続けて、ようやく実を結んだから、絶対に失敗したくないんだろう。言い訳にしかならんが。後できつく言っておく」
椋本はもう一度頭を下げると、田代に向きなおった。
「聞かなかったことにしてくれ、とは言えないがね。朝比奈さんが話したくないのなら、無理に訊いたりするのは厳禁だ。いいかね」
田代が頷くと、椋本は立ち上がった。
「じゃあ私は行く。とにかく新システムの件はよろしく頼む」
椋本が会議室から出て行くと、気まずい沈黙が降りた。とにかく何か言わなくては、でも何を言えばいいのか、とイズミが言葉をあれこれ吟味していると、意を決したように田代が笑いかけた。
「まあ失敗しないエンジニアなんていないよな。俺だって前の会社じゃ、それなりに失敗してるよ。2 年目のときだったかな。AS/400 のシステムで......あ、AS/400 って知らないかな。とにかく、中部地方のある会社の給与計算システムで、バグ出しちゃってね。もう少しで月次処理に影響出るところだった。部長がクライアントに謝りにいったぐらい大事になったよ。ありゃあヤバかったな」
「......」
「そういや、退職した理由って言ってなかったか。実はプロジェクトのヤマ場で、なんとコロナにかかっちゃって。二週間、仕事ができずに大きな穴を開けたんだ。そんなの感染するわけないだろ、って、平気であちこち外出してたし、マスクは布マスク、手洗いもいい加減だった。俺の穴を埋めるために、何人かが無理な出勤をして、身体を壊して、結局、カットオーバーが大幅にずれこんだし、納品したシステムも仕様漏れがボロボロあってな。PL だったから責任を取らされたってわけ」
田代は豪快に笑った。
「だから、なんだっけ、レインメーカー? それが何のことだか知らないけど、過去は過去ってことで気にすることはないんじゃないかねえ。俺はそう思うけど」
そう言われてもイズミは安心とはほど遠い心境だった。田代が期待するような目を向けている。俺は過去のトラブルを打ち明けた。君はどうする? と言葉に出さずに問いかけているのがわかる。これは控えめに言っても強要でしかない。とはいえ、イズミには田代の心情も痛いほど理解できた。実質的なリーダーとして、不安要素があるなら早い段階で知っておきたいと思うのも当然だ。
ここで無言を貫き通すわけにはいかない。等価交換は最低限のルールだ。動機はともかく、田代が過去の失策を話してくれたのは事実だ。イズミも話すのが筋というものだ。では何を話せばいいのだろう。
イズミは『テス』という昔の映画を思い出していた。ヒロインのテスには、若い頃に遠い親戚の男と関係を持ち、子供を出産するが病気で亡くす、という暗い過去がある。数年後、テスは牧師の息子と恋に落ちるが、その過ちを打ち明けられないでいた。結婚式の夜、牧師の息子は過去に商売女と関係があったことを告白し、テスに許しを請う。テスも自分の過去の出来事を話すが、牧師の息子は花嫁が純潔でなかったことに衝撃を受け、かつ許すことができず、テスの元を去ってしまう。
田代も同じではないのだろうか。イズミの心は千々に乱れた。私の話を聞いたら、自分のトラブルとは次元が違う、と、やはり拒否反応を示すのではないか、と考えずにはいられない。適当な作り話でごまかすか。いや、そもそもシステム開発関係のトラブルをでっち上げられるほど、イズミには経験が足りない。ウソをついたとわかれば、やはり信頼を失うことになるだろう。
イズミはため息をひとつつくと口を開いた。
「私のは、その、トラブルというような話ではないんです」
「というと?」
「長い話ですが、できるだけ簡単に話しますね」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
