テストエンジニア時代の悲喜こもごもが今のわたしを作った

「WACATE 2011 冬」参加レポート(その1)――わたしの前に道はない@三浦半島の先端

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 こんにちは、第3バイオリンです。

 最近では恒例行事になっていますが、ソフトウェアテストのワークショップ「WACATE 2011 冬」に参加してきました。今回も面白いお話がたくさん聞けて、またエンジニアとしてこれからどうあるべきかについても深く考えることができました。

 それでは、さっそく参加レポートをお届けしたいと思います。

■日時と場所

日時:2011年12月17日〜18日
場所:マホロバ・マインズ三浦(神奈川)

 今年も前日の夜に、会場で前泊する参加者が主催する「前夜祭」がありました。しかしわたしはこの日、会社の忘年会だったので、忘年会終了後に夜行バスで会場に向かいました。毎年、冬のときは前日に忘年会が入るのですが、これは偶然でしょうか。

■テーマ

 今回のテーマは「咲かせてみせようテスト道」

 参加者それぞれが、自分とテストのあり方を見つめなおし、これから進む道を考えるという意味が込められています。

■今回から「常連」になりました

 WACATEでは、受付時に参加者に名札が配られます。この名札は、これまでの参加回数によって色分けされています。色は3色あって、初参加者は黄色、ある回数以上参加している常連の参加者は青色、2回以上参加しているけど常連と呼ぶには少し早い参加者は緑色です。

 WACATEは今回で9回目ですが、わたしはそのうちの5回参加したことになります。半分以上参加しているわけですから、たしかに常連ですね。

■ポジションペーパーセッション

 WACATEはまず、ポジションペーパーセッションから始まります。

 参加者は5人ほどのグループを作るようにして着席します。ポジションペーパーセッションでは、参加者が申し込み時に提出した「ポジションペーパー(立場表明書)」を使って、3分間プレゼンを行います。ここで、自分が普段何をしているか、テストや品質について何を考えているか、WACATEで何を議論したいかを他の参加者にアピールするのです。なお、ポジションペーパーセッションでは、グループを変えて2回プレゼンを行います。

 慣れないうちは3分間の時間配分は意外と難しいです。わたしも初めて参加したときはそうでした。しかしひとまず今回は、2回とも時間ピッタリにプレゼンを終えることができました。少しは常連の貫禄を見せることができたでしょうか。

 ポジションペーパーは、参加者の投票によって「ベストポジションペーパー賞」を決めます。そのため、どの人も内容やレイアウトに工夫をこらしていました。真面目な内容の人もいれば、あちこちに小ネタを挟む人もいます。毎回、他の人のポジションペーパーを読むのはWACATEの楽しみのひとつです。

 ちなみに、ベストポジションペーパー賞の受賞者は、その次のWACATEでセッションを受け持つことになります。前回の受賞者が受賞から半年間、何を学び、何を考えてきたのか、それを発表するのが次の「BPPセッション」です。

■BPPセッション「どうやって周りを変えていく? 〜 心に響けこの思いっ!」

 前回の「WACATE 2011 夏」でベストポジションペーパー賞を受賞された、名野 響さんのセッションです。

 名野さんは、WACATEをはじめとする社外活動に参加してみて、参加者が持つモチベーションの高さに驚きました。

 その感動を社内のメンバーとも共有したい、他のメンバーにも一緒に社外に出てモチベーションを高めてほしいと思ったのですが、社内のメンバーには名野さんの考えを理解してくれる人はほとんどいませんでした。

 名野さんは言葉だけでなく、例えばWACATEのワークを社内のメンバーとやってみるといった行動も取り入れることにしました。するとワークに取り組むメンバーの中に、WACATEに興味を持って参加する人が少しずつ現われはじめました。

 しかし、ワークを取り入れても、盛り上がるのはその場だけで次に続かないというパターンがよくありました。そこで名野さんは、周りを変える技術、コーチングとファシリテーションについて学ぶことにしました。

