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閑話休題(2):ミレニアム前後の時代の寓話2

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前回の続きです。

 私、「システム営業」という存在が昔から不思議だったのです。

 なぜならば、中小零細のソフトハウスで、システム営業がシステムの提案をしている場面に、10年ぐらい出くわしたことがなかったからです。

 つまり、システム営業の仕事って、経歴書をプリントし、技術者に同行して上位のSIerに紹介するのが仕事のすべてであると何の疑いもなく考えていました。

 そしてその理解は、あながち外れていなかったように思います。

 さて前回の寓話(笑)に戻りますが、とりあえず何らかの志をもって起業された零細ソフトハウスがあっという間にソフトハウスではなくなっていく過程で、社長一人で営業することはできなくなり、営業を複数人正社員で採用していきます。

 営業の存在理由はいつの時代も、どの業界でも売り上げです。で、営業担当者は入った瞬間からソフトを売ってこいとは言われない。というか売るソフトがない。ソフトハウスなのに。

 人を案件に突っ込む量で勝負。質より、量(人数)です。

 もっと具体的にいうと、いかに未経験者、あるいは未経験に毛が生えたぐらいの若手をIT●方の人海戦術案件に突っ込むか。(スキルの高い技術者の担当になるのは、ある程度営業を経験してから)

 この業界はいろんなニーズがあるので、「とにかくちょっとコマンド知ってるぐらいでいいから、元気のいい人いない? オ●クより体育会系のほうがいいな~」みたいな、そういう話には事欠きません。こうなってくるとホントただの人材派遣営業ですよね。

#「とにかくちょっとワードとエクセル知ってるぐらいでいいから、かわいい子いない?」by準大手企業の人事担当(派遣会社との打合せ時のトーク)

 私がもうひとつ不思議に思うのは、私がこの業界の底辺層に棲息し始めてけっこうな年数が経ちましたが、この状態が健全か? というそもそもの議論が内側からほとんど聞こえてこない(こなかった)こと。

 とにかくずっと、「仕方ないじゃん…」の諦めムードでした。

 ソフトハウスがピン●ネ専門会社になっている状況は「仕方ない」のでしょうか? と。そういうことを声高にいい始めると、とてつもなく強力な「まあまあまあ(しーっ!静かに!)」という圧力がかかってきます。

 みなさんけっこうグレーゾーンの、法的に危ない橋を渡ってきたはずなんですけど、麻痺してませんでしたか? ずーっと赤信号をみんなでわたってきてませんでした?

 自分たちがもはや健全な会社ではないという事実から目を背けていたという。いや、財政的には健全だろ?とか開き直ったりなんかしちゃったりして。

 私見になりますが、とある高邁な理想をもって起業した会社が、現実の厳しさにぶつかった結果として「そういう会社」(ちょっとグレーゾーンに足を踏み入れるところまできている会社)にシフトしていくのであれば、私はそもそも「そういう会社」になるのを主目的に起業した社長のほうを評価したいですね。

 後者のほうがリアルですし、最短距離をいってます。高邁な理想を持つのはよいのですが、どうせ持つなら持ち続けてほしいんですよね、会社が存続しているうちは。

 コロッコロと社是を変えていく会社/社長はあまり好きではないのです。これまでの私の経験上。好きでないというのもあるし、けっこう消えます。高い確率で。

 ほとんどの零細ソフトハウスは、消えてしまうのですが、ごくまれに、エンジニア魂を捨てて、自分は後者であると開き直ることができてかつ、生来経営の才覚を持っていたエンジニアの社長は、生き残ります。

 それはそれで、悪いことだとは思いません。脱法せずに生き残るというのは大変なことなのです。

 さて、こういう会社が出来上がってしまえば、創業メンバーのエンジニアは概ねいなくなります。なぜなら、その会社にいる理由がないからです。正当な評価をしてくれる会社に移るのは当然ですよね。だいたい、常駐先にスカウトされるか、常駐先で一緒に働いてる別会社のエンジニアに一本釣りされます。

 本当に社長の片腕として、役員待遇で残る人はたまにいますけども。

 で、自転車操業していると当然、いろんなところがぎすぎすして、ほころびが出てきます。

 ほころびが出てくるとどうなるか? ついに、社長は社長のイスでふんぞりかえってるわけにもいかなくなり、自分が外に出ます。

 もともと自分自身は、腕に自信のあるエンジニアですからね。社長の名刺もあいまって、それなりの単価で外に常駐できます。

 けっこう粗利をとれます。

 社長なのに。

 やはり自分はエンジニアだし、と・・・社長のプライドも満足。

 そして社長がめったに自社に帰らなくなり(浮気して家に寄り付かなくなったお父さんみたいだw)、自分が社長であることを忘れてしまいそうになる頃…

 すでに人材は流出しまっており、加えて自分も「流出」してしまっており、最終的に自転車操業に耐えられなくなり、すべてを失う。

 さて、やっとまとめです。

 すべてを失った「社長」。ってこれ…「振り出しに戻る」ですよね!

 結局一介のフリーエンジニアに逆戻りじゃん、と。

 だったら最初っからエンジニアでいればよかったじゃん! と言いたくもなりますが、それをぐっとこらえ・・・

 一瞬でも、夢を見れたのでしょうから、まあよしとしましょうか。

 なんせ寓話ですから。

 でも、でもね、フリーのエンジニアは「社長」とも違うし、社会的地位は低いかもしれませんが「人として」はまともでいられる。それが7~8年前に僕が出した結論です。

 ソフトハウスの零細社長は、結局人としてまともでいたいがためにエンジニアに戻ってくる人が多い(多かった)です。

 おしまい。

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