イズミの母親はイズミが6 歳のときに病没した。3 年後に父親は再婚した。継母は若く美人だったが、子育てに熱心な女性ではなかった。イズミのことを虐待したり、育児放棄したりするようなことはなかったが、必要最低限以上に関わろうともしなかった。財布の紐が堅い女性でもあったので、同級生が気軽に買ってもらっている文房具ひとつでさえ、イズミは軽々しく要望してはならない、ということを小学生のうちに学ばざるを得なくなった。何度かの失敗を繰り返した後、慎重に購入計画を立ててノートに記録しておき、継母の機嫌が良さそうなときを見計らって、まとめて買ってもらう、という方法に切り替えた。
重要なのは継母の感情を正確に見極めることだった。イズミは継母の表情を観察することを学習し、中学生になる頃には、目の開き具合、口調、身振り手振り、足取りから、かなり正確に継母の精神状態を推察できるようになっていた。
高校を卒業する頃には、その能力にはさらに磨きがかけられていた。スマートフォン、メイク、服や靴やアクセサリーなど、高校生活を過ごすのに必要なコストは、毎月のお小遣いだけで充当できるものではなく、継母から固定費以外の雑費を引き出すことが必要だった。
大学に進学し、自由にバイトができるようになったことで、イズミの能力はしばらく封印状態となる。封印が解かれたのは2 年生のときだった。映画サークルの友人が付き合っている男の態度が気になったのがキッカケだった。イズミはその男性を何日かさりげなく観察し、何度か言葉を交わした結果、金銭や異性関係の点で友人に不誠実であるとの結論を得た。そのことを告げたときに男性の顔色がさっと変わったことで、イズミは継母以外の人間に対しても、鍛えた能力がある程度有効であることを知ったのだった。
ただ、それはイズミの学生生活を豊かにしたわけではなかった。件の友人は男性と別れることになり、その原因はイズミにある、と非難したのだ。いくつかの人間関係にひびが入り、イズミはサークルを辞めることになり、当時、付き合っていた恋人もほどなく離れていった。それ以後、イズミは誰かと一緒に映画を観たことがない。
卒業後、イズミは都内のシステム開発会社に就職する。技術職として入社したはずだったが、営業部門に配属となり、営業のアシスタントを命じられた。課長はジョブローテーションを理由にしたが、本当の理由は自分の性別が女性だからだということはすぐにわかった。
そもそも人付き合いがあまり得意ではないイズミは、営業という仕事にモチベーションを抱けず、それはすぐに仕事にも現れた。営業部門の男性社員に蔓延するオラオラ系のノリも、女性社員が身にまとうサバサバ系のノリも、どちらにも馴染めなかった。課や部の飲み会(様々な口実で毎週のように実施された)で上司や先輩に酌を命じられればあからさまに嫌な表情を浮かべて、場を白けさせてしまう。クライアントの接待に同行させられ、カラオケでデュエットを命じられれば、肩を抱かれた途端に悲鳴を上げて機嫌を損ねてしまう。
イズミは次第に「空気が読めない奴」として認知されるようになった。そして並行してついた二つ名が「雨女」だった。
最初はクライアントを交えたゴルフコンペだった。欠員が発生したため前日にイズミが加えられた。週末の降水確率は10% だったというのに、当日の朝から小雨がパラつきだし、9:00 のスタート時には土砂降りになっていた。内心安堵したイズミとは対照的に、営業課員たちは大いに失望した。ボウリングに切り替えられたものの、今ひとつ盛り上がりに欠け、13:00 に解散になる頃、空はウソのように晴れ上がっていた。
次は定期的に開催されていた営業課の親睦BBQ だった。イズミは口実を設けて欠席していたが、その土曜日は課長に強く言われていたこともあって渋々参加することになっていた。始まったときに快晴だった空は、30 分もしないうちに曇りだし、すぐに雨が落ちてきた。屋根があるBBQ 場だったが、真夏だというのに気温も23℃近くにまで下がってきたため、薄着だった参加者は次第に会話も途切れがちになり、予定よりも早く解散となった。
