「生活イチバン、ITニバン」という視点で、自分なりのITを追及するフリーエンジニアです。ストレスを減らすIT、心身ともにラクチンにしてくれるITとはどんなものかを考えていきます。

今、そこにある職場のエネルギー危機

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 多くの組織で、イノベーションが叫ばれている。しかしイノベーションを起こすには、大きなパワーが必要だ。そして、一部の幸運な組織を除いて、イノベーションを必要とするのは苦しい現状をなんとか打破しようとあがく組織であることが多い。

 ところが、そこにはパワーを生み出すエネルギーが足りない。なぜなら、そのような組織には、疲弊しエネルギーが枯渇した状態のメンバーしか残っていないからだ。今回のテーマである職場のエネルギー危機とは、ヒトの活力の源としてのエネルギーが不足していることを指す。

■イノベーションを起こすエネルギーとは

 肉体的なエネルギーは、食事をすれば補給できる。そしてそれは、今の日本ではどちらかといえば余分に摂りすぎているほどだといえるだろう。

 しかし、イノベーションに必要なエネルギーは精神的なものだ。これは日々の仕事の中で常に消耗し続けているにもかかわらず、なかなか十分な補給ができていないのが現状ではないだろうか。

■エネルギーはどこからやってくるのか?

 オリンピックなどの国際的な舞台でスポーツ選手が活躍する姿を観て「勇気をもらった」「元気をもらった」と感じるヒトも多い。その時、我々は精神エネルギーを補給しているのだ。 

 休日に旅行に出かけ、きれいな空気、美しい景色、美味しい食べ物を堪能し「あぁ、これでまた明日から頑張れる!」と気持ちを切り替える。それもまた、精神エネルギーの補給だ。

 しかし、そんな特別なときだけではない。日常の中で、何気なく交わされる言葉、態度、行動。そういったものが、精神エネルギーには大きな影響を与える。行き詰まったときに、上司や同僚から絶妙なタイミングで声をかけられて、気分がふっと楽になったり、自分の仕事に対して感謝のことばをかけられたりすると、それだけで直前までの苦しかったことなどチャラになるほどエネルギーが満ちて来ることだってある。

 さらには、暑い日のアイスの差し入れには、その場の何人ものエネルギーを一気に回復する魔力がある。こういうことは、鼻先に人参をちらつかせるあざといやり方だろうか? もちろん、モノだけでなんとかしようと思っているなら、それは確かにあざといことだろう。しかし、心がこもっているなら、それは受け取る側に伝わる。だからこそエネルギーは回復するのだ。

■エネルギーはどこに消えるのか?

 反対に、たったひとことの不用意なとこばに、ヒトは簡単に傷ついてやる気を失う。また、意思疎通がうまくいかない苛立ち。メンバー間での意識のズレ。組織の方向性に対する疑問。こういったものは、ひとつひとつは些細なことかも知れない。しかし、そのすべてが積み重なって、確実に精神エネルギーを削っていく。月曜から金曜まで、それは絶え間なく降り積もっているのだ。

 さらに、うまくいっていない組織の場合、うまくいっていないという事実だけでもメンバーの精神的なエネルギーを消耗させているのだ。それに追い打ちをかけるように、上司からは厳しいことばが降り注ぎ、部下からは恨みや愚痴が溢れ出す。そんな職場にイノベーションを起こすパワーなど残っているわけがない。

■エネルギーを持った人は、どこに消えるのか?

 そんな組織の中にも、エネルギーを貯めるのがうまいヒトもいる。そういうヒトは、組織内でイノベーションを起こそうと行動する。しかし、組織全体をイノベーションに巻き込むのに必要なエネルギーは膨大なものだ。変化を嫌うメンバー全員のエネルギーを上回るパワーが必要となる。ひとりで貯めたエネルギーで、それを賄うのは至難の業だ。

 だから、そういうヒトは、精神的なエネルギーに満ちたメンバーが多い、イノベーションの起こしやすい組織を求めて去ってしまう。こうしてイノベーションが必要な組織にはそれができるヒトが残らず、一部の幸運な組織にエネルギーが集中することになる。

■精神エネルギーを自家発電しよう

 疲弊してエネルギーに乏しい組織ほど、一発大逆転を夢見てイノベーションを求めたがる。しかし、これまで見て来たように、イノベーションを起こしたいなら、まず最初にやるべきことは、職場の中から精神エネルギーを消耗する原因を見つけてそれを取り去り、補給する方法を見つけてそれを推進することだ。エネルギーを自家発電するのだ。

 イノベーションを起こすのはヒトだ。ヒトの精神エネルギーが枯渇した状態では、イノベーションなど起こしようもない。だから本気でイノベーションを起こしたいなら、メンバーの精神エネルギーを満タンにすることから考えるべきだろう。

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