テストエンジニア時代の悲喜こもごもが今のわたしを作った

「WACATE 2010 冬」参加レポート(その4)――現在地:歴史の生まれるところ

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 こんにちは、第3バイオリンです。

 「WACATE 2010 冬」参加レポート、いよいよ完結編です。今回はクロージングセッションと後夜祭の様子、今回のWACATEで得た気づきをお届けします。

■クロージングセッション「ソフトウェアテスト・ヒストリーの学び方 ~タメにならなければ学ばない。面白くなければ学ぶ資格がない。~」

 富士通の辰巳敬三さんによるクロージングセッションです。

 レポート(その2)で少し予習しましたが、辰巳さんは「ソフトウェア・テストPRESS Vol.8」「ソフトウェア・テストPRESS Vol.9」という雑誌で、「ソフトウェアテスト・ヒストリー」という記事を執筆されました(ちなみにVol.8は世界史、Vol.9は日本史です)。

 このセッションで辰巳さんは、ソフトウェアテストの歴史を紐解くことで、ソフトウェアテストへの考え方がどのように変わっていったのか、ソフトウェアテストの技法がどのように発展していったのかを振り返り、今を生きるわたしたちが未来に向けて何をするべきかを熱く語ってくれました。

 ソフトウェアテストの歴史はコンピュータの歴史と切り離すことができません。というわけで、まずはコンピュータの原型についてのお話から始まりました。コンピュータの原型は1837年、イギリスに誕生しました。残念ながらこれは設計のみで完成には至らなかったそうですが、このコンピュータで動かすプログラムは考案されていました。このプログラムを作成したのはAda Lovelaceという女性でした。さらに彼女は、テストやデバッグについての最初の議論をメモに残していました。つまり世界初のプログラマ、世界初のテスターは女性だったというわけです。このことから辰巳さんは「女性にはもっとソフトウェア業界で活躍してほしい」と語りました。

 その後、ソフトウェア技術やマネジメントシステムの発展とともに、世界、そして日本におけるテストや品質に対する考え方、それにテスト技法がどのように発展していったのかを順番を追って説明してくれました。わたしはこの話を聞いて、今では当たり前のように使われている技法も、先人たちの苦労と知恵の結晶であることを感じました。

 最後に辰巳さんは、ソフトウェアテスト研究の最前線について、さらにこれからのソフトウェアテストがどうなっていくか、どうなってほしいかという夢を語り、参加者に次の言葉を贈りました。

 「WACATEの力で歴史を作ろう」

 この言葉を聞いて、わたしが去年の冬にはじめてWACATEに参加したとき、「WACATEから新しい時代が生まれるかもしれない、わたしも新しい時代を創り出せるかもしれない」と感じたことは単なる夢物語では終わらない、というより、終わらせてはいけないと思いました。

 これまでソフトウェアテストに携わってきた人たちは、もっと良いテストをしたい、もっとテストエンジニアの地位や評価を上げたいという熱意を持って仕事に取り組んできました。そのおかげで、テストエンジニアを取り巻く環境はどんどん改善されていきました。それでもまだ、改善の余地はたくさんあります。でもそれは、今を生きるわたしたちの手で変えていくことができるのです。過去のソフトウェアテストの歴史に触れることで、現在、未来に思いを馳せたセッションでした。

■後夜祭

 後夜祭は、横浜にあるハワイアンダイニングに行きました。そこでトロピカルカクテルをいただいたり、フラダンスショーを見たりして、真冬とは思えないような雰囲気のなかで話も熱く盛り上がりました。WACATE常連の方とも、初参加の方とも、テストのこともそれ以外のこともたくさん話して楽しく過ごすことができました。彼ら、彼女らとの関係は、これからも大切にしていきたいです。

■もうひとつのヒストリー

 翌日、わたしは上野にある国立科学博物館に行きました。ある方から「日本最古のコンピュータが保管されているから、ぜひ一度見ておいたほうがいい」と勧められたのです。せっかく歴史を学んだばかりですから、ぜひ見てみようと思ったのです。

 そこには国内初の大型計算機をはじめとして、これまでの歴史に名前を刻んできたコンピュータたちが静かに保管されていました。その中には@IT自分戦略研究所で連載されていた「パソコン創世記」にも登場するTK-80もありました。ここからコンピュータの歴史が始まったこと、その歴史の上にわたしがいることを実感して泣きそうになりました。

 今回のポジションペーパーに「わたしたちは歴史の中にいる。わたしたちもまた、歴史上の登場人物」と書いた方がいましたが、まさにその通りだと思いました。もちろん、いきなり大きなことはできませんが、わたしにできることを少しずつやればいい。それが種になって、後になって花が咲けばそれでいいのかなと思っています。できれば、花が咲くところまで自分の目で見届けられたらいいのですが。

◇ ◇ ◇

 「WACATE 2010 冬」レポートはこれでおしまいです。今回の参加者、講師、実行委員のみなさん、そして、最後まで読んでくださった読者のみなさんに感謝したいと思います。

 【ついでに告知】新潟で、ソフトウェアテストのカンファレンス「JaSST'11 Niigata」を開催します。レポート(その2)で少しお話しした、コミュニティの立ち上げというのはこのことです。厳密にいうとコミュニティではなくイベントですね。誤解を与えるような書き方で失礼しました。プログラムやお問い合わせ、お申し込みは「JaSST」のトップページからどうぞ。

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