同様の状況が何度か連続すると、イズミがゴルフコンペのメンバーに加えられることはなくなったし、課のレクリエーションにも参加を強制されることがなくなった。
ようやく会社もイズミが営業には不向きだということを認識してくれたらしく、社内での事務担当に回された。そして次の4 月、開発部門への異動が発令されることになった。これでやっと周囲に迷惑をかけることもなく、自分が我慢することもなく仕事ができる、と喜んだイズミだったが、その思いはすぐに打ち砕かれることになる。
イズミの部署では、長い付き合いのあるクライアントから、コーポレートサイトの大規模リニューアルの仕事を受注する予定だった。2 年おきにサイトを更新している中小企業で、これまでずっとイズミの会社に発注されていた。内々にリニューアルの内容なども得られ、担当者レベルではスケジュールの打ち合わせも進められていたから、発注手続きはほとんど形だけのものになるはずだった。開発の仕事や手順を体験するにはちょうどいい規模だ、ということで、イズミがメンバーに加えられた次の日、クライアントからの一本の電話が部署全体をパニックに陥れた。
クライアント社内の受発注プロセスが全面的に見直しされ、発注先の無条件指定が原則不可となったのだ。一定金額を超える発注は、役員レベルでの承認が必要となる。稟議には発注先の選定理由が必須となり、詳細な見積が求められるから早急に提出してほしい、とクライアント担当者は申しわけなさそうに付け加えた。そうですね、遅くとも今週中にはいただきたい。いえ、今日が木曜日だということは承知していますが、そう決まってしまったので。
プロジェクトリーダー以下、メンバーは蒼白になった。長年の関係に甘えて、見積は常に「一式」で提出するのが常だったからだ。全員が他の業務を放り出して、見積算出作業にかかりきりになった。例外は右も左もわからず、戦力にならないイズミだけだった。ムダに時間外労働をつけるわけにもいかず、イズミは定時で帰宅した。メンバーの視線が背中に突き刺さるのを痛いほど感じながら。
見積は期限内に提出できたものの、受注には至らなかった。クライアントの情報システム担当役員から、見積の矛盾点や曖昧な点に対する指摘が入ったためだ。確実視されていた受注を逃がしたことで、何人かに処分が言い渡された。誰かが責任を取らなければならなかったのだ。営業担当にはクライアントの社内状況把握を怠ったという理由で、プロジェクトリーダーにはクライアントと長年にわたってなあなあな関係を続け、正確な見積を出していなかったという理由で。サブリーダーや主要メンバーにも、職責を全うできなかったという理由で始末書の提出が命じられた。お咎めなしなのはイズミだけだった。
それだけなら、運が悪かったな、ですんだところだが、不運は続いた。すでに発注書を受け取り、開発がスタートしていた案件が、大幅に規模を縮小することが決まったり、担当SE の要件定義が不足していてスケジュールに大きな遅延が発生したり、ささいな伝達ミスからクライアント担当者を怒らせてしまい案件が中止になったりと、トラブルが頻発するようになった。いずれもイズミが担当に加わった直後のことだ。ひとつひとつは、ありがちな出来事ばかりだったが、連続したことでイズミは白眼視されることになる。新たな異名が「レインメーカー」だった。エンジニアが、実は営業以上にゲンを担ぐ職種だと、イズミは初めて知った。
イズミはどのプロジェクトにアサインされることもなくなり、交通費の精算や、稟議の代行などの雑用ばかりを命じられることになった。イズミのメンタルは次第に傷だらけになっていった。誰も面と向かってはイズミを非難することはなかったが、イズミには他人の感情を敏感に察知するという能力がある。朝の挨拶をするたびに相手が笑顔の裏で舌打ちしているのが察せられ、イズミが退勤すれば残業する社員が一斉に安堵する空気を感じてしまう。これではまともに働くことはできない。
