新卒入社の会社は1年持たずに倒産。「流れよう流されよう」がモットーのエンジニア

仕事に追い込まれて趣味に逃げ込み

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■社長の言葉「趣味を持て」

 新卒で入った会社の社長に言われた言葉を、まだ覚えています。

 「必ず趣味を持ちなさい。仕事では失敗すること、思いどおりにならないことなど、つらいときが必ずある。そのときに逃げられる場所があるように、趣味を持ちなさい」

 確かそんな感じだったと思います。当時は「なんだか後ろ向きなことを言うものだな」と思いましたが、十数年経ったいまも、この言葉を覚えています。

■ストレス解消のブラウジング

 3社目のときのお話です。会社に住んで仕事をするくらいなのですから、ストレスがたまります。

 当時はITバブルの勃興前夜。いろいろなホームページができていました。当時は、ダイヤルアップ回線でインターネットに接続する環境でした。テレホーダイ全盛期。ADSLはまだでした。そんな中、小さな会社とはいえ、常時接続できる環境。仕事で必要だから当たり前ですが……。さくさくブラウジング。

 いまと違ってフィルタリングなどされていませんから、どんなWebサイトも見放題です。ちょっとした仕事の合間にも、適当にブラウジングして息抜きです。

■ネットを通じてコピーバンド結成

 ある日のこと、いつものようにブラウジング、昔好きだったバンド(すでに解散)のファンサイトを見つけました。メンバーの現状や昔の思い出などが掲載されていて、懐かしくなって読みこみました。そこにはチャットもありました。テレホーダイの23時を過ぎると、かつてのファンが集まって座談です。当然のように、僕ははまります。何といっても、常時接続だから。

 毎日のようにチャットに顔を出しているうちに、どこからともなく、「コピーバンドやらない?」と言う声が出てきました。「おおー、ベースやるわ!」ということでファンサイトを通じてバンド結成です。(楽器ができない)チャット仲間は、早速ファンになってくれました。顔を合わせていないうちからファンが存在する不思議です。僕にとっては学生以来、数年ぶりのバンド活動。

 そして初顔合わせ。場所は新宿の某スタジオ、ゴールデンウィーク中の出来事でした。初っ端から、僕は欠席です。何か仕事でトラぶっていたような気がします。IT業界らしくていいですね(笑)。

 と、出だしこそこんな感じでしたが、ネットで知り合ったメンバーは気が合い、思いのほかバンド活動はうまくいきました。

■本格活動開始

 バンドメンバーの1人(以下、バンドリーダー)が楽器屋でバイトしていたこともあり、そこを拠点にして活動です。

 このバンドリーダーとは妙にウマが合いました。歳も近かったこと、職場が近かったこともあり、時間があるときは彼の勤める楽器屋に遊びにいき始めました。

 新しいベースもそこで買います。作曲に興味のある僕が気になる音楽ソフトがあったので、勧められるままになし崩し的に買います。それは「ACID」というシーケンスソフトで、フレーズを並べていけば音楽ができる代物です。そのソフトを使って、ファンだった本家バンドの曲を僕流にリミックスして、インターネットに公開。

 いちファンが作ったものとはいえ、解散以来久しぶりの新曲(?)に、ファンは大喜びです。狭い範囲ですが、ファン界隈で有名になっていきます。(2ちゃんねるで叩かれたり……。)リーダーも触発されて、バイト代からiMacとローランドのJV(楽器名)を買い、競うようにリミックスをして発表です。何といっても、こちらはホームページを作るのは朝飯前、公開するのはわけない。

■本家に売り込み、覚えてもらう

 勢いは止まることを知らず、本家のメンバーが行うライブに出かけていっては、「○○○(バンド名)さんの曲をリミックスしたので、聞いてください!」とCD渡し。意外にも快く受取られ、、感想までもらえました。連絡先を交換したり、ごはんを食べたり。楽屋に呼ばれて、「(自分たちの曲の)歌詞忘れちゃったんだけど、教えてくれる?」って(笑)、何じゃそれ。こちらは暗唱できるくらいのファンですから、朝飯前です。子どものころから憧れていた人に会えて、覚えてもらう、これは感激です。

 気がつけばこんな状況。軽い気持ちが、意外に本格的に。月曜日から土曜日までは仕事、土曜日の夜と日曜日はバンドと作曲(リミックス)活動。

■巣立ちと別れ

 アニメオタクでもあったリーダーは、その筋の方にひっぱり上げられる形でプロの作曲家としてデビューします。「お前も早く(仕事)辞めろよ」が彼の口癖でした。もちろん、僕にはそこまでの勇気も実力もありません。

 活動は計1年半におよびました。長くもあり短くもあります。振り返れば、仕事でかなり忙しい状況のときにもかかわらず、よくまあこれだけの活動をしたな、とわれながら天晴れだと思います(火も噴かず、きちんと仕事をしていました)。

■まとめ。逃げ場でも満喫する

 「人間は追い込まれると種の保存に向かう」と聞いたことがありますが、僕の場合は趣味に向かいました。単なる逃げ場としてではなく、十分に満喫するまで。仕事のプレッシャーを昇華したと言えます。

 「趣味を持て」という言葉をくれた社長に感謝です。「逃げちゃダメだ」でなく、逃げることを選択肢として与えてくれたことに。その社長が亡くなってから、早10年近くが経ちました。オラクルのファイアウォール越え接続のためにはポート1521だけを空けておけばよいわけではないことを知り、1521に完全固定するパッチをインストールする指示を出して慌てていった休日の告別式、いまでも思い出されます。

 こんにちは。けいいちっくです。気がつけば10月。期末の9月は締め切りに追われたり、資格を更新したり、YouTubeに動画をアップしたり、IS01買ったりでコラム投稿のタイミングを逃してしまいました。まー、マイペースです。Twitter、登録したけど使わんなー。

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コメント

第3バイオリン

けいいちっくさん

はじめまして、コラムニストの第3バイオリンです。

けいいちっくさんのすごい趣味活動に驚いてしまいました。

私の趣味は市民オーケストラでバイオリンを弾くことです。
さすがにコラムに出てきたリーダーさんのように、
「趣味を極めてベルリン・フィルに引き抜かれ…」とはいきませんが(笑)

私のオーケストラは平日が練習日です。
当然、仕事が終わってすぐに練習に行く必要があります。
仕事がきつい日は行くのがだるい日もありますし、
ときには仕事が忙しすぎて遅刻・欠席なんてこともあります。

それでも、仕事や日常のしがらみを忘れて趣味に打ち込めるというのは大切なことだと思います。
なんだかんだ言って、練習後は「弾いてよかった。明日からも仕事がんばるぞ」と思います。
(ときには、「ひとりだけうまく弾けない」と仕事とは別のストレスが発生することもありますし、
オケにはオケのしがらみもあったりしますが)

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