新卒入社の会社は1年持たずに倒産。「流れよう流されよう」がモットーのエンジニア

引越し経験からシステム開発を考える(見積編)

»

 年が明け、月が替わると引越しシーズンの到来です。

 さて、ぼくも引越ししました。子どもが成長してきて手狭になったというありきたりの理由ですが、このまま賃貸orここで買っちゃう? このご時勢で35年ローン行っちゃう? みたいな議論はここではせず住宅情報サイトに任せます。
 引越ししながらシステム開発と似ているのでは? と思うところがあったので挙げてみます。

■見積もり依頼(=RFP)

 引越しが決まったらまずは見積もり依頼を出します。普段の仕事を請ける側とは逆の立場です。昔は名の通った業者に1件1件当たっていましたが昨今では「引越し一括見積もり依頼サイト」などという便利なものがあります。引越し業界とは労働集約型という共通点があるIT業界ですが、この先そういったものができるのでしょうか? まだまだ「つて」やお客さまや同業者からの情報に頼るのが現状です。公開入札はハードルが高し。

 入力フォームは至ってシンプル。X月X日の前後数日を希望などと入れたくても予定日をピンポイントで入れなくてはならず、使い勝手が良いとは言えません。が、機械的に処理するのは好都合なのでしょう、きっと。

■見積もり依頼へのアポイント

 一括見積もりを出して30分としないうちに携帯電話が鳴りました。「本日お伺いしたいのですが、ご都合いかがでしょうか?」と。早いものです。妻が「散らかっているから今日はイヤ」とのことで翌週にしました(引越し準備でもっと散らかると思う)が素早いレスポンスに脱帽です。あなたは(あなたの会社では)この素早いレスポンスができるでしょうか? ほぼすべての会社から当日中に電話がありました。Webからの依頼にもかかわらず電話というのがポイントです。お客の本気度を計っているのでしょう。

■見積もり実施(=RFP回答)

 その後、引越し予定日に作業可能な業者を5社ほど一斉に呼びました。時間がないこともあり同じ日に30分~1時間位の時間差を置いて呼んだのですが、結果的には重なってしまいました。各社、会社案内もそこそこに見積もりを始めます。こちらも漏れがないよう、あらかじめ用意したメモを片手に要件を伝えます。クローゼットの中もトランクルームがあることもプランターを運ぶことも包み隠さず伝えていきます。と早速その場で見積もり金額が出てきます。早っ! と見てみるとベッド×いくつ、テレビ×いくつとチェック欄があり、機械的に算出できる仕組み。これとシーズン料金を掛け合わせれば一丁上がりと言うわけです。COCOMO、FP、インターフェイスによる見積もり方法、最近では画面数など挙げれば切りがないですが、どれも決め手に欠くIT業界とはえらい違い、明朗です。例えて言えばクローゼットの中に隠しクローゼットがあるような、もっと言えばマンションの引越しと思いきや実は一軒家のそれだったというような業界ですから見積もりの機械化はまだまだ先のことでしょう。

 同時期に引っ越した知人の話によると、このような見積もりでも、トラックに詰めず結局埼玉と神奈川を2往復となってしまったとのこと。いい加減な見積もりの割りを食うのは現場というところもIT業界と似たり寄ったりですね。

■見積もり比較

 各社から出された見積もりを見比べます。正直なところ大差なし、といったところ。比較表(自社が優勢に見えるように評価軸を操作する、あれ)を作るまでもなかったです。日付や時間を変えれば、この金額でという申し出もありましたが、そうすると入居が早くなることで二重に発生する賃料との比較になるわけで、これも決め手にならず。

■代替手段の検討

 今回の引越しは同じ敷地内の別棟の部屋への引越し。直線距離にして数百メートルといったところ。あえて業者に委託することなく自分たちですること(=自社開発)も考える。問題はベッドや冷蔵庫や洗濯機などの大きな荷物。これだけを業者に依頼したら?などとアイデア出し。(残念ながら料金に大差はないとのこと。余談だが拘束時間により料金が決まるため数百メートルだろうが、50kmだろうが変わらないとのこと)

■使徒来訪

 こんなことを考えた昼食後にちょっと遅れてきた業者。開口一番「他は、どうでした?」と。包み隠さず答えると「うちも同じくらいですよ」との返答。「やはり」と落胆していると「小さい業者でよければ(安いと思うので)紹介しますよ。」との思いもよらない回答。以前一緒に仕事をしたことがあり品質には問題ないとのこと。あなたは訪問先で他の同業者を紹介できるでしょうか? ちなみにこの紹介した業者は名だたる大企業です、気さくなオバサンでしたが。その場でアポイント、夕方に来てくれるとのこと。

■業者決定

 紹介された業者が提示した見積もりは魅力的なもので、すぐさまここに決めました。ダンボールを自前で用意すればマイナスいくらとか、エアコンの移設はトラブルになることが多いしマージンの分高くなるので個別に頼むのを勧める、そうでなければ紹介にとどめるなど、顧客視点の提案がやってきました。

■レッドオーシャンを生き延びる

 数年ぶりの引越し、前は荷物も少なかったし今とは事情が違うということで、すっかり相場も分からないところからスタートしました。直近に引っ越した友人から情報を聞いたり、要件を出して相見積もりで相場を把握し、比較表を作り(結局作ってないけど)、代替手段(自前と委託の区分け)を考えながら、要件(平日可、時間に拘らないなど)を固めつつ、魅力的なオファーを出した業者に決めるという、普段とは逆の立場の経験をしたわけです。引越しというITより更に差別化が難しい業界、レッドオーシャンでどう生きていこうとするのか垣間見れた気がしました。プライムから信頼され紹介を受ける2次受けというポジションもアリなわけですね。

 次回、引越し(当日編)に続きます。

けいいちっく(@k1tic)

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する