一年も経たないうちに、イズミは課長に退職希望を告げた。形ばかりの慰留さえ行われることがなく、手続きは異例のスピードで進められた。無職になったイズミは自宅に引きこもるようになり、ようやく立ち直りかけたときに、コロナ禍が社会に襲いかかった。その影響もあって、イズミの再就職は思うように進まなかった。まるでイズミが仕事をするのを妨げるために、コロナウィルスが登場したかのようだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
話を終えたイズミは、田代の反応を窺った。田代は腕を組んで天井を見つめていた。イズミの話をどこまで額面通りに受け取っていいのかと考えているのがわかる。
「レインメーカーって」田代が慎重な口調で言った。「雨女って意味?」
「そういう意味もあるらしいです」イズミは答えた。
「というと、違う意味もある?」
「レインメーカーという映画があるんです。アメリカの法廷ものなんですが。原作によると、レインメーカーというのは、事務所に雨のようにお金を降らせてくれる敏腕弁護士のことらしいんです。そっちの意味だと良かったんですけど。私の場合は、なぜかトラブルばかり呼び込む厄介者、という意味で使われていたんです。レインブリンガーって呼んでた人もいましたが、最終的にはレインメーカーに落ち着いたみたいです。どうでもいいことですけど」
「話を聞いた限りだと、朝比奈さんが何かしたわけじゃなくて、元々、そうなるはずの事例に、たまたま朝比奈さんが絡んだってだけなんだよね」
「事実だけ見ればそうなんです」イズミは嘆息した。「でも一方で、私が絡んだ案件ばかりでトラブルが続いたのも、確かな事実なんです。科学的に因果関係が立証できなくても、あいつは関わらせない方がいい、って思われても仕方ないです」
「根津さんはQQS 案件で、その、レインメーカー現象が発現するのを心配したわけか。だからあんなことを」
「はい。田代さんはどう思いますか。私がQQS 案件に関わらない方がいいんでしょうかね」
答えにくい問いだ、とわかってはいたが、イズミは訊かざるをえなかった。肯定されれば、それを黙って受け入れるつもりでもいた。だが、田代は少し悩んだ素振りを見せただけで「バカバカしい」と切り捨てた。
「偶然が重なっただけだろう、そんなの。そもそも、見積をいい加減に作ってたなんて、どう考えてもPL の怠慢じゃんか。そんなのいちいち気にしてられないよ」
「でも根津さんが......」
「椋本さんが言ってたじゃないか。問題があると判断されてたら採用されてないって。採用されたんだから問題はない。俺もそう思う。俺はどっちかと言えば冷たい人間だと言われるんだけど、迷信やジンクスを信じて人を遠ざけたりはしたことないぞ」
「ありがとうございます、と言っておくべきでしょうか」
「それより俺が気になったのは、もう一つの話だよ」田代は躊躇いがちに言った。「その人の感情が読めるってやつだけど......」
「ああ。読めるわけじゃないんです。感じられる、というだけで。それも曖昧で。ジョジョのスタンドで、イエスかノーで答えられる質問だけ相手の心が読める、みたいなやついますよね。あんな風に明確な答えが得られるわけでもないんです。あ、この人、ウソついてる、とか、全部話したわけじゃない、とか、その程度なんです」
それを聞いた田代は、ハッとイズミを見返した。イズミは頷いた。
「たとえばさっき、田代さんが退職された理由を話してくれました。それがウソじゃないことはわかりましたけど、何か省略したな、ってこともわかるんです。でも、何を省いたのかまではわかりません。あ、心配されなくても、それが何だったのか教えてくれ、とは言いませんから」
「......」
