「WACATE 2009 冬」参加レポート(その4)――ベル・エポックのはじまり
こんにちは、第3バイオリンです。
これまで3回にわたって「WACATE 2009 冬」の参加レポートをお届けして参りましたが、いよいよ最終回です。
今回は、後夜祭の様子をお送りします。そして、「WACATE 2009 冬」参加後にわたしが考えてみたこともお伝えします。
■後夜祭
後夜祭とは、簡単に言ってしまうと「打ち上げ」です。参加者は20名くらいでした。
後夜祭では、参加者の皆さんと本当にいろいろな話をしました。ここでも話題の中心はやはり、これからのテストや、テストエンジニアの在り方についてでした。
そのうちのいくつかを簡単に紹介します。あくまで、あの場にいた人たちで酒の肴に話した内容であり、特定の誰かの考えというわけではないことをあらかじめ断っておきます。しかし、わたし自身はこれらの考えに共感しています。
・テストのオフショアについて
コスト削減のため、人件費の安い海外に業務を委託している。確かにコストではアジアにかなわないが、技術の流出など、日本のテスト産業の空洞化につながらないか。第一、コスト削減といっても結局のところ現地のテスターの教育にかなりコストがかかっている。本当にコスト削減になっているのか?
・日本のテストエンジニアのこれから
テストを海外にオフショアするといっても、日本のテストエンジニアの仕事が減るわけではない。なぜなら、適切にテストをしていることをチェックする仕組みができていないと、海外に委託することなどそもそも不可能だから。レビューの力をつけることが、これからの日本のテストエンジニアにとって必須になるだろう。
・テストエンジニアのキャリア
プログラマやSEと比較すると、テストエンジニアは資格の種類も少ないし、会社からの補助もほとんどない。また、モデルとなるキャリアパスもそれほど充実していない。これから就職する高校生や大学生のうち、「テストエンジニア」という職業を知っている人はどれだけいるのか。就職活動をする学生が「テストエンジニアになりたい」と言えるような時代にしたい。
わたしが普段から疑問に思ったり、不安を感じたりしていることについて、皆さんも同じように考えていることを知って少しほっとしました。
また、わたしがコラムを書き始めたきっかけやコラムに込める想い、コラム名やペンネームの由来なども話しました。これからも、コラムを通してわたしと同じ悩みを持つ人を励ましたり、一緒に考える機会を作ったりしていきたい、そう思いました。
それから、この後夜祭の席で、わたしはWACATEの関係者が楽しめるイベントの発案をしてみました。最初は半分思いつきで言ってみたのですが、何人かの方がすごく乗り気になったので実現することを約束してしまいました。実現したときは、またコラムに書こうと思います。
2次会にも参加して、結局ホテルに到着したのは日付が変わった後でした。
(余談ですが、後夜祭があったということは前夜祭もありました。しかし、わたしは前夜祭のほうには参加できませんでした。残念! 次回はできれば前夜祭も参加したいです)
■ロートレックとベル・エポック
後夜祭の翌日、わたしは休暇を取っていたので、渋谷のBunkamura・ザ・ミュージアムで開催されていた「ロートレック・コネクション」という企画展に行きました(2009/12/28現在は終了しています)。
この企画展は、フランス人画家ロートレックと、彼と交流のあった画家たちの作品を集めた展覧会でした。
ロートレックが生きた19世紀末から20世紀初頭、フランスの首都パリでは、芸術の世界で大きな変革が起こりました。パリには若い芸術家たちが集まり、互いに競い合ったり、影響を受け合ったりしながら次々と作品を発表していきました。そしてアール・ヌーヴォーや印象派をはじめとする、新しい芸術の流れがいくつも誕生しました(ロートレックはどちらの流派にも属していません)。
この華やかなりし時代のことを「ベル・エポック(美しい時代)」と呼びます。
■いつだって時代を作るのは志と情熱だ!
企画展に展示されている作品を見ると、同じものを描いていても画家の個性がよく表れていました。まるでWACATEのディスカッションみたいだなあ……などと考えているうちに、ハッと気がつきました。
19世紀末に、志と情熱を持った若い芸術家たちが互いに切磋琢磨しながら新しい時代を切り開いていったこと、これは現代のわたしたちがWACATEに参加して良い刺激を与え合いながら成長し、これからのテストの在り方を考えていくことに似ているかもしれない、と。
もちろん、19世紀末の芸術の世界と、21世紀のIT業界を単純に比較することはできないのはわかっています。そうでなくても今は厳しいご時勢です。少なくとも「ベル」なんていえるような時代でないことも承知の上です。
それでも、WACATEという場から、新しい時代が生まれるかもしれない。それに参加することで新しい時代が生まれる瞬間に立ち会える、いやむしろ、わたし自身が新しい時代を作り出すのに一役買うことができるかもしれない。そんなことを考えてみました。
なんだか夢みたいな話ですが、WACATEに参加して、そう思えるほどのエネルギーを感じてきたことだけは事実です。
■「WACATE 2009 冬」で出会ったすべての人へ:絶対に、また会いましょう!
最後に、「WACATE 2009 冬」の参加者、実行委員、講師の皆さんへのメッセージで締めくくりたいと思います。
皆さん、2日間本当にありがとうございました。皆さんとの出会いは、わたしにとってなによりの宝物です。絶対に、絶対にまた会いましょう! そのときは、今よりも成長したわたしになっていることを約束します!
◇ ◇ ◇
4回にわたる「WACATE 2009 冬」参加レポートはこれでおしまいです。ここまで読んでくださった読者の皆さんに感謝します。
今年のコラムはこれが最後です。それでは皆さん、良いお年を。