 名野さんは、まずコーチングとは何か?について話し始めました。コーチングというと、部下や後輩の育成・指導というイメージを持たれる方が多いと思います。ただ、誤解されやすいのですが、コーチングとは相手に対して「ああしなさい、こうしなさい」と指図することではありません。

 名野さんは、コーチングとは「『相手の中に答えがある』ことを信じること、『聴く力』をもって相手を受け入れ、相手に働きかけること」と説明しました。要は相手が自分から行動するように仕向けることであり、相手に答えやそれに至る道を用意して与えることではないのです。なぜなら、他人から答えや道を与えられると「やらされ感」を持ちながら動くことになり、成功しても嬉しくないし、失敗したらその人のせいにしてしまうことになるからです。それではモチベーションも上がらないし、自分で工夫することもできなくなってしまいます。

 コーチングの説明のあと、名野さんはファシリテーションについての説明を始めました。従来の日本の組織は、いわゆるトップダウン方式が主流でした。しかし、短期間で状況がめまぐるしく変わるこのご時世においては、トップダウン方式では流れに乗り遅れてしまいます。そこで、トップダウンのような構造的な方式から、個々のメンバーがお互いに関係しあって自発的に動いていく方式にシフトしつつあります。しかし個々のメンバーが好き勝手していると収集がつかないので、それをコントロールする役割を持つ「ファシリテータ」が必要になります。ファシリテータが場をデザインするテクニック、それがファシリテーションです。

 名野さんは、個人のモチベーションを上げ、ひいてはチーム全体のモチベーションも上げるファシリテーションのコツについて説明しました。

 まずは、「相手の存在を認める」ことです。相手の存在を認めていないと、相手との間に見えない壁ができます。その状態では、相手が何か言っても声が耳に入るだけで、相手の伝えたいことまでは心に響きません。相手の存在を認めるには、まず何はなくとも挨拶をすることです。特に相手の名前を呼びかけて挨拶をすると、相手を認めていることを伝えることができます。

 相手の存在を認め、相手の言葉が通るようになったら、相手の話を聞きます。聞きながら、頭の中で相手の話を整理します。

 ここで注意することは、話の途中で相手を批判したり、「要はこういうことが言いたいんでしょ」と相手から話を取り上げたりしてはいけないということです。また、相手も話しながら自分の考えを整理しているものなので、いきなり正解や、的を得た意見を期待しすぎるのもいけません。相手の話をひととおり聞いてから、初めて相手に対してコメントしたり、質問をしたりしてさらに話を広げていきます。

 ファシリテーションのチームビルディングで大切なことは、メンバー全員と腹を割って話し合い、メンバー全員でやるべきことを共有して同じ方向に向かうようにすることです。しかし話し合うといっても、メンバーが好き勝手に話してばかりではうまくまとまりません。チームとしての意見をまとめるためには、対話と議論をうまく使い分けることが大切、と名野さんは説明しました。

 最後に名野さんは、相手が自分で答えを見つけて行動を起こすのを待つには日々の積み重ねが大切で一朝一夕にできるものではない、相手の中に答えがあるのでコーチ自身が全知全能でなくてもいいが、相手に合わせることは必要である、とまとめました。

 わたし自身は、業務ではまだコーチングやファシリテーションを実践したことはないのですが、名野さんのお話を聞いていると、これはかなり忍耐力が必要だろうなと感じました。わたしはけっこう自分のペースでものごとを進めて、他の人がモタモタしていると「次はあれして、これして」「もういいよ、あとはわたしがやるから」と言ってしまうところがあるので、手や口を出さずに黙って相手を見守ることができるかどうか、正直言うとあまり自信がありません。

 しかし、名野さんのおっしゃる「相手を信じること」「相手の存在を認めること」というファーストステップから、まずは心がけてみるといいのかな、と思いました。

◇ ◇ ◇

 第1回目の参加レポートはここまでです。次回は、1日目の午後のセッションとディナーセッション、夜の分科会の様子をお届けする予定です。

 レポートの途中ですが、今年のコラムはこれが最後になります。読者の皆様、今年1年、わたしのコラムを読んでくださってありがとうございました。来年もよろしくお願いします。それでは、よいお年を。

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