「それに」イズミは弱々しく笑った。「最近はコロナでみんなマスクしてますよね。あれだとわからなくなるんです。自分でも説明できないんですけど。目を見れば心を読める、なんてことはなくて。あまり親しくない人だと、話しているのを、ある程度の時間、見ないと何もわからないんです。この会社はフェイスシールドなんで感じやすいですけどね」
「そのことも調査されたのかな」
「どうでしょうね。今まで人に言ったことはないので。でも椋本さんは何となく気付いているような気がします。だって、何のスキルも実績もない私が採用された理由が、他に思いつかないんです」
「なるほど」合点がいったように田代は大きく頷いた。「たぶん、面接のときに何かあれ、と思ったのかもしれないな。単に勘のいい奴だ、ぐらいのことだったのかもしれないけど、何かの役に立つかもしれんな、とでも思ったかな」
「私自身は緊張してて、何話したかも憶えてないんですけど」
「そりゃ俺だって同じだよ」
「田代さんも緊張するんですか」
「するよ。するね。うちの嫁に欲しいものを買っていいかお伺いを立てるときなんか、もう手が震えるほど緊張するね」
イズミは思わず笑った。田代も太い笑い声を上げたが、すぐに真面目な顔になった。
「とにかく話してくれてありがとう。俺は気にしないから、もちろんQQS 案件も一緒にやってもらいたい。ただ、確かにエンジニアには縁起を担ぐ奴もいるから、レインメーカー現象は新しいメンバーには黙ってた方がいいかもなあ」
「もちろん自分から言うつもりはないんですが」
「ああ、根津さんね。椋本さんから釘をさしてもらえば大丈夫だと思うよ。何より、QQS 案件を見事に成功させてみせることが、レインメーカー現象なんて単なる偶然の一致だったって証明することになる」
安堵のため息とともにイズミは頭を下げた。田代の返答によっては、また転職サイトに登録し直さなければならない、と覚悟していたのだ。
「もう一つの方もなおさらだな。頼むから、俺の心はあまり読まないようにしてくれよ。入社式の日にも言ったけど、俺の言動は結構、ハッタリが多いんだ」
「心得ておきます」
「よし、じゃあ戻ろうか」田代は立ち上がった。「俺たちは当面、宇都さんへの対応で手一杯になるからな。ジンクスや得体の知れない特殊能力なんか気にしているヒマはない」
二人は揃って会議室を出た。
田代さんが、いい意味で単純な人でよかった、とイズミは歩きながら思った。そして、全てを話していないのが田代だけでなく、イズミもそうであることを知っても、同じ態度を取ってくれるだろうか、とも考えた。
(続)
この物語はフィクションです。実在する団体名、個人とは一切関係ありません。また、特定の技術や製品の優位性などを主張するものではありません。
コメント
匿名
金の雨が降る方じゃないのか
匿名
細かいことですが、「ボウリング」だと思います
加納
レインメーカーって、あの組織と関係がある、とかではないのか。。
侘助
筒井康隆の小説に出てくる読心能力者の七瀬さんを思い出してしまった。
心を読んでしまうことで、行く先々で亀裂や事件を起こしてしまう。
これは番外編で超能力者として覚醒するフラグ?(期待)
匿名
Holeつながりで穴掘りに行ったのかもしれん
ななし
ふしぎトーボくん
匿名
宇都がポルポでないことを祈ろう
リーベルG
匿名さん、ありがとうございました。
「ボウリング」ですね。
匿名
テスの話が出て、正直ビックリしました
映画のナスターシャ・キンスキーの美しさも儚さも見て、小説を読んで嗚咽をするような、私には遺恨を残したいわく付きの作品です
レインメーカーの謂れが、げん時点で不幸でしかないですが、
リーベルGさんなら、希望を産んでくれる展開なんでしょうね(笑)
匿名
語源のレインメーカーの方だったか。隠している事実が何かあるにしても。
結末は金になる方だと良いのかしら。
(Q-llic絡みなので結末はモヤりそうだなぁ)
たむたむ
隠し事について
田代⇒実は前職で暴力沙汰を起こした
イズミ⇒解離性障害(変身中の記憶は無い)
…と夢想。