思考を止めるスタンド攻撃
誰かを応援するときに自然と「がんばれ!」と口にしてしまうヒトも多いだろう。しかし世の中には、このコトバを自在に操ってヒトの思考を止めてしまう邪悪なスタンド使いがいるのをご存知だろうか?
(いや、失礼。山手線にジョジョのラッピング電車が走っていると聞いて、見たさのあまりに動揺して、「スタンド攻撃」とか口走ってしまったようだ。気を取り直して話を進めよう。)
■負のチカラを秘めた「がんばれ」
『がんばる』には、大辞林によると「困難に耐えて努力する。自分の意見を強く押し通す。」といった意味がある。
これらの意味からは、悲壮感や視野の狭さといったネガティブなニュアンスが滲み出ている。私が「がんばれ!」といわれたときに感じる違和感は、そんなニュアンスを嗅ぎ取ってしまうためなのかも知れない。
■思考を止める邪悪なスタンド攻撃
もちろん、仲間を応援するのはごく普通の感情であり、円滑なコミュニケーションのためにも必要な要素のひとつだ。そのときに使われるコトバとして「がんばれ!」が広く一般に定着していることは事実だ。
しかし、そこで何気なく「いいから」「とにかく」「余計なことは考えずに」というコトバがセットで使われることがある。これが問題だ。
このセットは、同僚や部下が疑問や不安、あるいは提案を持ちかけたときに、それに対して返されるコトバとしてよく使われる。
これこそが思考を止める魔法のコトバであり、邪悪で危険なスタンド攻撃なのだ。「いいからがんばれ!」「とにかくがんばれ!」「余計なことは考えずにがんばれ!」
■目的はがんばることではない
上司にそんなコトバを掛けられたら、なかなかそれに反抗するのは難しい。しかしよく考えてみよう。目的はがんばることではない。いい仕事をして結果を出すことのはずではないか。
そのために必要なのは、工夫だ。工場のラインのような単純な流れ作業の中からも、工夫をこらしたカイゼンは生まれている。我々IT業界の、システム構築・システム開発の現場に改善の余地が残っていないなんてことがあるだろうか?
『工夫』を大辞林で調べると、「いろいろと考えて、良い手段を見いだすこと。」と書かれている。また、『功夫』という字が当てられていることもある。カンフーだ。カンフーというと中国拳法を連想し、色々な型を繰り返し繰り返し練習して覚えている情景を思い浮かべてしまうが、その本質は単純な繰り返しの中にも、そこから何かをフィードバックして工夫をするということなのだろう。
■ちょっと待て、そのがんばりが傷口を広げる
我々に必要なのは、思考を止めるがんばりではなく、常に考え続ける工夫なのだ。職場で誰かが現状に疑問を投げかけたり、その職場の常識と違う考え方を発したなら、それは排除すべき異物ではない。カイゼンをもたらす工夫の芽かもしれない。
思考を止める頑張りは途中で誤りをフィードバックできないので、大きな事故につながりやすい。思考を止めず、常にフィードバックをかけて工夫を心がけてこそ、いい仕事ができるというものだ。
あなたはがんばることに満足していないだろうか。ひょっとしたら、それは思考を止める邪悪なスタンド使いの術中にはまってしまっているのかもしれない。
コメント
ardbeg32
アレですか、ゼークトの「無能な働き者」。
UPSにUSBケーブルが刺さっていなくても「そういうものだと思ってました」と何の疑問も持たない人って結構いるんですよね。理由があってそうしてるならともかく、「何故そうなんだろう」と常に疑問を持って欲しいのですが、本人の資質っぽいですね。
onoT
「無能な働き者」は勝手に考えて勝手に行動するので、それはそれで困ったものですが、ここでテーマにしているのは、言われたことを言われた通りに、何の疑問も持たずに遂行させようとするパターンです。
前者は本人の問題ですが、後者は外部の圧力で思考停止を強要させられるという問題がテーマです。
「無能な働き者」もテーマとして魅力的なので、そのウチ書いて見たいですね!
ardbeg32
先のUPSの例では、「業者にUPS発注して設置してもらっておいて」と指示すると、確かにUPSは設置されているのですがキットに入ってたUSBケーブルは放置したまま。
「設置する」というコマンドは確かに言われた通り実施しているのですが、箱にケーブルが余ってたら「何故なんだ?」とマニュアルぐらい読めよと。
「いや、業者の人がケーブル置いていったからそういうものかと・・・」
昨日今日IT担当になったのならともかく、10ウン年選手がこれなんで、そら会社が効率化されてないのも無理ないなとorzになった次第です。
onoT
なるほど、そのパターンはゼークトでいえば「無能な怠け者」ですかね。
命令したことしかやらないので、事細かに指示を出し続けざるを得ないですか。。。
自分で考えるように仕向けながら、細かく指示してこまめなチェックが欠かせないパターンですね。
ardbeg32
「怠け」というのは、すべきことがわかっているのにやらないことかと考えます。
すべき事自体が思いつかないのは、本人の資質かと思われます。
USBの例では、設置までははりきって仕事をしてますし、空き箱の片付けや設置のために移動させたサーバーの置き直しなども張り切って仕事をする実に「働き者」なのです。
しかしコントロール用のUSBは繋がないし、置き場所がないからとUPSを机の上に設置して耐震対策しないなど、実に無能な働き者ぶりを発揮してくれます。
すべきことがわからないこと、わからないことがわからないと気づくこと、置き場所がないならなにか工夫すること、なぜUSBケーブルがあまるのか疑問に感じること、これは本人の資質かと考えます。
これこそが実はスタンド攻撃なのやも知れませんが。
onoT
1年目の新卒ならともかく、IT担当10年選手でUPSコントロール用USBを繋がないとか耐震対策をせずに仕事を終わらせてしまうというのは資質というよりも勉強不足=怠けなのかな、と思った次第で。
でも、身近で仕事をしていらっしゃるardbeg32さんが資質と考えるということは、何事につけそのような行動をされていて、何度注意しても改善されないということなのでしょうから、そうなるとやはり資質を疑いたくもなりますね。